大阪ボランティア協会・事業レポート

大阪ボランティア協会で実施した事業・イベントの報告を掲載しています。

裁判員ACT通信38号 ~彼はどうして罪を犯してしまったのか~

2016-07-22 20:45:09 | 裁判への市民参加を進める会(裁判員ACT)
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 18歳から選挙権が認められて初めての選挙となりました第24回参議院議員選挙も終了し、蒸し暑い毎日です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 裁判員ACTでは、今年度、全3回の連続セミナー「裁判員裁判から見えてくる社会的孤立とその課題」を6月、8月、10月に開催いたします。6月のセミナーでは40人程度の方にセミナーおよびグループトークにご参加いただき誠にありがとうございました。また、12月には、裁判員経験者と一緒に裁判員制度について考える恒例の学習会も開催いたします。本メール最後に申込方法を掲載いたしますので、是非ご参加ください。

 さて、6月のセミナーでは「彼はどうして罪を犯してしまったのか~社会的孤立と刑事司法~」と題しまして、大阪弁護士会の辻川圭乃氏を講師に、知的障害などのある人がなぜ犯罪行為を行ってしまうのか、罪に問われるとき、刑事司法でどのような立場に置かれているのか、いかなる支援が必要かという問題について、3つの事例を紹介してもらい、犯罪行為に至った経過や事件の詳しい内容をお話いただきました。それに加えて、辻川弁護士が携わっている「大阪モデル」についての説明もしていただきました。

 事例①は現住建造物放火未遂事件。この事件を起こした男性はてんかんであることはわかっていましたが、知的障害があることがわかっておらず適切な支援が受けられなかったことが事件の背景にありました。
 事例②は殺人未遂。この事件を起こした女性は、父親が認知症を患い成年後見人がついたときに、父親からの経済的援助がなくなると絶望し、特に疾患を抱えていない成人したわが子を殺し自分自身も自殺しようと考え、わが子の頭を金づちで殴り怪我をさせました。精神疾患がありながら通院しておらず、事件を起こす前に適切な支援があれば、生活保護を受給したり、病院で投薬を受けるなどすることで事件を未然に防げたのではないかと考えられました。
 事例③は殺人事件。この事件を起こした男性は小学生のときのいじめが原因で引きこもりになり、30年間引きこもり続けていました。援助してくれていた姉に自立(生活保護受給)を求められ、姉を殺害しました。精神鑑定の結果、アスペルガー症候群と診断され、二次障害として強迫性障害及び恐怖症性不安障害を有していました。福祉とつながるきっかけが全くなかったわけではないのですが、結局福祉とつながることができなかったことが事件に繋がりました。

 今回の3つの事例では、事件に至るまでに適切な支援が得られなかったことが犯罪に繋がりました。辻川弁護士によると、障害者が加害者となる事件では、その前にいじめや虐待、消費者被害などの被害に必ずあっているとのこと。精神疾患や知的障害を抱えていない人ならば早い段階でSOSを出すところ、障害のせいで助けを求められず悪循環に陥ってしまうことが多く、結果として、重大な事件に発展してしまったそうです。
 辻川弁護士は、障害がなければ事件はなかったと考えるが、単に障害があるから刑を軽くしてくれとは言わない、けれども障害があることで刑を重くすることは絶対にしないで欲しいと裁判員に訴えたいとのこと。

 また、大阪弁護士会では、障害者は自己防衛力が低いことに鑑み、2011年11月から被疑者・被告人に障害があると分かった場合に研修を受けた弁護士を派遣する制度を開始しました。さらに2014年6月からは、大阪弁護士会と大阪社会福祉士会または大阪府地域生活定着支援センターが連携して、いわゆる入口支援(刑事施設入所前の支援)を「大阪モデル」として弁護士会自体のシステムとして運用しています。辻川弁護士は事件を繰り返し起こしてしまうのはその人が反省していないからではなく、その背景にある、病気や障害、貧困、消費者被害に対応した支援に繋がる環境がないからであって、環境調整を行うことで結果として繰り返さなくなると説明されました。このような取り組みはまだ始まったばかりであり、司法と福祉の連携は今後ますます求められると感じました。

 グループトークでは5つのグループにわかれ、今日のセミナーの感想や講師への質問、日頃の活動や感じていることなどを自由に話してもらいました。最後に各グループからその内容を発表してもらい全員で共有しました。




 次回は2016年8月21日(日)
 「彼は社会に出たあとどうしているのか~出所者雇用の取組み~」
講師:岡本昌宏氏
(セリエ・コーポレーション社長、NPO法人なんとかなる(申請中)代表理事、職親プロジェクト)
 出所者の支援についてお話いただき、刑余者の社会復帰のあり方について考えます。

 セミナー開催場所は、市民活動スクエア「CANVAS谷町」(大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F)です。参加費は、1000円(当日払)です。
 セミナーへの参加申し込みは①ホームページから、または、②本メールに添付しておりますチラシのフォームに記入の上、FAXにてお願いいたします。皆様とご一緒できることを楽しみにしております。
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★“裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会
事務局:〒540-0012
大阪市中央区谷町2丁目2-20 2F 市民活動スクエア「CANVAS谷町」
(福)大阪ボランティア協会 “裁判員ACT”裁判への市民参加を進める会(担当:永井)
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URL: http://www.osakavol.org/08/saibanin/index.html

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★ 裁判員ノート~裁判員になったあなたへ(you tube版)
http://www.youtube.com/watch?v=JFUgKlTPP60&feature=youtu.

メンバーは裁判員経験者を含む市民、弁護士、記者など。
月1回、CANVAS谷町に集まっての例会を中心に活動しています。
裁判員ACT通信へのご意見・ご感想もお待ちしております。
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