日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

東電西沢社長が見せた究極の“やってはいけない”

2012-03-12 | 経営
あなたの会社で、一般人の方をあやめてしまうような、言ってみれば取り返しのつかない不祥事が起きたとします。その一年後の当日に、亡くなられたかたがいれば命日にあたる日に、会社の経営者は被害者を訪問して花を手向ける等お詫びの意を直接表明するものではないでしょうか。個人で言うなら、交通事故を起こしてしまい人をあやめてしまったら、やはり命日には被害者宅を訪問して許されないものであってもお詫びの気持ちを直接伝えるのが常識的な対応ではないでしょうか。例えば、先方に快くは迎え入れられないとしても、「会いたくない」と追い返されることになったとしても、です。人として、取り返しのつかないことを起こしてしまった責任とは、そういう形で償いを続けていくものではないのかと。

昨日、1年前の大変な出来事を思い出しつつ国民が沈痛な面持ちに浸った3月11日、東京電力の西沢社長は「福島の地で決意を語りたかった」としながらも、被災者の方々の下には訪れることなく、自社の原発施設内で社員向けに訓示をたれたと聞きます。訓示の中で当然、被災者の方々へのお詫びは申し述べたものの、それ以上のアクションは何もなし。お詫びの言葉は、被災者に直接伝えられることなくメディア経由で彼らの元へ、もしかするとホームページ掲載のあいさつ文程度のものを手紙の形で被災者宛送達しているのかもしれませんが…。血の通ったものではないでしょう。

このやり方、先の取り返しのつかない不祥事を起こした会社や交通事故を起こし人をあやめた個人の例で言うなら、命日に被害者宅を訪問せずにお詫びは手紙で済ます、代わりに自社社員や家族に「お前ら、こんなことがあると大変なことになるのだから、事故を二度と起こさないよう十分気をつけろよ」とこちらは直接話して聞かせる、ということになります。被災者や被害者は、仮に顔も見たくない相手であったとしても、自分の下へは来ないでこんな対応をしていたことが分かったら普通怒りますよね。身近な事例に置き換えて考えれば誰にでも分かるようなことなのに、どうしてそういう“やってはいけない”が分からないのでしょうか。東電は本当に病んでいる組織であるとつくづく思います。

ジャニーズだってAKBだって、昨日は被災地のために動き、被災地を日本を元気づけるメッセージを発信してくれたのですよ。なのに東電のトップは自社の社員向けにしか顔を見せることなく、被災者に対して間接的なお詫びしか言わなかったのです。当事者の、最高責任者が、です。結局偉くなりすぎたんでしょう、企業として。「俺たちが日本のエネルギーを支えている」「俺たちがいなければ日本の経済発展なんてありえない」「誰のおかげで近代的な暮らしが送れていると思っているんだ」、無意識のうちにそんな意識が組織の根底に根付いていて、その偉くなってしまったプライドがこんな大切な場面でトップの不遜な態度として形になって表れてしまう。誰もトップの行動を止めようとしない。あの日航でさえ、毎年御巣鷹山に登って未だに謝意を直接遺族に伝えているじゃないですか。東電は完全に、官僚的組織管理の弊害による崩壊現象の末期的症状です。

損害賠償手続きのあまりに役所的な対応に始まり、自社の責任を省みず国民に結果として事故負担を強いる電気料金値上げを当然と開き直り「値上げは権利」と言い放つ。そのたびごとに「おや?」とは思いましたが、被災者に対して1年後の被災日当日に直接お詫びを申し述べることなく、組織内の訓示でそれを済ますとは、もう完全アウトです。企業の“やってはいけない”ここに極まれり。普通なら「中小企業経営者の皆さんも、“他山の石”として学ばせてもらいましょう」とでも言うところですが、ここまで非常識であると学ぶものすら存在しません。

こんな組織に公的資金などつぎ込む必要なしです。国の責任において国民生活に影響を与えない手立てを講じつつ、会社はゼロクリアすべきでしょう。こんな会社に公的資金を入れても、恐らく「俺たちがいなけりゃ日本は生きていけないんだから、入れて当たり前だ」ぐらいにしか思わないのでしょう。そんな会社を無理に再生させても、国民経済になんのプラスもありません。株主責任も貸し手責任もしっかり問い、会社は整理しつつ分割で売り払うなどしてその資金で損害賠償をするなり、方法はいろいろあると思います。国はエネルギー政策の責任者としてこの尻拭いをしっかりすべきです。さすがに昨日の態度には、分かっていないにもほどがあると見ていてブチ切れました。

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2 コメント

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同感 (busbytokyo)
2012-03-13 16:22:58
よくぞ書いてくれました!と言う感じです。
そもそも東電には当事者意識が無く、被害者なのになんでバッシングされているのか、と言う態度が見て取れます。
競合他社がいないモノポリーなのでおっしゃる通りの「俺たちいないとたいへんだぞ」的行動になるのでしょう。しかし原子力村をはじめ他の既得権を守る力が働きます。官庁、閣僚、公務員、言えば国のあり方を見直すタイミングです。海外メディアも震災直後は好意的でしたし、このような悲劇が長年世界が待っていた日本の国政の改革をキックスタートさせるのではないか、と言う期待は国外メディアだけではなく国民も同じだったと思います。1年たった今、明らかになるのは政治家の不甲斐なさ、そして官僚と東電のような腐りきった企業の癒着です。
その中賛否両論ありますが橋下氏のような方が精力的に維新を掲げているのがせめてもの救いでしょうか。
Unknown (あい)
2012-03-15 02:34:53
同感の方に、更に同感!

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