オリオン座近く

「今、オリオン座近くで流れ星が見れますよ！」

後輩の男の子からメッセージが来た。
その子に星が好きと言った覚えはないけれど、感動を伝えたかったのかなと思うと、連絡をくれたことはなんとなく嬉しかった。
「しっかり防寒してくださいね、超寒いですよ！！」と続けて心配もしてくれるので、素直に見ることにした。
わたしの住んでいるのはベランダがついているマンションなのでそこから見ようと
風呂上がりのぽかぽかした身体を風を通さない白いダウンで包み、温かい紅茶を入れて出た。さっきまで上気していた肌に冷たい空気が触れてぴんとする。

ひさびさに見る星は、夜空にちらちら揺れていた。
青っぽかったり赤っぽい星を見て、ああそういえば星って色があったんだっけとぼんやり思った。日曜日にちくま文庫版「星の王子さま」を買って読んだのだけれど、あの世界の星は卵の黄身みたいな色だったから忘れていた。月並みな言葉だけれど、心洗われるものだなあと思う。

バイト先の気の合う子が
「空見れているときって、自分に余裕があるときだなあって思うんです。」と言っていたことを思い出した。

最近ものすごく忙しいわけではないのに空を見ていなかったことに気付く。
卒論が追われているのもことも要因の一つある、中間報告の資料が思うように進まないということも。ただ、地面を向いているばかりでは終わらせない。下を向くか上を向くかどちらがいいとは言えない。ずっとポジティブでいろなんて、わたしは人に口が裂けても言えない。どちらの性質ももっていていいじゃないかと思う。

わたしはいまやるべきことをひとつずつ片付けていかなくてはならないことには変わりない。
このベランダで星が見れるのもあと少しなので習慣にしてみようかな。夜の数分、忙しくてもとれなくはない。
余裕がないと人に優しくできないから、自分への咎めにすることにする。
お徳用50パック入りの紅茶が今日はおいしかった。