-畑沢通信-

 尾花沢市「畑沢」地区について、情報の発信と収集を行います。思い出話、現況、自然、歴史、行事、今後の希望等々です。

繋沢観音堂跡は驚きに満ちていました。(その5)

2023-08-08 09:00:00 | 歴史

【搦手門はどこにあったのか】

 用語の説明です。搦手門(からめてもん)とは城の裏門のことです。正門は追手門(おうてもん)又は大手門(おおてもん)です。

 先ずは野邊沢城と梺との間の道です。「野邊沢城沿革略記」から抜粋しました。

梺より本丸ニ登る道筋四ッ、追手・搦手ノ道二ッハ屈曲巧ニなし道巾三間余にして馬上にて上下する様に造り為せり、ニノ丸の道四ッ、是又二筋ハ馬上にて上下自由す、…………搦手ハ繋河を限り、大門有、此内ニモ家中有て平地なり、円照寺ハ即大門ノ内にあり、

  • 漢数字の「二」と、片仮名の「ニ」がほぼ同じ形にみえますので、注意してお読みください。

現代語訳

 梺から城に登る道は四本ある。その内、追手(表門側)と搦手(裏門側)の道は巧みに曲がりくねり三間の巾があって馬に乗ったままで上下することができる。二の丸からの道も四本あって、その内二本は馬に乗ったまま通れる。……搦手の道は繫川(綱木川)までで、大門がある。この内側にも家中(家臣たちの居住地)があって平坦な地形になっている。円照寺はその大門の内側にある

 

 本丸から4本、二の丸から4本の道が梺へ繋がっているとあります。合計すれば8本もあることになりますが、それほどの道は航空レーザー測量による陰陽図でも確認できません。本丸から出ているとしている追手門へ通じる道は、実際は二の丸の桝形門から出ているのが事実です。本丸からとか二の丸からとかの表現は適切ではなさそうです。

 さて、搦手門へ下りる道はどこから出て、どの沢(谷)へ下りるのでしょうか。実は令和元年6月15日に尾花沢市観光ボランティア養成講座の現地研修を受けました。その時に、野邊沢城跡の馬場北端から東へ降りる幅広い道型について、「裏門へ行く道」と説明を受けたような気がします。その場で私は航空レーザー測量による陰陽図と照らし合わせて、繋沢へ通じているつづら折りの道に結び付け、それ以来、裏門(搦手門)は繋沢にあると思い込みました。それが図1のAルートです。延沢軍記で表現している、「曲がりくねった」「巾三間」「馬に乗ったままで上下できる」道に合致していると思ったからです。ただ、このルートを現地確認していませんので、頭の中だけの話です。

 ところが、繋沢に搦手門があるとすれば、上述の「円照寺はその大門の内側にある」という表現はおかしくなります。また、「野辺沢城 國指定史跡30周年記念誌」に掲載されている田村重右衛門氏作成の延沢城見取図には、搦手門が繋沢の東隣の沢(谷)を下った場所(円照寺の近く)に記されています。さらに同書に掲載されている延沢城字名集成図にも、円照寺側の沢が「字大門」となっていて、如何にも搦手門が地名になっているように見えます。そして、同書の資料2ページでは、指定地の現状としての説明で、北東字大門が裏門らしいとの表現があります。円照寺近くの橋辺りには、搦手門跡を示す物が立っているとも聞きました。これらは概略して図1のBルートで示しました。

図1 繋沢観音堂跡の位置図

 どちらが搦手門へ下るルートであるかは、道幅、傾斜度等を現地調査する必要があります。現在、どちらも藪になっています。調査には大変な労力が予想されます。

 どちらのルートであっても繫河(綱木川)までです。どちらの沢に大門があったとしても、内側に家中を設ける平坦な場所があります。もしかしたら両方にあった可能性があります。家中には、搦手門の守備を任されていた一族(近藤一族か)が住んでいたであろうと思われます。

 ここで、二つの搦手門の候補地について時代の経過を踏まえた考察します。二つの沢は、最上家改易後に大きく様変わりをしていることです。このことは、既に観音寺の衰退の一つとして挙げています。最上家改易後、山形藩の鳥居家が現在の六沢トンネル上部の鞍部に切通しを造って新道を開鑿しました。人と物の流れが円照寺側の沢に集中し、繋沢の通行量が極端に減少したと推察されることです。その道を大事な延沢銀山から金や銀が運ばれてきますので、綱木川を渡る橋の辺りに検問所が設けられ、その入口には門もあったでしょう。その後は明治を迎えるまでの約250年間、円照寺側の沢が主流になったままでしたので、人々の頭の中には道と言えば円照寺側だけがイメージに浮かぶようになったとも考えられ、また延沢軍記の執筆時は既にこのような状況になっていました。

 ここまで書くと、無理やり「搦手門は繋沢」説を強要しそうなので、この辺で留めておきます。このような事を考えるのも歴史の面白い面だと思います。



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