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安保法制改変:武力行使正当化論の変化と限界 三輪隆

2015年04月15日 | 研究会報告
2015.04.12.平和憲法研究会@明治大学
安保法制改変:武力行使正当化論の変化と限界
三輪 隆


【】安保法制改変の背景をめぐって

1. 安倍政権のグローバル大国化戦略
-1)グローバル日米同盟と対中政策のきしみ
-2)グローバル競争大国(二宮厚美)の軍事カード
国際政治における軍事カードをめぐる対抗

2.米軍事戦略の動揺
-1)対テロ戦争の挫折と財政縮減
-2)対中国戦略の動揺
「アジア・リバランス」:2020 年までに海空軍戦力の6割をアジア太平洋地域に配備
Air-Sea Battle: ASB構想の迷走

-3)日米安保体制改変
平時・有事の継ぎ目のない seamless 対応
海保/自衛隊間
単独対処から共同対処へ
発生・拡大に迅速対応
第1:情報能力
1)常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察(intelligence, surveillance, reconnaissance: ISR)活動、状況に応じた ISR 態勢の強化
大綱:海空自衛隊の ISR 活動強化と能力増強
2)日米両軍間のリアルタイム情報共有:日米調整メカニズムの常設化(GL改定)
3)グレーゾーン事態での両軍の連携強化
自衛隊出動手続の迅速化 →
米軍の関与の明確化(GL改定)
第2:事態展開に応じた警告や深刻化防止の抑止策強化
「柔軟抑止オプション」:演習を含む軍事行動の迅速実施準備 →
大綱 「事態の推移に応じ、訓練・演習を戦略的に実施、環境に即した部隊配置と部隊の機動展開を含む対処態勢の迅速構築」
第3:武力攻撃発生(有事)の実効性のある対応能力整備
大綱:各種活動を下支えする防衛力の「質」及び「量」を必要かつ十分 に確保」
南西諸島周辺の海空優勢の確保・緊急展開能力:新型護衛艦開発やイージス艦2隻の新規調達、早期警戒部隊及び追加の戦闘機部隊の那覇基地配備、南西諸島防衛を念頭におく陸自へのオスプレイ・水陸両用能力導入、統合輸送を活用した対艦・防空ミサイル、装甲車の緊急展開

3.武力紛争 vs.平和支援活動Peace Support Operations

-1)宣戦布告なき武力紛争に対する民衆の平和保障のための模索
a)拡大PKO平和執行部隊構想の挫折 *注1
1992 Boutros-Ghali「平和のための課題」43平和執行部隊構想
1995 平和執行構想の放棄 UNDoc. S/24868
b)地域的機関による強制行動 *注2
-2)第2世代PKO(複合・多機能型)と多国籍軍とのタイアップ増加 *注3
他の国連機関・多国籍軍などとの連携 integrated mission 型
* 後始末の保証効果 → (多国籍軍による)憲章外の武力攻撃の容易化
-4)強化された robust PKO
Brahimi報告 2000.8.:平和維持(停戦・軍撤退、停戦監視、選挙監視)+紛争後の平和構築(武装・動員解除、社会復帰、地雷除去、文民保護など)=複合・多機能型PKO
武力行使権限・装備もった大規模部隊、伝統的PKO+複合任務遂行部隊、「より柔軟・弾力的な」ROE、公平性基準修正(全当事者同意・中立性遵守の緩和)、緊急展開の常時準備
→ 他の要員・任務の防衛装備と権限、保護対象への攻撃策動源の鎮圧ROE
7章型PKOの一般化:自衛以外の武力不行使原則の緩和
目的・範囲の限定された任務遂行・文民保護のため「必要なあらゆる行動」=武力行使権限の承認
Capstone Doctrine 2008 自衛+任務防衛に武力行使を承認 (7章の平和強制と区別、紛争当事者同意、和平プロセス妨害行動抑止の最終手段、必要最小限)

