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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

ペンタクラスタキーボードの基本コンセプト(旧2016年版)

2016-07-10 | 未分類カテゴリ

私たちが普段使っている日本語の入力には様々な方式が存在し、各種用途に合わせて今日まで大変な発展を遂げてきました。それでもまだ改善の余地があり入力方式も進化していくものと思われます。
ここでそれらの新しいもののひとつとして是非検討して頂きたいアイデアがあります。
日本語入力をより使いやすいものにするために従来の方法を根本から見直し、キーボードの配列に工夫を凝らして入力の最適化を図り、それに合わせてIMEのあり方やはたらき方もキーボードの特質を生かしつつ掘り下げげていったもの、それがペンタクラスタキーボードとその周辺コンセプトです。
入力には独自の配列のキーボードを使用します。このペンタクラスタキーボードは風変わりな見た目をしていますがさまざまな工夫を凝らした結果この形状に至ったものであり、一つ一つに意味があります。これから順を追ってそれらを説明していきたいと思います。

まずはキー配置図を見てみましょう。
ペンタクラスタキーボード キー配置図
*図1 (画像をクリックすると別ウインドウが開き拡大します)

キーの押下方向
*図2
まず全面に五角形のキーが並んでいますがこのキーを各頂点方向に押下することにより、かな文字や記号などを入力していきます。ひとかたまりの五角形(これをクラスタと呼びます)に各行のaiueo五段に分かれたかな文字が配置してあります。
指示方向の特徴として、「あ」段は上方向に、「い」段は盤面外側方向に、「う」段は盤面中央方向に、「え」段は盤面外側やや下方向に、「お」段は下方向に押下方向が設定されています。
その他盤面下側に斧の刃型のキーがあり、「ー(長音)」は上方向に、「ん(撥音)」は下方向に押下します。
さらに盤面下部左側のキー群の中には「っ(促音)」があり、盤面下部右側のキー群の中に「ゃゅょ(拗音)」が配置してあり、同様に各方向へ押下します。これらのキーの場合は丸型四角形のキーのため、押下方向も四方向です。


「でにをは」別口入力
*図3
次に使用頻度の高い助詞、助動詞、形容動詞の活用語尾など(特に一文字のもの)をあえて別入力し、文章の区切りをコンピュータにあらかじめ指示・マーキングして誤変換を防ぐ仕組みについて説明します。
キーボード下部に配置してある[は・が・も・の・や・へ・を・だ・と・に・で・な・の・か]の各キーは未変換文字列中に例えば助詞の「の」が出てきたら、通常の文字キーからではなく下部に配置してあるキーの中から「の」を入力してこれは助詞の「の」だよ、通常の単語の中の「の」ではないよ、とIMEに明示的に理解させるために押すキーとなっており、このとき通常のかなを入力したときと同じように自然に「の」がタイプされていきます。
この仕組みを「でにをは別口入力」と呼び、単に文節/語句の区切りを指定するだけではなく、同時にその文字を入力してしまおうという一石二鳥のシステムを目的として考案しました。
ちなみに「てにをは」ではなく「でにをは」となっているのは接続助詞「て」は[学んで・転んで・軋んで]等のかたちのときには濁って「で」になり、すでにある「で」の別口入力と混同してしまってわかりにくいため、接続助詞「て」の採用は見送られたことによります。
このような「でにをは別口入力」によって
きょうはいしゃにいった。→今日は医者に行った/今日歯医者に行った…のように区切りの捉え方で複数の解釈のある入力例でも使い分けることができます。
他にも胃が/伊賀、何回も見たい/なんか芋みたい、車で/来るまで…等助詞の区切りがはっきりしないことで起こる間違いは枚挙にいとまがありません。

続いて[な]や[だ]のキーですが、例えば:不自然な(漢語系形容動詞)、パワフルな(外来語系形容動詞)、クレイジーだ(形容動詞終止形)のように形容動詞の活用語尾の「な」や「だ」を別口入力することによって語句の区切りをはっきりさせて変換ミスを防ごうという狙いがあります。
「異なもの」「ハイな気分」など短い形容動詞の語句に特に有効ですし[注1]、カタカナ形容動詞の場合「な」だけひらがなで語幹の部分はカタカナにするように書き分けるのをこれ一つで簡単に行うことができます。
「な」は形容動詞の連体形の活用語尾の一部「な」の場合にのみ使いますが、別口入力「だ」は形容動詞の終止形の活用語尾「だ」で使われるほか、断定の助動詞「だ」(終止形に限る)においても使われます。
(例)アイスクリームだ。恐縮だ。

