折々の写真＆雑感 176

　アメリカ人の友人が長男を連れて我が家にやって来た。その子の名前はクリスと云い、私の長男より一つ歳上だった。最初はぎこちなくしていた二人だったが、彼らだけで外に遊びに出した。帰りは二人で何かを話し、笑いながら帰ってきた。お互いに言葉は通じていない筈だったが、なんとかなるものだと感じた。親の転勤で子供を外国に連れて行くと、「往きの飛行機で日本語を忘れ、帰りの飛行機で外国語を忘れてくる」とよく云われているが、長男たちの行動を見ると頷けることだった。クリスが帰り、またしばらくして会うと、意思の疎通は最初からやり直さなければならないようだった。だが、既に親しくなっていた二人だったので、そこから先は早かった。

　私がアメリカ空軍に派遣されていた時、ガルシア軍曹と仲が良かった。アメリカの軍隊では、将校は兵や下士官と個人的に交際してはいけないとの軍規があった。私は軍属として勤務していたので、一応は将校待遇であった。だが、民間人であるため将校は勿論のこと一般の兵や下士官とも何の問題もなく仲良くやれた。ガルシア軍曹と私は年が同じだったせいか知り合ってすぐに１０年来の友のように親しくなった。我々一家を自宅に招待してくれたお礼に、彼の一家を私の自宅に招待したことも何度かあった。だが、ガルシアが長男のクリスだけを連れて我が家を訪れたことの方が多かった。私も勤務の帰りに彼の自宅で夕食をご馳走になったことも度々であった。

　ガルシア軍曹はスペイン系であると云っていたが、私に云わせると西部劇に出てくるメキシコの馬泥棒の子孫にしか見えなかった。メキシコがスペインに占領されていた歴史は長く、彼にスペイン人の血が入っていることは疑いようがないが、西部劇に出てくる「ガルシア」と云う名前は印象深かった。彼の自宅で夕食をご馳走になると必ずワインが出された。車で通勤していたので、いくらワインでも多く飲むわけにはいかなかった。ある夜、最初の一本を飲み干し、殆どはガルシアが飲んだのであるが、もう一本を大事そうに棚から出してきた。普通のワインのボトルとは違い、薄べったくなで肩の壜だった。一口飲んでみて、先ほどまで飲んでいたワインが水であったかのように感じた。スペインのワインだった。もう一杯飲めと勧められたが、これ以上飲んだのでは車を運転して帰れなくなる。「一旦封を切ったワインは、その日のうちに全てを飲み干さなければ不幸が起こる」との云い伝えがスペインにあるのだそうだ。タクシーで帰る決心をして勧められるままに飲んだ。世の中にこれほどのワインが存在するのかと思えるほどの旨さだった。それ以来あれほどのワインを飲んだことがない。

　前回に続いて上野動物園の写真である。だらけているトラやゴリラは相変わらずであったが、９カ月になったばかりのモモコの息子のリキだけは元気に我々の前に姿を出してくれた。モモコは足だけを見せて義理を果たしている積りのようだった。


キャノンＥＯＳ５ＤＭｋⅣに１００－４００ｍｍ、４.５－５.６Ｌを装着。　ＩＳＯ：６４００、　ｆ５.６、　１/２０秒、　露出補正：－１、　ＷＢ：オート、　ＰＬフィルター使用。


キャノンＥＯＳ５ＤＭｋⅣに１００－４００ｍｍ、４.５－５.６Ｌを装着。　ＩＳＯ：６４００、　ｆ５.６、　１/２５秒、　露出補正：－１、　ＷＢ：オート、　ＰＬフィルター使用。

　夏は色が汚いのでフラミンゴの檻に近づくことは今までになかった。だが、今回は一緒に行った写真仲間の一人がフラミンゴの水浴びを撮ろうと云ってくれた。私にとっては初めて見るフラミンゴの行水だった。夢中で撮った。


キャノンＥＯＳ５ＤＭｋⅣに１００－４００ｍｍ、４.５－５.６Ｌを装着。　ＩＳＯ：１００、　ｆ１１、　１/２００秒、　露出補正：－１、　ＷＢ：オート。


キャノンＥＯＳ５ＤＭｋⅣに１００－４００ｍｍ、４.５－５.６Ｌを装着。　ＩＳＯ：１００、　ｆ１１、　１/１６０秒、　露出補正：－１、　ＷＢ：オート。

　小獣館にいる「マヌルネコ」。小動物を餌にしている食肉獣であるが、実に可愛い。家猫と何ら変わらない。ガラスの檻の中を激しく動き廻り、実に撮りにくい。だが、一定の場所に来ると、時に立ち止まってポーズをとってくれる。この猫に会いに来るためだけに上野動物園に通ってくるファンもいるそうだ。


キャノンＥＯＳ５ＤＭｋⅣに１００－４００ｍｍ、４.５－５.６Ｌを装着。　ＩＳＯ：３２００、　ｆ５.６、　１/６０秒、　露出補正：－１、　ＷＢ：オート。


キャノンＥＯＳ５ＤＭｋⅣに１００－４００ｍｍ、４.５－５.６Ｌを装着。　ＩＳＯ：３２００、　ｆ５.６、　１/１２５露出補正：－１、　ＷＢ：オート。