* PKO参加5原則とのズレ拡大

【】法的問題 <国外派兵の根拠付けの集団的自衛権への一本化>

明文改憲に至る政治日程が再浮上している。この時点での批判は、改憲に対抗する構想も視野に3つのレベルから考えられる:
a)7.1閣議決定の厳格適用、
b)従来の政府解釈(自衛隊合憲論)にたつ批判、
c)学会多数説(日米安保・自衛隊違憲論)にたつ批判
b)にたつ批判が主になる。国会内の力関係を考えるとa)は必要不可欠。
しかしまた、改憲も日程に上る状況でもあり、c)も大事になっている

A.新事態関係:武力攻撃自体法・自衛隊法

1.対象の「事態」
自他連続安全保障論:「専ら他国に係るのでなければ自国にも関わる」
自国防衛・他国防衛の目的による区別は基準たりうるか?
「重要影響事態」「新事態」の位置づけ:個別自衛権系列(発生・切迫、予測、緊急対処)と集団的自衛権系列の2系列か、1系列化か? 
* 他国に対する武力攻撃と自国に対する武力攻撃を「切れ目ない」ものと捉える政府新解釈を政府従来解釈は論破できるか?

2.新旧3要件は客観的判断基準たりうるか?
・第1要件の判断要素(→横畠5要素)は動かしうるものなので客観的基準になりえない。
・ 第3要件:国際法では比例性、憲法では必要最小限とズレる。
集団的自衛権について、その(個別的自衛権と重なる部分への)限定容認論、新3要件の厳格適用を有意に越える憲法解釈はどうなるか?
* 新第1要件の基準性と旧第要件の基準性の違いは程度の差であって、質的に異なる程のものではないのではないか?

B.派兵関係

1. 「国際貢献」論、「国際平和協力」論

* 国家主権の部分移譲論:国連など既存国際機関への信頼
未完の地域包括的平和保障枠組み

2.派兵一般法の憲法適合性

1)事例毎の対応の必要、事前の一律確定の不可能性
a)任務・目的の個別具体性、
b)武力行使可能性予測の困難
cf. 事例毎の国連PKO派遣決議
* 全世界対象の対応は、能力上で不可能かつ対外政策として不適切
2)憲法適合性の疑いのある組織=自衛隊を、現状のまま部隊として参加させるのは「法的には難しい」芦部1-280
* 訓練、装備調達;事前調査、計画立案 の通年業務化
 そうした対外政策・能力の欠如
→ 「国際平和協力」業務の本務化は、自衛隊の違憲性を解消するか?
3)「国際協力」論から必要最小限論による正当化への移動?
派兵:92.4.28答弁:武力行使目的をもって武装した部隊を他国の領土・領海・領空に派遣することは、自衛のための必要限度を超えるので違憲
当該国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものでも、一体となるものでなければ許される。
武力行使を伴うものが不可であるのは、「自衛のための必要最小限度」を越えるから
とすると、武力行使を伴うものでも「自衛のための必要最小限度」を越えなければ合憲か???

3.国際法上の正当性

3-1)国際立憲主義と平和保障
安保理決議(米国の賛成必須)vs. 総会決議(安保理での拒否権牽制)
大国主導
国際政治の中での「領域国の要請+国連などの支持」

3-2)世界民衆の平和的生存権
国家・国際機関による「平和協力」の権力性
難民、無国籍者など“無告の民”の自由と権利

4. 国会承認

* 73条問題
派兵の計画策定と執行の政府への白紙委任?
a)承認対象の変化
戦争違法化、宣戦布告を伴う伝統的武力紛争の可能性低下
宣戦布告なき武力紛争、「平和支援活動」 Peace Support Operations の増大
民主的統制を縮減する理由となるか?
欧米での活発化 *6
-2)国内政治(自由・民主的政治過程)と国際政治への影響
政府独占 vs. 市民間対話への開放

b)承認内容
派遣理由となる事実、法的根拠、任務、派遣地域、派遣期間、見通し、派遣人数の上限と内訳、必要経費
中止、撤退の強制権限

5.「一体化」論

-1)武力行使についての日本政府の極小化解釈
1999.5.20.答弁「専ら実力の行使に係るもの」
1986 ICJ判決:憲章2(4)武力行使は、武器提供、軍隊訓練を含む軍事力行使、他国での戦闘部隊への自国領域使用容認
 行使先、被害者の視点からの把握
cf. 戦争概念からの転換理由