さらに最初の方では述べませんでしたが、盤面下部のキー群の中には[R]キー・[r]キーというものがあり、これもある働きをするために作られたキーです。
これらは若者ことばや口語で砕けた言い回しのときに使われる「ル形動詞」において使われることを目的としており、例えばDisるやトラブるなどといった語をDis[R]やトラブ[R]などのように入力してカタカナ部(あるいはローマ字部)と語尾「る」(ひらがな)の字種をそれぞれ書き分けて反映させるためのものです。
注意点としてル形動詞の活用例:ググる において ググる(終止形)→ぐぐ[R]、ググれ(命令形)→ぐぐ[R]×のように[R]一種の文字だけでは区別のつかない例が出てくるので別口入力を[R]と[r]二系統にしてル形動詞の活用に対応しています。
これによって
ググる→ぐぐ[R] <終止形>
ググらない→ぐぐ[R]ない <未然形>
ググろう→ぐぐ[R]う <未然形>
ググります→ぐぐ[R]ます <連用形>
ググった→ぐぐ[r]た <連用形>
ググるとき→ぐぐ[R]とき <連体形>
ググれば→ぐぐ[R]ば <仮定形>
ググれ→ぐぐ[r] <命令形>
のように入力すれば若者ことば[ル形動詞]のカタカナ部(あるいはローマ字部)とひらがな部の字種書き分けがスムーズにできるようになります。[R]一文字が複数の活用の変化によって臨機応変に変わるのでちょっとしたワイルドカードのようなものですね。
ただし活用の「ぐぐ[R]ます」、「ぐぐ[r]た」が同じ連用形なのにRrで揃っていないとのご指摘がありそうですが、これは[r]を少数派の入力としてあまり適用範囲が広がらないようにした方がわかりやすいのではという判断に基づき、ググった・ググれの2パターンに絞りました。
なお[R][r]を用いた別口入力はややこしいというか、ちょっと意欲的すぎるかな…という懸念もあって、あくまでも試みという位置づけとしており今後の検討次第で変わってくるかもしれません。


最後にこのペンタクラスタキーボードのコンセプトにおいても最も特徴的なアイデアの一つ、三属性による変換について解説していきたいと思います。
三属性の変換
*図4
日本語入力において最も頭を悩まされるものとして挙げられるものに同音異義語の最適な変換がしづらいことがあると思いますが、特に「捨て石」/「ステイし」のようにまったく意味機能の違う語が突然現れて困惑することがしばしばあります。
微妙なニュアンスの違いのある変換候補、例えば「悲しむ」/「哀しむ」、「機械」/「器械」のような変換間違いだったら流石に仕方ないなとあきらめもつきますが、上記のような次元の違う誤変換はなんとかしたいものです。
そこで、意味機能・変換したい意図の違いを3つの属性に分けてユーザーが選択して求める変換のタイプに近づけようとする工夫がこの「三属性による変換」です。
この三属性はかな漢字変換するときに通常の変換キーに加えて別の3種の変換キーを使って目的に応じた変換候補を選択・表示して同音異義語の区別・使い分けを飛躍的に向上させるためのアイデアで、3つの変換キーはそれぞれの性質に基づいてそれぞれ3つの属性を受け持っています。
大まかに説明すると名詞全般・事物概念のものは属性イに、用言全般・名詞述語文・サ変名詞は属性ロに分類され、その他の抽象的概念や接頭語・接尾語で使われるパーツを含む語句などは属性ハに分類されます。

図中の【かく】の変換時の流れを説明すると、まず核、角のような普通の名詞は属性イ、同じく人名等固有名詞である賀来、加来、郭も属性イに入り、すぐれた俳句の意味を持つ佳句も名詞ということで属性イに分類されます。

