午前0時に荷物をリュックに詰め終わった。
優に5kgはある。多分もっとある。極力減らしてこの重さ。
メットをかぶって、手袋をつけて、エンジンをかける。
行き先は和歌山港で、ベンリィちゃんでそこまで行って
フェリーで徳島へ運ぼうという計画。
原付で帰るのは大変だけど、
徳島の街を一度ベンリィちゃんで走ってみたいと
ベンリィちゃん購入時からずっと考えていたので、
時間のある夏休みのうちに挑戦。
その日は大学のバイトに加えて急に誘われたパーティに行って
疲れていたので、少し寝てからにしようと思っていたけど、
荷物をまとめたらいてもたってもいられなくなってしまい
目を爛々とさせながら枚方をあとにした。
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出発に深夜を選んだのは、交通量の少なくて走りやすいことと
日焼けの心配がないこと、暑さによるエンジンの不調を避けるため。
なのに、枚方~守口までは凄まじい交通量で、
トラックもとんでもない速度で真横を通り過ぎていく。
暗くて交通表示もよく見えず、守口を過ぎたあたりから
どう進めばよいのかわからなくなって方角だけを頼りに進んだ。
午前1時半ごろ、道に迷って駆け込んだコンビニで地図を見て、
やっと自分が鶴橋の近くにいると知った。
ほんと、なんでもっと予習してから来なかったんだろう。
地図を買って、それを頼りに八尾へ向かう。
八尾に行く途中、堺に行く道を見つけて、
住宅街を逆戻りして大通りに出てみたら、交差点に信号機がない。
隣には交番があって、中から二人の警官がこっちをジッと睨んでる。
やっべー、ここひょっとして一方通行?まさかね?違うよね?
警官A「おいコラそこ一方通行やでぇ」
警官B「免許証見せてくれる?」
見事にあっさり囚われの身になった。
横柄な態度で「気をつけなあかんぞぉ?」と言ってくる警官達に
ひたすらゴメンナサイと謝って、そのまま許してもらえた。
まだ八尾にもついていないのに、
交通量は多いわ、道に迷うわ、挙句に警察に止められるわで、
出発2時間にして和歌山港行きを断念したくなってきた。
クルマの少ない鞍馬や京北町に行くのとはワケが違うようだ。
交通表示がよく見えないのも痛い。
夜中で視認性が悪いうえ、原付だから十分周囲を見ていなければ
すぐに大事故に繋がってしまう。おかげで迷いまくり。
道中の写真も撮りたかったけど、そんな余裕は全くなかった。
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堺を目標に進み続けていると、
今度は道路が簡単な高架式道路になっていて原付通行禁止になってしまい、
敢えなく路線変更するはめに。
吉野家の駐車場で途方に暮れて地図を眺めていると、
後ろからいきなりトラックの運ちゃんが「どこ行きたいんや?!」と聞いてきた。
「和歌山港に行きたいんです」と言うと、
「ほんならあっちの高速乗っていけばすぐや。ん?お前これ原付か?」
口には出さなかったけど、おっちゃんの顔には「若いって恐いなぁ」と
書いてあるようだった。
「原付なら下道しか通れんけどな、この先に国道26号線があるから
そこを南に辿っていけばいずれは和歌山に着くわ。」
ありがとうございます、助かります、と礼を言うと、
おっちゃんは何も言わずにそのままトラックに乗ってどこかへ消えてしまった。
おっちゃんありがとう。ほんま助かりました。
そこから30分ほどでうまく国道26号線に合流でき、
とりあえず和歌山までは一直線で行けるようになった。
人の温かみにも触れて、ちょっとウキウキ気分を取り戻して再出発。
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26号線に合流して一時間くらい経ったけれど、
和歌山までの道のりは想像以上にむちゃくちゃ遠い。
進んでも進んでも交通表示の「↑ 和歌山 56km」の表示は
1km、2kmずつしか減っていかない。さすが原付。原チャ。
おまけに国道26号線は数キロに一度必ずと言ってよいほど
高架になった原付通行禁止の道路があるので、
高架に入ってしばらくして通行禁止に気づいて、驚いてエンジンを切って
原付が走行できる道路までベンリィちゃんを押して戻る。
これ3回くらいやった。原付にとても非フレンドリーですね。
時計は3時を回って、疲労が極限に達してきたので
適当に見つけたファミレスで休憩。ドリンクバーとオムライスで栄養補給。
ここで食べたオムライス、ファミレスのくせに卵がふわふわで
かなりおいしかったな。皮肉にもフレンドリーというチェーンだった。
ごはんを食べたあとはまた元気もりもりで国道26号線をがんがん南下。
ひたすら走る。信号も運よくあまり止まらなくてすんだ。
ここまで来ると交通量も少なく、自分以外の車バイクはほとんど走っていない。
大阪と和歌山の境目あたりに峠があって、
国道26号線はその峠のど真ん中を突っ切るように伸びていたけど
これまた原付走行禁止区域になっていたので、少し道を外れて迂回路を探す。
見ると、左と右へ伸びる分かれ道があって、
とりあえず左に進んでみると、3キロくらい山奥へ進んだあげく、
街頭も全く無く真っ暗な山奥で舗装道路が途切れて行き止まり。
周りには誰もおらず、民家もなく、バイクのヘッドライト以外の光もなし。
独りで恐いよーっと叫びながら3キロ逆戻りしてさっきの分かれ道を右に進んだ。
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分かれ道の正解は右でした。20分で峠を越えて国道26号線に合流。
この時点でフェリーの出航時間を気にし始めたけれど、
確か昨日インターネットで調べた限りでは5時20分だったかな?
そのころは4時をまわったあたりで、残り一時間少々で和歌山港まで28km。
法定速度でも信号に引っかからなければ間に合いそう。
このあたりで海風の香りがし始めて、
やっと和歌山まで来たんだという実感が湧いてきた。
思えば長い道のりだったなぁ。もう5時前だし。
ここまで来るのに5時間かかってしまった。
和歌山港に着いて、チケット売り場に直行する。
時計は5時7分を指している。チケット売り場に掲げられている
出航時間表を見ると、早朝の便は5時5分発と書いてある。やばっ!
「もうフェリー行っちゃいました?」
「へい。行きました。次は7時20分です。」
うおー
フェリー乗り場で2時間立ち往生することに…
早朝の和歌山港
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フェリー乗り場でぐっすり仮眠をとって、体力全快。
短時間の仮眠で体力を回復できるこの能力はおそらくホテルのバイトで
培った生きるための身体の進化に違いないですね。
そして、午前7時、フェリー乗船。7時20分出航。
しっかりと固定されるベンリィちゃん
さよなら和歌山港
大きなタンカー
微かに見える和歌山
徳島港が見えてきました
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徳島港から実家まではベンリィちゃんで約3分。
実家に到着したのは午前9時半で、9時間超にのぼる長旅になった。
走行距離は120kmで、この前の京都ツーリングよりは短いけれど
片道なので往復するとなると240kmということに…。
ガソリンは半分近く残っているので2.5リットルで帰ってこれた。
これから毎日、インターンに行くまで実家でゆっくり過ごします。
あぁ、まじで遠かった。
無事に帰れてよかった。