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昔ある人が、4人連れで野道を通ったが、道の傍らに狐がいて、草の根を掘って土くれを穿ち、虫を食っていた。
狐が、この4人の者が来るのを見て思ったのは、
「俺が逃げずに、このままここにいたならば、この4人の者は俺を殺すにちがいない。また、逃げたとすれば、追ってきて打ち殺すだろう。ここはひとつ死んだふりをして、この4人が行き過ぎた後に、ゆっくりと虫を食い、それから、どこへでも逃げるのがよかろう」
と思い定めて、四肢を伸ばし、目をふさぎ息をもせず、死んだようにして伏していた。
かの4人の者は近づいて来ると、
「ここに狐が倒れている」
と言って、止めを刺そうと、あれこれ方法を探り、一人は「この狐の耳を切ったらいい」と言い、また一人は「尾を切るのがいい」と言い、また一人は「牙を切るべきだ」と言う。狐はこれを聞いて、伏したま思うには、
「初めから、こんなにひどい目に遭わされると判っていたら、どこへでもいいから、足に任せて逃げればよかったものを、死んだふりなんかするから、かえって災いを招いてしまいそうだ」
と歎き後悔したが、甲斐もない。しかし、
「耳、尾、牙を切られたとしても、命だけは助かるだろう」
と心の内に思った時、今一人が言うには、
「耳、尾、牙を切ったとしても、まだ死にはしない。とにかく首を切るべきだ」
と言ったので、狐は胆を潰し、
「もはやこれまでだ。首を切られたら、命も失ってしまう。このまま首を切られて死ぬのも、起きて逃げて殺されるのも、どっちにしても、命は助かりがたい。同じことなら、起きて逃げるほうが、もし逃げ延びて命が助かったなら、儲けものだ」
と決めて、起き上がり、一目散に逃げれば、4人の者はこれを見て、
「さては今まで死んだふりをして、俺たちを騙したな。憎い奴だ。それ、追い詰めて打ち殺せ」
と言うが早いか追いかけはじめ、ついに狐を捕えて、首を切り、足をも切り、狐は命を失ってしまった。
自分の浅知恵で、人を欺き誑かそうとする者が、結局わが身に災いを招く事は、皆、この狐に同じである。
昔ある人が、4人連れで野道を通ったが、道の傍らに狐がいて、草の根を掘って土くれを穿ち、虫を食っていた。
狐が、この4人の者が来るのを見て思ったのは、
「俺が逃げずに、このままここにいたならば、この4人の者は俺を殺すにちがいない。また、逃げたとすれば、追ってきて打ち殺すだろう。ここはひとつ死んだふりをして、この4人が行き過ぎた後に、ゆっくりと虫を食い、それから、どこへでも逃げるのがよかろう」
と思い定めて、四肢を伸ばし、目をふさぎ息をもせず、死んだようにして伏していた。
かの4人の者は近づいて来ると、
「ここに狐が倒れている」
と言って、止めを刺そうと、あれこれ方法を探り、一人は「この狐の耳を切ったらいい」と言い、また一人は「尾を切るのがいい」と言い、また一人は「牙を切るべきだ」と言う。狐はこれを聞いて、伏したま思うには、
「初めから、こんなにひどい目に遭わされると判っていたら、どこへでもいいから、足に任せて逃げればよかったものを、死んだふりなんかするから、かえって災いを招いてしまいそうだ」
と歎き後悔したが、甲斐もない。しかし、
「耳、尾、牙を切られたとしても、命だけは助かるだろう」
と心の内に思った時、今一人が言うには、
「耳、尾、牙を切ったとしても、まだ死にはしない。とにかく首を切るべきだ」
と言ったので、狐は胆を潰し、
「もはやこれまでだ。首を切られたら、命も失ってしまう。このまま首を切られて死ぬのも、起きて逃げて殺されるのも、どっちにしても、命は助かりがたい。同じことなら、起きて逃げるほうが、もし逃げ延びて命が助かったなら、儲けものだ」
と決めて、起き上がり、一目散に逃げれば、4人の者はこれを見て、
「さては今まで死んだふりをして、俺たちを騙したな。憎い奴だ。それ、追い詰めて打ち殺せ」
と言うが早いか追いかけはじめ、ついに狐を捕えて、首を切り、足をも切り、狐は命を失ってしまった。
自分の浅知恵で、人を欺き誑かそうとする者が、結局わが身に災いを招く事は、皆、この狐に同じである。