知人が京都に部屋を借りたと聞き、驚き、うらやましく思い、かつ、困ったなと思った。この複雑な気持ちを綴ってみたい。
彼はPCに関する私の相談役だ。近くにいなくなるのは困る。しかし、いずれ、PCを設置し、Eメールで相談にのってもらえるだろう。
首都圏にある家はそのままに、単身で行ったり来たりの生活をするそうだ。「何のために?」などと野暮なことは聞くまい。永年働いて退役したのだから、何をしても(あるいは、何をしなくても)いいのだ。それにしても、その経済的余裕がうらやましい。
今、定年後をタイ・マレーシアなどの海外に移住したり長期滞在したりすることがはやっているらしいが、その長期滞在型だろうか? その場合、夫婦で滞在することが多いようだが、彼の場合は単身で、その点がユニークだ。それで、彼のパターンを「隠棲型」と名づけたい。
実は私も一時神奈川県央の丹沢山系を望む町に住まったことがあり、そのとき、戯れに、修学院に隠棲した兼好法師や吉田山の山麓に庵を結んだ鴨長明に自らを擬したことを思い起こす。しかし、彼の場合は本物の京都だ。うらやましく思う所以である。
ここで、彼に王維の詩「元二の安西に使いするを送る」を贈りたいと思う。
「謂(本当はサンズイ)城の朝雨軽塵をうるおし 客舎青青柳色新たなり」で始まる詩だ。時4月、昨夜来の大雨が中国大陸からもたらされた黄砂を洗い流してしまい、葉桜の緑が急に深まった。ピッタリの情景である。
さ、さ、もう一杯いきましょう、西の方、熱海を過ぎて丹那トンネルを抜ければ知った人もいなくなるでしょうから。「君に勧む更に尽くせよ一杯の酒を 西のかた陽関を出づれば故人なからん」
「蛍の光」の曲に合わせて朗々と歌えば送別気分が盛り上がる。
若干の誇張とデフォルマシオンはあるものの、送る側の気分に誤りはない。送られた側の後信を待つことにしよう。 (2006年4月)
彼はPCに関する私の相談役だ。近くにいなくなるのは困る。しかし、いずれ、PCを設置し、Eメールで相談にのってもらえるだろう。
首都圏にある家はそのままに、単身で行ったり来たりの生活をするそうだ。「何のために?」などと野暮なことは聞くまい。永年働いて退役したのだから、何をしても(あるいは、何をしなくても)いいのだ。それにしても、その経済的余裕がうらやましい。
今、定年後をタイ・マレーシアなどの海外に移住したり長期滞在したりすることがはやっているらしいが、その長期滞在型だろうか? その場合、夫婦で滞在することが多いようだが、彼の場合は単身で、その点がユニークだ。それで、彼のパターンを「隠棲型」と名づけたい。
実は私も一時神奈川県央の丹沢山系を望む町に住まったことがあり、そのとき、戯れに、修学院に隠棲した兼好法師や吉田山の山麓に庵を結んだ鴨長明に自らを擬したことを思い起こす。しかし、彼の場合は本物の京都だ。うらやましく思う所以である。
ここで、彼に王維の詩「元二の安西に使いするを送る」を贈りたいと思う。
「謂(本当はサンズイ)城の朝雨軽塵をうるおし 客舎青青柳色新たなり」で始まる詩だ。時4月、昨夜来の大雨が中国大陸からもたらされた黄砂を洗い流してしまい、葉桜の緑が急に深まった。ピッタリの情景である。
さ、さ、もう一杯いきましょう、西の方、熱海を過ぎて丹那トンネルを抜ければ知った人もいなくなるでしょうから。「君に勧む更に尽くせよ一杯の酒を 西のかた陽関を出づれば故人なからん」
「蛍の光」の曲に合わせて朗々と歌えば送別気分が盛り上がる。
若干の誇張とデフォルマシオンはあるものの、送る側の気分に誤りはない。送られた側の後信を待つことにしよう。 (2006年4月)