大阪ボランティア協会・事業レポート

大阪ボランティア協会で実施した事業・イベントの報告を掲載しています。

裁判員ACT通信39号 ~第一回森岡cafe(2016年6月17日)の報告~

2016-08-25 17:03:43 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
///////////////■□ 裁判員ACT通信39号 □■///////////////////

 リオオリンピックにパラリンピック、高校野球とスポーツの夏ですね。
それにしても、毎日、非常に暑いです。皆様お元気でいらっしゃいますか。
 今回は第一回森岡cafe(2016年6月17日)の報告です。今回は裁判員経
験者の松尾悦子さん(裁判員経験時 30歳代、会社員)のお話を聞くことが
できました。裁判の感想やご意見など、松尾さんのお話を紹介します。
(なお、森岡cafeとは、裁判員ACTメンバーの森岡が司会進行を務める「裁
判員経験者交流会」および「裁判員制度について語り合う会」です。)



―担当した裁判はどのような内容ですか。
 2010年10月に仙台地裁で行われた7日間の裁判。30代の被告人が共犯者
と2人で被害者から金を奪った上で殺害したという強盗殺人事件だった。ただ
し、被害者の遺体は見つかっておらず、裁判で見た証拠は遺体を埋めたとさ
れる穴の写真だけというミステリー小説のような遺体なき殺人事件だった。被
告人は、「殺害する計画は知らなかった」と否認していた。被告人が共犯者と
殺害する話し合いをしたのか、殺害行為をしたのかなどが争点だった。
 検察官は強盗殺人罪で無期懲役を求刑、弁護人は「有期刑を」と主張。松
尾さんたちは、殺人の共謀は否定し強盗致死にとどまると判断して懲役15年
の判決を出した。

―裁判で印象に残ったことや、感想を教えて下さい。
 当時の職場には裁判員の特別休暇があり参加しやすい環境だったが、他の
裁判員には有給休暇をとって参加している人もおり、裁判中も仕事の連絡をし
ているような様子もあった。
 ギャングだというので、こわもての人を想像していたけれど、被告人はジャケ
ット羽織ってきちんとした服装の人だった。
 私は、疑わしきは罰せずなどのルールの説明を事前に裁判所から聞いたが、
裁判が終わって他の事件の裁判員経験者から、ルールの説明を十分に受け
なかったという話を聞いて驚いた。裁判のルールを知らない人もいると思うの
で最初に説明をしてもらう必要があると思う。
 裁判官は、意見の誘導はなかったが、タイムキーパーにはなっていたと思う。

―事件は、裁判員裁判初の「やり直し」になりましたね。
 (検察が控訴して翌年,裁判員裁判の一審判決が破棄され、量刑の見直しで
はなく裁判そのもののやり直しとなった。新たに裁判員が選任され、証人尋問
や被告人質問など一審DVD映像を見ての審理が行われた結果、検察の求刑
通り無期懲役の判決が出た。被告人がこれに対して控訴し、高裁はやり直しの
裁判員裁判判決を破棄、懲役15年の判決。最終的に初めの判決通りで確定し
た。)
 判決については、私達の判断に自信を持っていた。あれだけ評議をつくして
考えて、自信がありません、違いますとはいえない。
 裁判の差し戻しを聞き、やりきった感を持っていたのに、一気にテンション下
がった。やり直しの裁判の裁判員は、生の証言を聞かずにDVD映像を見るだ
けの裁判。しかも、やり直しということで前と違う結論を出さないといけないプ
レッシャーがあったかもしれない。彼らは自分たちの出した判決を破棄された
ことに対しても、徒労感があったのではないかと思う。
 判決が確定した時、被告人が、「最初の裁判員裁判と同じ主張が通ったから、
もういい」と上告を取り下げたと記事で知り、嬉しかった。