次に書く、描く、掻く、欠く、画くの5つは用言全般の変換ロに入ります。このような動詞に限らず、動作様態情動などを表す言葉はこのカテゴリーに分類されます。
それらに加えて、寄生や催促などのようなサ変動詞の語幹となる名詞(サ変名詞)も用言に深く関係するので変換ロに、天才や好評など名詞+だあるいは名詞+ですのかたち(名詞述語文)を構成する単語も同じく変換ロに入ります。
また厳密に定義が決まっているわけではありませんが、哀惜・愛惜(あいせき)や慚愧(ざんき)のように定型句で使われる語も情動イメージが豊富なため名詞属性には加えず様態情動の属性ロで処理した方が使い勝手が良さそうです。

そして第三極の属性としている変換属性ハは前記2種とは違う第三極の属性として分類され単に名詞的・動詞的などと指定する以前の言外のニュアンスに対して適宜割り当てられたものであり、単に名詞や動詞などの枠とは別に機能的にみて特徴的なはたらきをする言葉をあえて選択したいときに使います。
その適用条件はさまざまですが、図中の例において順番に説明すると、
・各は各車両・各メンバーなどの言葉につく接頭語のため
・格については所有格・リーダー格のような言葉につく接尾語であることのほか、「格が違う」で使われる格のように構造的ありかたを示す抽象的なものであるため通常の具体性の高い名詞とは違うニュアンスをくみ取って
・覚については痛覚・味覚のような言葉につく接尾語であるため
・欠くについては書くのような人間の動作を表す種の動詞とは違って全体性・構造性からみた変化を捉えた動詞なのでひと味違うため
・斯くについては事物指示的な機能をもつ言葉であるため
・郭については五稜郭・原了郭のように施設・店舗名につく接尾語のため
・閣については閣議・組閣のように内閣に関する語につく接頭語・接尾語のほかに飛雲閣・冷泉閣ホテルのように建造物・ホテルにつく接尾語のため
となっており接頭語・接尾語まわりの言葉以外のものは適用条件が抽象的であいまいなものとなっています。しかしながら難しいことにこれらに統一した評価軸というものが見いだせずもともと第一第二の属性に収まりきれなかったものを少々強引に受け皿にまとめたものでありあくまで便宜的な理由で作られたものであることに留意しなければならないと考えます。
要は第一、第二の属性では表せられないもの複数を寄せ集めたものが第三の属性ということです。

図中の変換ハの枠の中に通機的・接辞まわり・第三極の属性というのが書いてありますが、この「通機的」という言葉は全くの造語でざっくりいうと「機(メカニズム)が通じている、またはその瞬間をあらわす言葉」ということで
◆欠く・利く・矯正・結審・断つ・経つ・逸れ・撒く・伺う・委嘱(属性ハ)などの言葉が通機的な言葉の範疇に入るものとします。抽象的で説明しづらいのですが、単に人間の動作・意志を表す言葉と違い存在・ありかた・構造などが本質的に変化する・あるいは認識・評価において新たな局面があらわれるときに使われます。
上記の音の言葉が第二の属性ロとして使われる(人間の動作としての意味合いが強い)場合と対比してみると微妙なニュアンスの違いがわかると思います。↓
◆書く・聞く・強制・決心・立つ・建つ・反れ・巻く・窺う・移植(属性ロ)
この「三属性の変換」は未だはっきりとした定義が定まらず模索中ではありますが同音異義語の使い分けはまずは音ありきによってケースバイケースで分析・判断されるものなので具体例を個別的にこの先の記事で丁寧に説明していきたいと思います。

なお以上の三属性で必ず変換しなければならないというわけではなく、特に困難な変換でなければ[通常変換]のキーを入力すればできる範囲でプレーンな変換結果を返すものと想定しています。
さらに単漢字の変換候補をずらずらと表示するのもこの[通常変換]でおこなうものとします。

以上で大まかな説明は終わりです。IME動作の考察やインターフェイスがどのようなものになるのか、あるいは文法的な面での説明etc…その他のトピックは追ってこれから解説していきたいと思います。

※追記  補足事項

[注1][異なもの]若干の補足修正


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