英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

艦長、テムズに遊ぶ

2006-05-08 | イギリス
三人男がテムズを楽しんだ時代をさらに80年ばかり遡った19世紀初頭、カナルボートで河くだりを楽しむ男が一人。
その名は海軍士官「ホーンブロワー」。

C・S・フォレスター「トルコ沖の砲煙~海の男ホーンブロワーシリーズ4~

言わずもがなのイギリス海洋小説の雄。あのチャーチルも愛読していたというシリーズ全10巻の詳細紹介は別の機会にということにして。この巻「トルコ沖の砲煙」は冒頭いきなりホーンブロワーが家族とコッツウォルズ地方の運河を巡り、テムズ河をロンドンまで下る場面がコミカルに詳細に描かれます。驚くのはこの時代、水路が主要な運輸手段として整備され、管理されているということ。運河にしろテムズにしろ河岸にはボートを曳航する馬の道が設けられ、またどんな高台にもボートをあげる水閘システムをイギリス中につくることによって主要都市や鉱山などを結ぶ運河網が形成されたのです。ホーンブロワーが乗船したカナルボートは1等、2等と席が分かれており、オックスフォードからロンドンまでは夜行便で一晩で結ぶというもの。食事は途中立ち寄る船着場で売り子からビールやソーセージなどを買ってました。(けっこう高くて不味いとの弁、なんとホンブロワーはソーセージをテムズにこっそり捨ててしまいます。)

現在このカナルボート、観光用にイギリスのいたるところでレンタルが可能だそうです。
特別な資格も必要なく、時間さえ都合できればすばらしい休日が堪能できるでしょう。
カナルボートでボートホリデイ
実際のイメージはこんな感じなのでしょうか。(勝手にリンクしてごめんなさい)
カナルボートでの旅行記

さて、ロンドンに到着したホーンブロワー、実は新しい艦に赴任するための旅行だったのですが、出航前に大きな任務を拝命します。それはトラファルガル海戦で戦死したネルソン提督の葬儀を取り仕切れというミッション。今はトラファルガル広場で鳩の糞にまみれて立っているネルソン卿ですが、当時の人気は絶大だったとか。その葬儀の模様が、小説の中ではありますが再現され、イギリスにとっての海戦の勝利の意味が伝わってきます。ともあれホーンブロワー、危うくネルソンのご遺体をテムズに水没させるかもというアクシデントにもめげす、立派にグリニッジからウェストミンスターまでの水上葬儀パレードをやり遂げたのでした。

ホーンブロワーなんてTVドラマで十分!と言う方もこの巻の前半だけは読む価値があると思うのですが・・・。


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