-2)判断4要素の相対性・流動性
97.2.13.大森答弁:イ)地理的関係、ロ)支援活動の内容、ハ)武力行使等の任にある者との関係、ニ)武力行使等に係る活動の現況
イ)時空間的制約:非戦闘地域問題
「現に戦闘が行なわれておらず、かつ、実施活動期間を通じて戦闘行為が行なわれることがないと認められる」
戦闘行為:「純粋に国内問題に留まる内乱や内戦、散発的な発砲、小規模な自爆テロのように計画性がなく、偶発的なものは、国又は国に準ずる組織の意志に基づいて遂行されているとは認められず、戦闘行為ではない」石破防衛庁長官、2003.10.2.
* いわゆるテロリスト、武装集団による散発的・偶発的攻撃は戦闘行為ではないから、それが頻発していても問題ない?!
活動の休止・停止の判断権限は?
ロ)支援活動の内容
PKO多機能化による活動の多様化
joint disarmament operations 紛争後の武装解除監視、武器収集・処分
humanitarian and rescue tasks, 人道復興支援、捜索救助、被災民救援活動活動(本来POK)
military advice and assistance tasks,
conflict prevention and peace-keeping tasks,
tasks of combat forces undertaken for crisis management, including peace-making and post-conflict stabilisation
軍民区別の相対化:「安全確保目的の活動」:恒久法からPOK後継法へ
参加除外基準の恣意性
周辺事態法、派兵特措法における除外基準

ハ)兵站支援 logistics
1986 ICJ判決:「武器提供、兵站またはその他の支援」は武力行使に該当
* 特措法別表における除外(発進準備中の航空機の給油・整備、武器弾薬提供)基準:
ニ)領域国政府の同意が及ぶ範囲;「国家に準ずる組織」非国家組織の不存在
ホ)「自衛隊員の安全」という別条件
 判断基準は不明

*事前の一律確定は不可能:武力行使との「一体化」排除が困難になれば、集団的自衛権行使としての正当化に向かうか?

6.武器使用と武力行使

-1)自然的権利性による武器の使用と武力行使の区別 注7
-2)自然的権利性の蒸発
a)個々の隊員の判断から組織判断へ 注8
b)防護対象の拡大:他者、他国軍の施設防護へ
2001.12.改正:「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員」+「職務を行うに伴い自己の管理下に入った者の声明又は身体」も
隊法第94-5:在外邦人等「保護の下に入った者」
*駆けつけ警護
「武器等防護のための武器使用」隊法第95条の適用除外解除;テロ特措法、PKO協力法改正
c)1999.4.3.衆議院防衛指針特別委・政府提出文書 :我が国の領域外での武器等防護もOK

-3)武器使用基準:rules of engagement: ROE(部隊行動基準、交戦規則)注9
Aタイプ:自己保存のための自然的権利たる武器使用(正当防衛・緊急避難を除く加害禁止) 注10
B タイプ(職務遂行のための武器使用)
1)任務遂行を実力でもって妨げる企てに対抗するための武器使用
eg. 輸送任務を妨害する集団の排除、活動地域の治安維持(→駐留、巡回、検問、武装勢力排除)、逃亡阻止
2)警察権の行使(治安出動、警護出動、海上警備行動、国民保護派遣の際の武器使用、部内の秩序維持)、
3)防衛力維持のための武器使用:武器等防護、施設警護
mission creep

注1 UNDoc. A/47/277-"/24111
ソマリア 1992 UNOSOM →UNITAF →1993 UNOSOM:7章措置 →米兵死亡
ボスニア 1992 UNPROFOR:7章措置 停戦監視→人道支援物資配給→安全地区保護→7章
→NATO空軍支援→多国籍軍(米軍主導)IFOR→→→2004 EUFOR

