![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/92/ae38caaece22932ece19f5527161c8e6.jpg)
芥川賞作家、中村文則のデビュー作。
「昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らない」という印象的な文章から物語は始まる。
何とも重厚な文章である。若干くどいとすら感じられるほどだったが、物語自体も古風であるし、この文体が作品にマッチしているということはまちがいないだろう。
物語は銃を拾った若者がその銃に魅せられていくという話である。
極めてシンプルな話で、わかりやすいくらいまっすぐに物語は進んでいくし、銃が持つメタファーも容易に読みとることができる。その丁寧で端正な物語構成は好印象だった。
物語の中で特に印象的だったのはラストシーンである。主人公が「おかしいな」と呟きながら弾を込めようとするシーンの余韻はぞわぞわとするものがあり、心に残った。
この作品はむちゃくちゃ面白いというほどのものでは決してない。しかし、その印象的な出だし、丁寧な物語構成、ラストシーンは心に響くものがあった。なかなかの佳品といったところだろう。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます