大阪ボランティア協会・事業レポート

大阪ボランティア協会で実施した事業・イベントの報告を掲載しています。

裁判員ACT通信43号 ~私たちは裁判員制度にどう向き合うか~

2017-01-21 17:10:31 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
  //////////////■□ 裁判員ACT通信43号 □■//////////////


 2016年12月3日に裁判員ACTの公開学習会が開かれ、強盗殺人罪に問
われた被告の裁判員裁判を経験した会社員・松尾悦子さんの実体験や、甲南大の
笹倉香奈教授による裁判員制度の仕組みについての講演があり、参加した市民ら
約20人が熱心に耳を傾けました。松尾さんからは「裁判員経験者がいろんな意
見を出さなければ制度は良くならない」との指摘がありました。経験者と弁護士、
市民らによる班ごとのグループディスカッションもあり、もし自分が裁判員に選
ばれたらどうしすればいいのか、様々な意見を出し合いました。

▼笹倉教授「捜査手続きの改善を」

 笹倉教授からは刑事裁判と裁判員制度の概要について説明がありました。冒頭
では、刑事手続きは国家が不当な刑罰を科さないようにする手続きであるという
点や、裁判は証拠に基づいて事実認定されなくてはならないなどの原則について
紹介がありました。
 さらに、裁判員制度が導入された経緯や目的を巡り、最高裁の2011年の大
法廷判決を引用し「(制度は)司法の国民的基盤の強化を図るものである」「司
法権の行使に対する国民の参加という点で、参政権と同様の権限を国民に付与す
るものである」という解説がされました。海外の制度については、アメリカやイ
ギリスの「陪審制度」や、ドイツなどの「参審制度」の仕組みを確認し、日本の
裁判員制度については最高裁の資料を用いながら、選任方法や裁判の流れ、守秘
義務について時間が割かれました。
 裁判員制度の課題についても指摘がありました。2009年の制度開始から、
裁判員の呼び出しに対する出席率が年々低下している実態があることや、北九州
で暴力団員による裁判員への「声掛け」があったことなど、精神的ケアが必要と
されている点です。
 最後に、笹倉教授は「日本の刑事手続きの一番大きな問題は捜査手続きにあっ
たと言われてきた。ここが改善されなければ刑事司法全体が良くなったと言える
のか。裁判員制度だけでなく今後の課題となる」と問題提起し、講演を締めくく
りました。

▼松尾さん「一生に一度の経験」

 松尾さんは2010年に仙台地裁で、強盗殺人罪に問われた被告の裁判員裁判
に参加しました。当時「遺体なき殺人」と報道された事件で、意図的に殺害した
のか、そうではないのかが争点となりました。
 松尾さんは社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持ち、障害者の就労支援の仕
事をしている女子中学生の母親です。大学時代には、少年犯罪などの司法福祉の
勉強をしており、もともと裁判員制度についての知識もありました。ただ、実際
に最高裁からの通知を郵便で受け取ったのはお母さんで、「あなた何やったの」
と職場に電話が来たそうです。「たぶん裁判員だから、何もやっていないから大
丈夫だよ」と言うと、ようやく安心してくれました。
 参加に向けて、職場には裁判員休暇がありましたが、1週間休むための引き継
ぎは大変だったそうです。それでも「仕事は1週間分を取り返せても、裁判員は
一生できないかもしれない」と思い、参加を決断したそうです。
 事件については事前に調べることはありませんでした。「素人として参加した
方が良いんだろうな」と思ったからです。守秘義務について裁判所では「法廷で
見聞きしたことは公開されているからしゃべっても良いが、評議室の内容はだめ
です」と説明があり、「それが分かりやすかった」と振り返っていました。
 初公判が始まり、対面した被告の印象は「普通のこざっぱりした人が出てきた」
というものでした。松尾さんと被告とは同年代のどこにでもいるような人。検察
側と被告の言い分が違うのを見て「ああ割れているな」と感じた一方、弁護側は
「何を言っているかよく分からない。切れがなかった」と感じ、法廷用の資料も
文章だけの分かりにくいものでした。
 お昼ご飯は「大」か「小」のお弁当だけでした。あまりおいしくもなく、外に
買いに行ったり裁判所の食堂を使ったりはできなかったことが不満だったそうで
す。「死刑はないと思っていた」と予想していたとおり、検察側の求刑は無期懲
役。
 その後、量刑検索システムを使って、有期刑か無期刑かを判断し、判決では強
盗致死罪にとどまると認定し、被告人に懲役15年を言い渡しました。当時の被
告の印象は「すごく納得したように見えた」そうです。終わった感想は「充実し
ていた」。松尾さんは裁判所から贈呈されたバッジや感謝状、判決文の下書きも
持参され、披露して頂きました。
 しかし、判決はその後、仙台高裁で地裁に審理を差し戻されます。裁判所から
連絡はなく、報道で知ったそうで、「できるものなら控訴しましたとか、連絡が
ほしかった」と求めていました。差し戻しの裁判は、最初の審理を録画したDV
Dを見る内容。松尾さんは「高裁で『審理が尽くされていない』と言われても、
評議室のことは言えない。その内容を伝えることが一切できず嫌だった。審理を
尽くしたと言うほかに、反論ができないからです」と話し、憤りを見せる場面も
ありました。
 差し戻しの裁判では検察側の求刑と同じ無期懲役の判決がいったん言い渡され
ましたが、最終的には最高裁で松尾さんらが下した懲役15年の判決が確定しま
した。松尾さんは「被告は罪を犯して刑に服さないといけない。でも、こんな無
駄な時間を経験する刑はないはずだ。被告はつらかったのではないか」と指摘し
ました。服役後の被告については「出てくるときは60歳を超えて仕事もない。
そうなると、仕事柄、司法福祉で就労支援でも難しい。とにかく穏やかな老後を
過ごして頂きたい」と話していました。「裁判員制度を良くするにはどうすれば
いいですか」という質問に対しては「裁判員経験者が言いたいことを言える環境
ではない。いろんな人がいろんなことをしゃべっていかないと何も変わらない」
という危機感を示していました。
 最後に、これから裁判員に選ばれる人へのアドバイスをお願いすると、こんな
風に答えてていただけました。「もし呼び出しが来たらまずは行ってください。
一生に一度しかできない経験だと思います。嫌々やっていたら良い裁判にはなら
ない。興味を持ってやっていただければ、必ず良い経験になると思います」。

▼市民ら「イメージわいた」

 公開学習会の最後には、参加した市民らと弁護士、大学教授ら有識者が班ごと
に分かれて、裁判員制度について意見交換をしました。「どんな事件が裁判員裁
判の対象になるのかイメージがなかったが、今日聞いてやってみても良いと思っ
た」「体験談を聞くことで、裁判員候補者になったときのイメージがわいた」な
どの意見が出ました。京都弁護士会の遠山大輔弁護士は、裁判員裁判で被告が黙
秘権を行使した事例を紹介し「裁判員から被告に『あなた無実なんでしょ。だっ
たら黙秘するとか言わないでちゃんとしゃべったらどうですか』と質問した人も
いる。黙秘権をどう分かってもらえるかが次の課題だ」という決意表明があり、
その後の懇親会でも黙秘権について議論が盛り上がりました。


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★“裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会
事務局:〒540-0012
大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F 市民活動スクエア「CANVAS谷町」
(福)大阪ボランティア協会 “裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会(担当:永井)
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メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
月1回、CANVAS谷町に集まっての例会を中心に活動しています。
裁判員ACT通信へのご意見・ご感想もお待ちしております。
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裁判員ACT通信42号 ~彼はどう裁かれたのか~

2016-12-29 10:50:58 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
///////////////■□ 裁判員ACT通信42号 □■///////////////////

