ボクは天下に喧伝されても良い晴れ男である。
明日はムリかなと、なかば諦めていたゴルフやテニスが、
梅雨のさなかや、冬の寒い日々といった悪条件の時にも、
当日だけは突然変異的に好天に恵まれたりする。
ヨーロッパ旅行にも20回以上行ったが、現地でカサをさした
記憶がない。常に好天気に恵まれてきた。
スイスアルプスの名山のあれこれ、例えばマッターホルン
など、全容をおさめるカメラマンも少ないのに、ボクの滞在中
に限って早朝から暮夜にいたるまで、その偉大にして美しい
姿を惜しげもなく見せてくれるのである。
(ヨーロッパの話は、ボクが旅行で行った時のことで、
滞在中はそうはいかなかった。ハンブルグ在勤時には、
むしろ毎日が雨といっても良かった。あの町で一日中好天
だった日を知らない)
ボクは普段は全く信仰のない神に感謝の祈りを捧げる。
神共にいまして、行く道を守り・・・・の賛美歌も歌うのである。
雨に祟られることが少ないボクは、十三年にも及ぶ人工透析に
通うのにも、カサを必要としないできたのだが、今日ばかりは
意に反し、カサを持たぬボクの身体に容赦なく冷たい雨が
降りそそいだ。
隣に立つ神戸ベイシェラトンでクッキーを求め、会社に戻り
お茶にしようよと声を掛けた。用意してくれたココアが
冷えた身体に吸い込まれていった。
ハンブルグやウイーン時代に、冬の寒い日ココアを飲む人を
多く見かけたものだった。今になって、カレらの気持ちが
分かるような気がした。
パパゲーノ