―メディアの取材を受けたり、シンポジウムなどに登壇したり、裁判員の経験を
積極的に話しておられるのは、どのような気持ちからですか?
 裁判員を務めたと話した時の周囲の反応が、怖いといった否定的なものが多
かったので、それを払拭したかった。とりあえず行ってみようというふうになって
ほしい。
 裁判員の経験は楽しかった。「せっかく当たったのだから、この経験を発信し
ない手はない」と思って話し始めた。ありのままに思うところを話している。家
族や周囲の人とは裁判員というキーワードをきっかけにいろんな話ができる
ようになったと思う。

―制度は最初の頃に比べて良くなったと思いますか? 
 そう変わっていないように思う。私は会社員枠として話しているつもりだが、
会社員が日本人の大多数を占めているのに発言する人が少ない。公の場で
話している裁判員の経験は古いことが多い。最近の裁判の様子がわかれば、
制度が良くなってきているのかどうかわかると思うので、新しい人にどんどん
話してほしい。
 私は、虐待や性暴力の事件、死刑事件なら仮病を使ってでも辞退したと思
う。子どもがいるので、許せないという感情が抑えられなければきちんと判断
ができないし、それは裁判員としてふさわしくないと思った。死刑は元々制度
に反対なのでかかわりたくなかった。
 担当する事件がわかってから、裁判員がこの事件は精神的に無理という気
持ちがあれば辞退できるようになってもいいと思う。「できない」と思いながら
やるのは被告人に対しても失礼で、裁判自体が不幸になる。できると思う人
がやるのがいい。

 松尾さんは、6年前の裁判のことを鮮明に記憶しておられた。それは、前向き
かつ冷静な態度で裁判に向き合っていたことや、その後も取材に応じるなど
繰り返し発言する機会があったことも手伝っているだろう。また、松尾さんが判
決要旨を持っていたことで、裁判の記憶を確認できたことも確かな記憶を保持
するのに役立っているように思われる。
 松尾さんは、評議の終盤で読み合わせに使った10ページにわたる判決文の
下書きを「記念にどうぞ」と持ち帰りを許されたそうだ。
 裁判所が「裁判員が家族や職場に話しやすいように判決要旨を渡すこともあ
る」と聞くが、判決要旨を持っている経験者に出会うことは少ない。メモの持ち
帰りが禁止されていることや、守秘義務を気にせず語り合う環境がないことか
ら、裁判員ACTでこれまで聞き取りをした経験者も、「裁判の記憶ははっきりし
ない」という人が多い。
 松尾さんも言うように、新しい人がどんどん裁判員裁判を語るためにも、裁判
員に選ばれたら「判決文がほしい」と声に出してほしい
(裁判員ノートhttp://www.youtube.com/watch?v=JFUgKlTPP60参照)。裁判
所はぜひ、判決要旨を裁判員に提供してほしい。

2016年10月23日(日)には連続セミナー第3回があります。
 「彼はどう裁かれたのか~裁判員裁判見えてくる社会的孤立~」
講師:池田直樹氏(大阪弁護士会)です。
 セミナー開催場所は、市民活動スクエア「CANVAS谷町」(大阪市中央区谷町
2丁目2-20 2F)です。参加費は、1000円(当日払)です。
 セミナーへの参加申し込みは①ホームページから、または、②本メールに添付
しておりますチラシのフォームに記入の上、FAXにてお願いいたします。皆様とご
一緒できることを楽しみにしております。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
★“裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会
事務局:〒540-0012
大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F 市民活動スクエア「CANVAS谷町」
(福)大阪ボランティア協会 “裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会(担当:永井)
Email: office@osakavol.org
URL: http://www.osakavol.org/08/saibanin/index.html

★フェイスブック
https://www.facebook.com/saibaninact.osakavol
★事業報告ブログ
http://blog.goo.ne.jp/osakavol-report/c/75d41997315d8237933718b371a797bf
★裁判員ACTの提言(you tube版)
http://www.youtube.com/watch?v=Pwk2ee2Dqe0
★裁判員ノート~裁判員になったあなたへ(you tube版)
http://www.youtube.com/watch?v=JFUgKlTPP60&feature=youtu.

メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
月1回、CANVAS谷町に集まっての例会を中心に活動しています。
裁判員ACT通信へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※