年の瀬を迎え、寒さもだんだんと厳しくなってまいりました。皆様いかがお過
ごしでしょうか。
今回の裁判員ACT通信では、10月23日(日)に開催しました「連続セミナー
-裁判員裁判から見えてくる社会的孤立とその課題」の最終回のご報告を
いたします。
 今回のセミナーは、「彼はどう裁かれたのか~裁判員裁判から見えてくる
社会的孤立~」と題して、弁護士の池田直樹先生(大阪弁護士会・上本町
総合法律事務所所長)にお越しいただき、ご講演いただきました。具体的な
事件例を通して、加害者側の社会的孤立が背景と考えられる犯罪に対して
どのように向き合うべきか、このような事件を審理する立場として裁判員裁
判とどう向き合うべきかを考えていきました。

 まずは、以下に今回先生よりお話いただいた事件例をご紹介いたします。
【例1:京都事件】
 介護者である息子(54歳)が被介護者である認知症の母(86歳)を絞殺しま
した。父はすでに亡くなっており、息子は仕事しながらも一人で母の介護の
すべてを請け負っていました。息子は介護に専念しなければならず止む無
く退職。
 生活保護は「まだ働ける」として受け入れてもらうことができず、求職活動
も「介護の空き時間だけ」で長時間働けない条件下では成功しませんでした。
やがて雇用保険が切れ、生活費が底を尽いた息子は、母と共に最期の思
い出作りのために京都市内に出かけた後、事件現場へ。母を絞殺し、自身
も自殺を図りましたが意識を失っているところを通行人に発見されました。
 判決は承諾殺人で懲役2年6カ月・執行猶予3年となりましたが、8年後に
彼は自殺しました。
 (参考動画: https://www.youtube.com/watch?v=QLjXRMoM7Ec )

【例2:名古屋無理心中事件】
 夫(68歳)が30年間連れ添った認知症の妻(74歳)を絞殺しました。夫は妻
を一人で介護していましたが、回復の見込みがないことに絶望し、妻を絞殺。
自身も自殺を図りましたが死ぬことができず、後に警察に出頭しました。
 裁判では多くの嘆願書や寄せられ、執行猶予付きの有罪判決でしたが、
判決の4日後に5階の自宅から飛び降り死亡しました。

 これら2つの事件には、介護による加害者の社会的孤立という背景があっ
たと考えることができます。では、このような事件はなぜ起こってしまったの
でしょうか。また未然に防ぐことは出来るのでしょうか。
池田先生からは、『「法的正義」という観点からこれらの事件を見た時には、
「罪を犯した事実」がある以上被告を裁くことは筋が通っていると考えること
ができる一方で、「社会的正義」という観点から見た時には、加害者が罪を
犯す原因となった「孤立」の状況を生み出した社会が彼らを裁くことには正
当性があるのか』というお話がありました。このような事件を防ぐには同情
ではなく「不法行為(殺人)」以外の選択肢を社会が用意する必要があり、
ここで重要となってくるのが成熟した地域コミュニティーです。例えば長野県
諏訪市の「シルバーネット」のように、介護サービスが利用料の滞納により
ストップになってしまう前に訪問相談があれば「不法行為」以外の選択肢を
提供できることでしょう。地域コミュニティーによって相談ができる、頼ること
のできる環境があるということは、犯罪の原因となりかねない「孤立」を解消
するのに有効な手段となるようです。介護殺人に関わらず、事件を犯す前や、
刑務所を出所した後など各フェーズにおいて地域コミュニティーが各人の居
場所を用意することが社会的孤立を背景とする事件の発生を未然に防止し、
事件を解決していくポイントとなっていくことでしょう。

最後に池田先生より、コミュニティーを形成する一員としての裁判員に「法廷
で介護殺人の被告人に語りかけてください」とのメッセージをいただきました。
罪を犯してしまった被告人を社会からはじき出すのではなく、「あなたには帰っ
てくる場所がありますよ」と声を掛け、再び社会で受け止める姿勢が、孤立に
よる死の連鎖を断ち切ることに繋がるかもしれません。

