私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

『月の骨』 ジョナサン・キャロル

2008-07-02 21:08:41 | 小説(海外ミステリ等)

あたしはとっても幸せ。この世でいちばんすてきな旦那さまがいるし、おなかには赤ちゃんだって。でも最近、変な連続夢を見始めた。ロンデュア、これが夢の世界の名前。あたしとあたしの息子のペプシ(!?)は、5本の月の骨を探すためにその世界に帰ってきたのだ。やがて夢が現実に、そして現実が夢に少しずつ忍びこみはじめたとき……! 
浅羽莢子 訳
出版社:東京創元社(創元推理文庫)


この作品には良いところがいくつもある。
たとえばロンデュアの夢が現実と混じり始める部分などはよくあるネタではあるが、その奇妙な味わいは興味深いし、他人にロンデュアの夢を与える点などは発想としてはおもしろい。また徐々に夢が現実に大きな影響を及ぼしていく点も刺激的だ。
それにこれが主人公の過去との決別を意味する象徴的な要素を有している点もなるほどね、と感心させられるし、最後のサスペンスタッチの展開も素直に良いと思う。
少なくとも読んでいて退屈だとまで感じることはない。

しかし部分的には良くとも、トータルで見ればいまひとつピンと来ない作品でもある。
ロンデュアの物語もエピソードの中抜けが多く、うまく整理することが難しいし、ロンデュアと現実が行ったり来たりする分、散漫な印象を受け、一本芯の通った展開が見出せない。
結局何を強く書きたかったのかが見えにくいのだ。そのため読み手もこの作品をどう捕らえていいのかわからなくなる。
社会的には評価を受けている作品らしいが、どうやら僕の好みではないらしい。なんとも残念な限りだ。

評価:★★(満点は★★★★★)


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