注2 <旧ユーゴ> 1992.11. UNSCR787:7章・8章に基づく取極めによる、武器禁輸1991UNSCR713、包括的経済制裁1992UNSCR757の履行確保 → NATO,WEU 停船検査
注3
1990 湾岸戦争 UNSCR678
(1992 ソマリア、ボスニア)
1994 ルワンダ虐殺
1997 アルバニア、中央アフリカ
1999 コソヴォ、東ティモール→INTERFET
2001 アフガニスタン →  ISAF 国際治安支援部隊
2003 イラク多国籍軍*、リベリア UNMIL
2004 ハイチ MINUSTAH、コートジボワール UNOCI、ボスニアEUFOR
2007 ダルフール UNAMID
2010 コンゴ安定化 MONUSCO+EUFOR
2011 南スーダン UNMISS
2013 中央アフリカ MINUSCA+MISCA

注4 集団的安全保障への参加をめぐる90年代からの議論
国際公共価値実現のための国連指揮下の強制措置は、個別国家の国権の発動としての武力行使とは本来的に性格を異にする(大沼保昭)、国際公益実現目的の強制行動 enforcement actions における軍事行動は「武器の使用」use of weapons, armsであって、「武力の行使」とは区別される(村瀬信也)、PKOは安保理(総会)の補助機関、PKO要員は、国連の利益のみのために、国連の指揮(指図)の下に行動、本国から指示を受けることは禁止される。PKO要員による武器の使用は、憲法9条の禁止する武力の行使とは異次元の問題(浅田正彦)

注5 武力行使能力をもつ「我が国の物的・人的組織体」を、武力が行使されている場、またはその可能性がある場に派遣することは、武力行使との「一体性」回避を安定的に確保したり、武力行使が生じる可能性の有無を予め事前に「一律に区切る」ことができない・少なくない(芦部)以上は、「一線を画することの実際に困難な活動に参加する」(高見)は、そもそも無理である。
80.10.28答弁:国連軍の目的任務は異なり、可否は一律に論じられない 
注6 WAGNER, Wolfgang, Parliamentary Control of Military Missions: Accounting for Pluralism, Geneva Center for the Democratic Control of Armed Forces, Occasional Paper, No.12. Aug. 2006
注7 1991.9.27.政府統一見解「武器の使用と武力行使の関係について」
武力行使:我が国の物的・ 人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為
武器使用:火器、 火薬類、刀剣類その他人を直接殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、道具、装置をその物の本来の用途に従って用いること;警察活動たる治安出動・海上警備活動の一環として行うもの
「武器の使用」のすべては「武力行使」に当たらない:「例えば、自己又は自己とともに現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利」なので、「武力行使」には当たらない
PKO協力法24(6):刑法第36条(正当防衛)、 同37条(緊急避難)の要件を満たす場合に限り可能
注8 要件充足の判断主体:「自衛隊員の上官のもとでいわば 個々の隊員の持つ権限を束ねる形で武器を使用することはあり得る」1991.9.25&30.池田防衛庁長官答弁
PKO協力法24(4)
「武器使用は上官の命令」1998.4.30.橋本首相答弁
注9 事務総長:武器の使用に関する大まかなガイドラインを含む報告書
安保理:派遣決議で報告書を了承 endorse
PKO軍司令官:Standing(or Standard)Operating Procedures, SOP(標準実施手続き)定式化し、 ROEを定め、部隊に配布
注10
イ) 具体的具体的な職務を行う際に限らずに認められるもの(PKO法24、テロ特措法12、イラク特措法17)、
ロ)具体的な職務を行う際に限定して認められるもの(防御施設構築の措置(隊法92-4)、在外邦人等の輸送(隊法第94-5)

注11 この他に、「参加と協力」をめぐる論点がある。90.10.26.中山答弁:
参加:指揮下に入る、一員として行動する >>目的・任務が武力行使を伴うか?
協力:参加を含む広義の関与形態;組織の外にあって参加に至らない各種の支援を含む

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