田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

うなされる玲加/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-11-09 08:10:32 | Weblog
奥様はバンパイァ 68

○「たいへんだ。玲加がふるえている」

ベットの横になって寝ていた玲加がなにかうなされている。

顔のまえになにかいるのか。

夢中で手をふっておいはらっている。

「猛夫、冷蔵庫から氷取ってきてくれ」

「いいすよ。武さん。これって知恵熱じゃないすか。あんなすごい能力に目覚めた

んだから」

猛夫のいうことはあたらずとも遠からず。

玲加は戦慄していた。心がふるえていた。

おののいていた。

はじめての能力――遺伝子のなかに刷り込まれていたパワーを全開してしまった。

サイキックパワーを具象化する。

イメージしていたものに形をあたえた。

コウモリ、きらわれものの吸血コウモリはわたしたちには守護霊だ。

たのもしい味方なのだ。

あんな形で表れてくれるとは、ありがとう。アリガトウ。

からだが燃えるように熱い。

ふるえがとまらない。

音がする。

ブーンと羽音がする。

耳の奥からわいてでるようなぶきみな振動が体にひろがっていく。

わたしふるえている。

そうだ。これは蝿の羽音だ。

醜悪で不潔なヤツ。

それが無数の群れとなっておそってきたのだ。

わかってきた。

わかってきた。

わたしたちを長いこといがみ合わせてきたのは。

人狼と争わせてきたのは。

コイツだ。

わたしたちはまたバラ園の庭師として仲良く働きたい。

天国のバラ園の園丁にはもどれなくても、この化沼でバラ園をつくりたい。

ここの庭をもっともっと広くしたい。

おおぜいのひとが訪れてバラを愛でるとのできるような世界をつくりたい。

美しいバラの芳香、花弁。

美しいバラと生きれば、わたしのパワーはもっと強くなる。

悪魔と戦っても、負けない力がつく。

ああ、mimaバラと生きるってこんなにすばらしいことなのね。

Mあなたはもう化沼にはもどってこないのですか。

ああ、あの狂ったように空でうずまき。

黒雲のようになっておそってきた蝿の群れ。

わたしは逃げなかった。

必死になって助けをよんだ。

そしてコウモリが、batが具象化した。

泣くほどうれしかった。

これで武たちを守れる。

人狼を守る能力があるなんておもってもみなかった。

愛する武を守れる。

わたしたちは命がけで互いを守りあってこれからこの化沼で生きていくのだ。

それにしても……このふるえ、熱なんとかならないの……



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