2009年度作品。フランス=イタリア映画。
小さな娘と暮らすシングルマザーのカティ。娘をバイクで学校に送った後、工場で代わり映えのしない仕事をしている。そんな彼女が出会ったのが工員のパコだ。恋に落ちた二人の間に赤ちゃんが誕生。赤ちゃんはリッキーと名づけられ、家族として絆が深まっていくかに見えた。しかし、リッキーの背中に痣を見つけたカティは虐待と思い込み、パコは家を出て行ってしまう。ところが痣はどんどん大きくなり、そこから羽が生えてきた…。(Ricky リッキー - goo 映画より)
監督は「スイミング・プール」のフランソワ・オゾン。
出演はアレクサンドラ・ラミー、セルジ・ロペス ら。
赤ん坊の背中に羽が生える。
それこそ、この映画の肝であり、勘所でもあるのだろう。
しかし僕個人の印象からすると、その部分が一番ダメだったように感じた。
それはリアリティとファンタジーの落差が大きくて、引いてしまったのが大きい。
個人的に、この映画はもっと軽いものだと思って見に行ったのだが、思った以上に前半がシリアスでリアリスティックである。
そのため、後半のファンタジーの展開に入り込めず、醒めてしまったのだ。
僕がこの映画で一番醒めてしまったのは羽である。
はっきり言って、あの大きさの羽で空を飛ぶことに納得いかなかった。
最初に空を飛ぶシーンのときに強く思ったのだが、あの大きさの羽ではとても空など飛べない、と思う。
鳥だってヒナの時代は空を飛べないのだ。人間だって同じでしょ、と考えてしまうのだ。心が狭い言い方だと思うけれど、どうしても納得いかない。
多分これが小説みたいに文章で見せられたら、まったく気にならなかっただろう。けれど、ビジュアルで見せられるとツッコミどころを見つけてしまいがちになる。
それが大変惜しいのだ。
しかし趣味で言うなら、前半のシリアスな部分はおもしろかったと思う。
映画を見る前は軽い作品と思っていただけに、前半はイメージとはずいぶんちがっている。でも非常に丁寧に撮られていて好ましい。
新しい恋に目覚める母親や、それに不満を抱く娘、パートナーとの関係にいらだちを見せる男など、見せ方が上手いこともあり、非常に興味深く見ることができる。
それが良かっただけに、ファンタジーの部分のグダグダっぷりが残念でならない。
ラストでは赤ん坊も消えちゃうし、結局あの設定は何だったんだよ、と言いたくなる。
個人的な考えを言うなら、この映画は別に翼の生えた赤ん坊の設定にこだわる必要はなかったのだ、と思う。
監督が撮りたかったのは、ラストで抱き合う三人の姿だと思うし、それなら、ちょっと変な赤ん坊という程度に抑えておけばよかったのに、と思う。
あるいは中途半端にリアルではなく、最初から徹底的に寓話的な雰囲気を出していれば良かったような気もするが、どうだろう。
何にしろ、いい作品になりえただけに、非常にもったいない。
僕個人は強くそう思うのである。
評価:★★(満点は★★★★★)
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