ナクちゃん死亡

2008年05月16日 19時57分29秒 | キジトラ兄弟保護中
個体差が目立ってきた。

【1】

ナアちゃんは元気すぎる。
声も大きい。寝るときは爆睡、起きれば活発。
積極的にミルク吸いまくり。
猛スピードでちゅばちゅばちゅばちゅば。
乳首を咥えたら放さない。

お腹が空いていないのに鳴くときは、
「うんちしちゃった」か「おしっこしたい」かどちらかだ。
指に濡れティッシュを添えてお腹をマッサージしてやると、
音もなくじゅわーっと、とても温かい液体があふれだす。
それがおしっこだ。やや黄色く、嫌な臭いはほとんどない。

今日はついに自力で箱から這い出してくれた。
また、今日はじめて、ナアちゃんが自分の手(前脚)を自分で舐めているのを見た。
自分で自分を舐められるようになれば一人前(?)だ。

ナアちゃんだけは、「ノドを鳴らす」こともできる。
最初は何の音かと思った。
「お腹がゴロゴロ」かと気を揉んだ。
しかし、違うのだ。満足するとノドを鳴らすのだ。
成猫のそれと同じなのだ。

元気に鳴き、飲み、暴れまわるナアちゃんは、
放っておいても逞しく育つと思われるほどだ。
今のところ何も心配はいらないのだ。

【2】

ナクちゃんは二番目に元気だ。

発見時は片目がふさがっていた。
目が潰れているのかと心配したが、
目ヤニでガチガチに固まっていたのだった。
よく拭いてやったら目が開いた。

その後も、寝たあとは大抵、どちらかの目のまぶたが
目ヤニでくっついてしまう。
拭いてやればきれいに目が開く。
目ヤニの多い体質なのだろう。
眼病の可能性も考えているが、
今朝はまぶたがくっついていなかった。
自分で洗顔できるようになれば
目がふさがることはないだろう。

ナクちゃんも、乳首をちゅばちゅば吸うことを覚えた。
最初は、ニャーニャー鳴きながらミルクを飲んでいたので
「んみゃー、んまんまー、うみゃーい、うまい、うまーい」と聞こえた。
私は微笑を禁じ得なかった。

【3】

みじか尻尾の二匹は、なが尻尾の二匹とは遺伝的に異なるように思われる。
柄はほぼ同じだが、父親が違うのかもしれない。
ミアちゃんもミクちゃんも、なが尻尾の二匹よりはひとまわり小さい。
鳴き方もおとなしい。動作もゆったりしている。
ミルクの飲み方も実におっとりしている。

ミクちゃんのほうが比較的元気だ。
きょうはじめて、ミクちゃんは、乳首を「ちゅばちゅば吸う」ことができた。
緑便が出たので心配していたが、
このぶんなら生き延びられるかもしれない。

【4】

気にかかるのはミアちゃんだ。
ぐったり弱っているわけではない。
動かないわけではない。
他の皆と離して、暖かくない所へ置くと、
それなりに激しく鳴いて助けを求める。
しかしとにかく、おっとりしている。
物静かで、体も一番小さく、おとなしい。

乳首を「奥歯でにゃぐにゃぐ噛む」段階をまだ卒業できない。
「ちゅばちゅば吸う」ことができないのはミアちゃんだけになってしまった。

今朝は少し血便が出た。
おそらく下痢に起因するものであり、仔猫にはよくあることらしい。
が、内臓疾患や寄生虫の可能性も考えつつ様子を見ることにする。

仔猫たちは全員、下痢もしくは軟便気味だ。
とはいえ、水のようにびちゃびちゃしているわけではないので、
許容範囲だと考えている。
排泄マッサージが効き過ぎるのか、ミルクが薄いか、両方か。
マッサージとミルクを調整して様子を見る。
ぐったりするようなら動物病院に連れて行く。

便秘よりは下痢のほうがましだ。
糞づまりになったらしろうとでは対応できない。
 


 …………と、ここまでだらだら書き、下書きとして保存してから、
私は食事を摂り、所用を片付け、そして、
仔猫たちが満腹してぐっすり暖かく眠っているのを確認して、
病院に赴いた。
獣医ではない、私自身が二週に一回ほど通院しているのである。

主治医に、仔猫についても話を聞いた ――

緑便・血便はあまり心配する必要はない。
目が開くまで母猫が育てたのだから、
腸内細菌は大丈夫だろう。
繊維を摂らない以上、仔猫の排泄物は主に腸内上皮なのである。
また血便は、下痢による肛門部の充血によっても起こる。
人工栄養には脂質が多いため、下痢になるのだろう。
(黒色だと問題があるが)茶色の下痢便は当たり前である。

―― そんな話を聞いて、多少安心して帰宅し、箱を覗いたら、
ナクちゃんが死んでいた。

原因は不明。同じ所にいた他の三匹は異状なし。
箱が保温されるようにしてあるので
体は冷たくはなく、硬直してもいなかったが、
息はしておらず、心臓の鼓動も聞こえなかった。
口元や舌はもう紫色だった。

いまにして思えば、当初から異常に目ヤニが多かったナクちゃんは、
やはり先天的になんらかの問題を抱えていたのかもしれない。

箱から出した亡骸はやがて冷たくなり硬くなった。
写真を撮りたいという気にはならなかったが、
撮っておかないと後悔するように思えて、
無理して写真を撮った。

亡骸はボランティアさんがきちんと葬ってくれるそうだ。

悲しんでいる時間などないのだ、と私は自分に言い聞かせ、
残りの三匹の排泄・授乳・清拭を済ませた。

私が夕食を摂っていると、隣室からTVのニュースの音声が聞こえてきた。

中国の大地震の被災者に関する報道。
現地では多くの人がひどく苦しみ、いまも苦しんでいる。これからも苦しむだろう。

そして、生後2日で手術を受けた未熟児が退院したというニュース。
顕微鏡下で、髪の毛の十分の一レベルで、細かい複雑な手術をして、
未熟児を救ったそうだ。

そこまで聞いたら、ぐっとこみあげてきた。
私は口から唾液まじりのご飯をぼろぼろこぼして嗚咽した。






なきがら

2008年05月16日 18時07分00秒 | キジトラ兄弟保護中

 

  ナクちゃんは死んでしまった。
ナクちゃんは何の前触れもなく死んでしまった。
ナクちゃんは私が外出している間に死んでしまった。
ナクちゃんはあっけなく死んでしまった。
  里親探しのために撮影したこの全身像も、
  バストショットも、
  顔のアップも、
すべて sachlich には無駄になってしまった。
  これが生前最後の正面写真である。
  残されたお前達三匹を前に私は思惟する、
ナクちゃんも含めお前達四匹に対し私は語り掛ける、
この三日間、私がお前達を生かしたという考えは浅薄であり、
お前達が私を生かしたという考えも短慮であると。
  生の主体はこの私でもなく、そこのお前達でもなく、私「達」なのだと。
一つ二つとは数えることのできない、或る原初的な、一にして全なる生に於て、
私「達」は生きたのでありかつ生きるのであると。

毎日8枚の組写真を作ることを
趣味とし日課としていたが
今日は8枚をまとめることがどうしてもできなかった。