グループディスカッションでも今回のテーマのような事件に対して「かわいそう
に」「でも仕方ないよね」で済まさずに、同じ社会の一員として受け止めること
の難しさ、今後社会として受け止めるツールはないのかという発言が多くあっ
たように思います。根本的な解決を目指すため、地域コミュニティーの一員と
して一丸となって考えていくことが求められていくことでしょう。

[文責:小坂祐貴]

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メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
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裁判員ACT通信41号 ~「今市事件勉強会」報告~

2016-12-04 12:23:18 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
///////////////■□裁判員ACT通信41号 □■///////////////////
■今回は、今市事件の公判(2016年2月29日~4月8日)を傍聴された栃木県
の白鴎大学法学部平山真理教授に来ていただき(9月10日)、「今市事件裁
判員裁判を通じて刑事司法制度の課題を考える~取り調べの可視化、裁判
員の負担、被害者問題」とのテーマで講演された内容の報告です。
今市事件とは、当時の今市市(現在は日光市)で2005年12月に小1女児が行
方不明になり翌日遺体で発見された事件です。2014年1月になって別件で逮
捕された被告人が「本件の殺人を自供した」として起訴され、公判では被告は
「殺していない」と無罪を主張したのに有罪・無期懲役の判決でした。
1回目は傍聴席数の20倍以上の人が詰めかけたこの事件の公判は16回にわ
たり、平山講師はそのうちの半数ほどを傍聴されました。証人が計17人で内
16人が取り調べた検察官や警察官などを含む検察側だった特徴ある裁判員
裁判でした。被告人の自白調書以外には殺害に直接つながる物証がなく、
取り調べ状況をほぼ録画しながら、被疑者が一番最初に自白されたとされる
肝心の部分は録画されておらず、しかし、後日、別の検察官に対して供述して
いる様子の録音録画を見て、自白の信用性を裁判員が判断してしまったとい
わざるを得ないなど、多くの問題点がありました。

■講演で講師は以下の論点に整理して、この裁判への思いを話されました。
<論点1>事件による被害者、地域社会への影響
 事件後8年間は誰も逮捕されず、被害者遺族の苦しみや地域社会の不安が
続き、捜査機関への非難が彼らを焦らせた。事件を契機に子どもへの声掛け
を規制する条例が栃木県などで制定され、「不審者」排除の傾向が強まる。
<論点2>取り調べの可視化のあり方
 被疑者が検察官に対して最初に殺人を自供したとされる場面は録画されて
ないが、「こうやって刺して…」と別の検察官に対して被告が進んで自白して
いるように見える映像が裁判員に与えるインパクトは絶大で、「取り調べの可
視化」が検察の新たな武器になっている。
<論点3>裁判員の負担と守秘義務
 15日間の審理で裁判員に負担が大きかった長期裁判で、難しい判断を迫ら
れて議論し悩んだ経験を人に話して社会に還元したいと思う裁判員もいるだろ
うに、守秘義務によりほとんど話せないのは酷ではないか。
<論点4>刑事裁判と被害者
 刑事裁判で一定の重大事件については、被害者が被害者参加制度により
関与できるので、本件でも被害者遺族が参加していたが、被告人の否認事件
で事実認定前に被害者側の意見を裁判員・裁判官に聞かせることに問題はな
いのか。また、被害者が裁判に参加した場合に、参加することで更に傷ついた
被害者はサポートを受けられるのだろうか。
                            <論点整理、以上>

■検察官による取調べで2人目の“優しい”検察官に変わったことで、被疑者が
大いに迎合的になって自白したと言えますが、公判で裁判員が被告人に「どう
して自白したのか」と質問したことに対して、弁護人は弁論で被告人が迎合した
心理について充分に述べなかったとのことです。「やってもいないのに『やった』
と言うはずがない」とほとんどの人が思っているのだから、被告人が追い込まれ
た長期の勾留による取り調べの問題や心理状況を説明すべきだったと言えます。

■判決では、検察官が証拠とした「Nシステム」(自動車の走行記録)の記録や、
鑑定により被害者の遺体に付着していた猫の毛と被告の飼っていた猫とが同じ
グループに属する(同体ではなく)、その他、「スタンガンの空き箱」、「被告人が
出した母親への謝罪の手紙」等の証拠はどれも、「被告人が犯人ではないとす
れば合理的に説明できない」と言う程度にまでは、被告人の有罪を証明できて
いない。しかし一方、被告人が検察官に対して述べている自白は具体的で、被
害者の遺体や遺棄現場の様子と矛盾しない、という説明で被告人を有罪にした
ものでした。傍聴していたマスコミ関係者も「これで有罪は、ないね」と語ってい
た人もいたとのことです。
講演を聞いた参加者からの質疑でも、被告人のDNAが被害者の遺体から見つ
かっていないことや、自白と現場の状況が違う点などについて、「足利事件の反
省が生きてない」との意見や、「Nシステム」や猫の毛鑑定などの問題点も含め
て疑問に思う、との多くの意見が出されました。

★【編集後記】講演を聞いて、根拠の弱いこんな証拠で「そういうこともありうる
」などと裁判官が解釈して有罪になるのなら、「誰でもいいから犯人にして事件
解決に持ち込みたい」と警察・検察権力が思えば、今後も事件に無関係の無
実の人間が都合良く犯罪者にされかねない恐怖を感じます。加えて、司法改
革の一環として先日の刑事訴訟法改正で採用された「司法取引」も怖い。「あ
いつが○○した」と被疑者が嘘を言っても無実の人間が犯人にされかねず、
この制度化に疑問を感じます。(森岡)

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裁判員ACT通信40号 ~彼は社会に出たあとどうしているのか、他報告~

2016-10-21 21:26:55 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
///////////////■□ 裁判員ACT通信40号 □■///////////////////

 10月下旬だというのに、まだまだ暑い日が続きますが、皆様いかがお過ご
しでしょうか。
 さて、裁判員ACTでは、今年度は、様々な視点から犯罪の原因を考え、
社会の側として、今後どのように取り組むべきかについて探るため、連続セ
ミナー「裁判員裁判から見えてくる社会的孤立とその課題」を実施しています。
 今回は、【1】「連続セミナー」第2回の報告、【2】「裁判員ACT傍聴カ
フェ」のご報告です。

【1】連続セミナー第2回報告(8月21日)
 8月21日(日)は、第2回「彼は社会に出たあとどうしているのか~出所者雇
用の取組み~」と題して、講師の岡本昌宏氏(セリエ・コーポレーション社長、
NPO法人なんとかなる代表)にお越しいただき、お話をお聞きしました。
 刑務所を出所した後、社会復帰するためには、就労、教育、住居などの支援
が必要です。岡本さんは、セリエコーポレーション(建設業とび職)の社長とし
て、全国の児童福祉施設や少年院、刑務所から、これまで多くの人を受け入れて
こられました。具体的な体験などをお話し頂き、住まいと仕事を用意し、身元引
受をして受け入れても、離職率が高いことなど、社会復帰のあり方に色々な課
題があることが紹介されました。岡本さんは、さらにNPO法人を立ち上げて、寮
母や臨床心理士など様々な立場の人の協力を得ながら、住まいや就労支援の
ほか、食事や学習進学支援、メンタルケア、自立後の継続的支援など、より総
合的な支援をめざされています。
 全国の施設をまわり、情熱的に語る岡本さんのお話を聞くため、大阪や京都、
兵庫だけでなく、東京や島根など遠方からも参加者がかけつけてこられました。
魅力あふれる人柄と情熱に感銘を受けた参加者も多く、講演後、1時間ほど残っ
て話をされたあと、懇親会でも有意義な議論が活発に続けられました。
 これらのセミナー内容については、欠席された人からの要望もあり、現在、各
講義の内容をまとめた「講義ノート」を作成中です。第1回~第2回と、社会福
祉士やボランティア団体など福祉関係の参加も増え、セミナーの回数を重ねるご
とに、これまで司法制度に興味がなかった人たちにも関心が広がっているようです。
 この連続セミナーの「講義ノート」については、実費販売になる予定ですが、
詳細は、後日またお知らせいたします。

なお、2016年10月23日(日)には、いよいよ連続セミナーの第3回があります。
「彼はどう裁かれたのか~裁判員裁判見えてくる社会的孤立~」
講師:池田直樹氏(大阪弁護士会)
 介護疲れからの無理心中事件や、児童虐待事件などのほか、障害者が殺人
行為をしてしまう場合もあります。具体的な事件をとおして、私たちはどのよう
にこれらの犯罪や裁判員裁判に向き合うべきかを考えます。

 開催場所は、市民活動スクエア「CANVAS谷町」(大阪市中央区谷町2丁目2-
20 2F)、午後2~4時半、参加費は1000円(当日払)です。
 セミナーへの参加申し込みは①お電話06-6809-4901へ、
または②ホームページ
( http://www.osakavol.org/08/saibanin/saibanin_seminar2016_form.html )
へお願いいたします。

【2】裁判員ACT傍聴カフェ報告(9月13日)
 裁判員ACTでは、市民の目で裁判員裁判を傍聴する「傍聴カフェ」を月1回ほ
ど実施しています。9月13日は、ACTメンバー数名と一般からの参加もあり、午
前中から大阪地裁に集合しました。この日、大阪地裁では、3つの裁判員裁判
がありましたが、予定していた法廷が満席だったので、二つに分かれて傍聴し
ました。
 一つは、若い男性が自転車やバイクに放火をし、住居の一部にも延焼した事
件で、法廷では、被告人の父親が証言をされていました。息子と離れて暮らし
ており、職場でストレスをためていたことに気づかなかったことや保釈されてい
る被告人の真面目な暮らしぶりなどを話されていました。被害者に親子一緒に
謝りにいくと、逆に心配してもらったことなどを涙ながらに語られ、傍聴席や裁
判員の中でももらい泣きをされている人がいました。
 もう一つは、西成区に住む一人暮らしの60代男性が、自宅で友達と酒を飲ん
でいるうちに、ナイフで刺して死なせてしまった事件でした。こちらは第1回公
判だったので、冒頭陳述から聞くことができましたが、午後からも、傍聴席から
見える大型モニターにはほとんど何も表示されず、傍聴する立場としては、少し
わかりにくい裁判でした。その後「覚せい剤取締法違反」の法廷に移動しました。
この法廷では、6年前、被告人からトルコでスーツケースを渡され、関空で逮捕
されたという若い女性が証言をしていました。当時は、被告人の高齢の女性の
ことも、優しくて親切な人だとばかり思っていたそうで、「関空で捕まるまで、
こんな重い罪だと思わなかった」と話しているのが印象的でした。
 夕方から、弁護士会館などを見学し、近くのお店で懇親会をしました。1年ぶ
りに法廷傍聴をしたメンバーもいて、弁護士として法律的なことを教えてもらっ
たり、個人的な感想などを話したりしました。

 実際の裁判の傍聴をして、市民の目で見てみると、あらためて色々と気づくこ
ともあります。たとえば最近は、プライバシー保護だとして、大型のモニターに
ほとんど何も表示されない法廷もある一方で、最低限の配慮をした上で、できる
限り公開をされている法廷もあります。傍聴をする立場からすれば、裁判長によ
る裁量の幅が激しく、どういう基準で公開制限をされているのかわかりにくく
なっています。傍聴カフェでは、今後、このような点にも、気をつけて見ていき
たいと考えています。

次回の傍聴カフェは、11月14日(月)の予定です。

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裁判員ACT通信39号 ~第一回森岡cafe(2016年6月17日)の報告~

2016-08-25 17:03:43 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
///////////////■□ 裁判員ACT通信39号 □■///////////////////

 リオオリンピックにパラリンピック、高校野球とスポーツの夏ですね。
それにしても、毎日、非常に暑いです。皆様お元気でいらっしゃいますか。
 今回は第一回森岡cafe(2016年6月17日)の報告です。今回は裁判員経
験者の松尾悦子さん(裁判員経験時 30歳代、会社員)のお話を聞くことが
できました。裁判の感想やご意見など、松尾さんのお話を紹介します。
(なお、森岡cafeとは、裁判員ACTメンバーの森岡が司会進行を務める「裁
判員経験者交流会」および「裁判員制度について語り合う会」です。)



―担当した裁判はどのような内容ですか。
 2010年10月に仙台地裁で行われた7日間の裁判。30代の被告人が共犯者
と2人で被害者から金を奪った上で殺害したという強盗殺人事件だった。ただ
し、被害者の遺体は見つかっておらず、裁判で見た証拠は遺体を埋めたとさ
れる穴の写真だけというミステリー小説のような遺体なき殺人事件だった。被
告人は、「殺害する計画は知らなかった」と否認していた。被告人が共犯者と
殺害する話し合いをしたのか、殺害行為をしたのかなどが争点だった。
 検察官は強盗殺人罪で無期懲役を求刑、弁護人は「有期刑を」と主張。松
尾さんたちは、殺人の共謀は否定し強盗致死にとどまると判断して懲役15年
の判決を出した。

―裁判で印象に残ったことや、感想を教えて下さい。
 当時の職場には裁判員の特別休暇があり参加しやすい環境だったが、他の
裁判員には有給休暇をとって参加している人もおり、裁判中も仕事の連絡をし
ているような様子もあった。
 ギャングだというので、こわもての人を想像していたけれど、被告人はジャケ
ット羽織ってきちんとした服装の人だった。
 私は、疑わしきは罰せずなどのルールの説明を事前に裁判所から聞いたが、
裁判が終わって他の事件の裁判員経験者から、ルールの説明を十分に受け
なかったという話を聞いて驚いた。裁判のルールを知らない人もいると思うの
で最初に説明をしてもらう必要があると思う。
 裁判官は、意見の誘導はなかったが、タイムキーパーにはなっていたと思う。

―事件は、裁判員裁判初の「やり直し」になりましたね。
 (検察が控訴して翌年,裁判員裁判の一審判決が破棄され、量刑の見直しで
はなく裁判そのもののやり直しとなった。新たに裁判員が選任され、証人尋問
や被告人質問など一審DVD映像を見ての審理が行われた結果、検察の求刑
通り無期懲役の判決が出た。被告人がこれに対して控訴し、高裁はやり直しの
裁判員裁判判決を破棄、懲役15年の判決。最終的に初めの判決通りで確定し
た。)
 判決については、私達の判断に自信を持っていた。あれだけ評議をつくして
考えて、自信がありません、違いますとはいえない。
 裁判の差し戻しを聞き、やりきった感を持っていたのに、一気にテンション下
がった。やり直しの裁判の裁判員は、生の証言を聞かずにDVD映像を見るだ
けの裁判。しかも、やり直しということで前と違う結論を出さないといけないプ
レッシャーがあったかもしれない。彼らは自分たちの出した判決を破棄された
ことに対しても、徒労感があったのではないかと思う。
 判決が確定した時、被告人が、「最初の裁判員裁判と同じ主張が通ったから、
もういい」と上告を取り下げたと記事で知り、嬉しかった。

―メディアの取材を受けたり、シンポジウムなどに登壇したり、裁判員の経験を
積極的に話しておられるのは、どのような気持ちからですか?
 裁判員を務めたと話した時の周囲の反応が、怖いといった否定的なものが多
かったので、それを払拭したかった。とりあえず行ってみようというふうになって
ほしい。
 裁判員の経験は楽しかった。「せっかく当たったのだから、この経験を発信し
ない手はない」と思って話し始めた。ありのままに思うところを話している。家
族や周囲の人とは裁判員というキーワードをきっかけにいろんな話ができる
ようになったと思う。

―制度は最初の頃に比べて良くなったと思いますか? 
 そう変わっていないように思う。私は会社員枠として話しているつもりだが、
会社員が日本人の大多数を占めているのに発言する人が少ない。公の場で
話している裁判員の経験は古いことが多い。最近の裁判の様子がわかれば、
制度が良くなってきているのかどうかわかると思うので、新しい人にどんどん
話してほしい。
 私は、虐待や性暴力の事件、死刑事件なら仮病を使ってでも辞退したと思
う。子どもがいるので、許せないという感情が抑えられなければきちんと判断
ができないし、それは裁判員としてふさわしくないと思った。死刑は元々制度
に反対なのでかかわりたくなかった。
 担当する事件がわかってから、裁判員がこの事件は精神的に無理という気
持ちがあれば辞退できるようになってもいいと思う。「できない」と思いながら
やるのは被告人に対しても失礼で、裁判自体が不幸になる。できると思う人
がやるのがいい。

 松尾さんは、6年前の裁判のことを鮮明に記憶しておられた。それは、前向き
かつ冷静な態度で裁判に向き合っていたことや、その後も取材に応じるなど
繰り返し発言する機会があったことも手伝っているだろう。また、松尾さんが判
決要旨を持っていたことで、裁判の記憶を確認できたことも確かな記憶を保持
するのに役立っているように思われる。
 松尾さんは、評議の終盤で読み合わせに使った10ページにわたる判決文の
下書きを「記念にどうぞ」と持ち帰りを許されたそうだ。
 裁判所が「裁判員が家族や職場に話しやすいように判決要旨を渡すこともあ
る」と聞くが、判決要旨を持っている経験者に出会うことは少ない。メモの持ち
帰りが禁止されていることや、守秘義務を気にせず語り合う環境がないことか
ら、裁判員ACTでこれまで聞き取りをした経験者も、「裁判の記憶ははっきりし
ない」という人が多い。
 松尾さんも言うように、新しい人がどんどん裁判員裁判を語るためにも、裁判
員に選ばれたら「判決文がほしい」と声に出してほしい
(裁判員ノートhttp://www.youtube.com/watch?v=JFUgKlTPP60参照)。裁判
所はぜひ、判決要旨を裁判員に提供してほしい。

2016年10月23日(日)には連続セミナー第3回があります。
 「彼はどう裁かれたのか~裁判員裁判見えてくる社会的孤立~」
講師:池田直樹氏(大阪弁護士会)です。
 セミナー開催場所は、市民活動スクエア「CANVAS谷町」(大阪市中央区谷町
2丁目2-20 2F)です。参加費は、1000円(当日払)です。
 セミナーへの参加申し込みは①ホームページから、または、②本メールに添付
しておりますチラシのフォームに記入の上、FAXにてお願いいたします。皆様とご
一緒できることを楽しみにしております。




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★“裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会
事務局:〒540-0012
大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F 市民活動スクエア「CANVAS谷町」
(福)大阪ボランティア協会 “裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会(担当:永井)
Email: office@osakavol.org
URL: http://www.osakavol.org/08/saibanin/index.html

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http://www.youtube.com/watch?v=Pwk2ee2Dqe0
★裁判員ノート~裁判員になったあなたへ(you tube版)
http://www.youtube.com/watch?v=JFUgKlTPP60&feature=youtu.

メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
月1回、CANVAS谷町に集まっての例会を中心に活動しています。
裁判員ACT通信へのご意見・ご感想もお待ちしております。
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