田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

クッキー/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-02-23 08:08:35 | Weblog
6                                         

女子学生のあるきかたがあきらかにオカシイ。

ゾンビーのようだ。顔をふせている。

なにかさまよっているようだ。

アクセサリーの専門店。

市内の学生だけで経営している店だ。

じぶんたちが趣味で作ったものを。

売るというより交換するといった感覚でやっている店だ。

店の名は「ピンキー」。

ぞろぞろと入っていく。

さすがに、翔太は理沙子のあとにつづくわけにはいかなかった。

手にとってながめたり身につけたりしている。

なにもおかしな行動はしていない。

あまり外からのぞいていて、警戒されるとまずい。

翔太はあるきだした。

自転車通学の私立高校の男子生徒がみちいっぱいにやってくる。

衝突を避ける。

歩行者が道端によらないと衝突する。

理沙子が来た。

手にみんな菓子のはいった紙の袋をもっている。

クッキーをたべなから、はしゃぎながらとおりすぎた。

きゅうに元気がでた。

アクセサリーを買ったので元気がでたのだろうか。

そんなわけはあるまい。

大麻の酸っぱいようなとけとげしい匂いがする。

理沙子とすれちがった。

翔太のコートのポッケになにか落としていった。

クッキーだった。

ポケットの中がガサガサ音がする。

枯れ草のような臭いがする。

いやな臭いだ。

翔太にとつてはきらいな臭いだ。

いい匂いとはいえない。

分析してもらうまでもない。

大麻クッキーだ。ナッツ風味でこうばしくておいしいはずだ。

粉末にして煙を吸ってもいい。

オイルもある。

タバコだけではない。

大麻製品が多様化している。

翔太の脳裏に警鐘がなった。

(アイツラか?

玲菜をおそったヤクザの顔がフラッシュバックしているじゃないか。

ヤクザが学生にまで……)

純情な受験生にまて販路をひろげているのか。

大麻クッキーは吸血鬼のにおいがしていた。





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受験生!!命をかけろ!!!/ 麻屋与志夫

2009-02-22 20:28:58 | Weblog
2月22日 日曜日

●1℃しか室温がなかった。

寒さで目がさめた。

毎度書いている。

頭髪がさびしい。

それはいいのだが。

頭に寒さがしみる。

●ニット帽がずれていた。

受験シーズンなので毎夜の授業に熱が入る。

疲れる。

熟睡できない。

帽子はかぶっていなかったり、枕ははねとばすこともしばしばである。

寝相が悪い。

●塾なので中学三年生は今週でおわりだ。

おもえばよくもいままでこの小さな町で学習塾をやってこられたものだ。

初めに教えた生徒はもう定年をむかえている。

東京オリンピックの年にはもう教えていたのだから。

45年になる。

●合格発表の日には1日だけ塾が劇場となる。

いままで受験にまつわるかずかずのドラマを演じてきた。

塾長が主役となれるのはこの日だけである。

喜びとともにことしもその日をむかえたいものだ。

●橋下知事のように学力の低下にたいして、怒号して嘆く首長がこの栃木県、いや

鹿沼でもいつの日かうまれないのだろうか。

さいきんそんなことばかり考えている。

●こうなったらもうそろそろ引退したほうがいいのかもしれない。

じぶんの無力さをおもいしらされている。

●死ぬまでの20年くらいは、じぶんの小説のことで悩みぬきたい。

毎日、小説を書いてすごせたら楽しいだろうな。

こんなことを思うのも老いたからなのだろう。

●受験生はストレスに負けずがんばってください。

勉強するならいまのうち。

命をかけてください。

いずれ老いぼれれば、気が弱くなってしまうのですから。

じぶんの人生はじぶんできりひらいてください。

●8人いるわが塾の卒業生。

全員合格してくれるといいな。

祈る気持ちだ。





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受験ストレス/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-02-22 09:20:51 | Weblog
5

「きょうも載ってるな」

塾長の織部が職員室にもどってきた。

職員室としいっても、翔太と織部の机があるきりだ。

生徒が多いときには、バイトの大学生をいれて6人も講師がいたのに。

翔太も放浪の講師をつづけられなくなった。

塾生は激減していた。

織部の窮状をみかねて故郷にもどってきたのだ。

「中学生のイジメがおおすぎやしないか」

「これだって――氷山の一角でしょうからね。

公にしないで、もみ消された事件をいれたらこの三倍にはなるでしょう」

「考え方は二極にわかれるからな。公にするかしないか」

Vがらみの話題なのでどうしても覚醒連の所長と塾長の顔になる。

このところ、野州新聞は学校のイジメ問題の特集を組んでいる。

「高橋クンと野村さんはVの仕打ちだと知っていて記事を担当しているのだからや

りぬくいだろうな」

「それはもう、書きたいのに自己規制で書けない。

こんなつらいことはないだろうな。

周りの人に気兼ねしなから筆をすすめるのはつらいし、難しいからな」

翔太の携帯がなっている。

「わたし理沙子。

ともだちがおかしいの。すぐきて。

このままみんなが下校したらオリオン通りがまた大変よ」

操女子高はオリオン通りからユニオン通りをぬければすぐだ。

下校時にはおおくの学生がオリオン通りを通過する。

「どうおかしいのだ」

クリッパーに乗るほどのことはない。

走れば10分とかかるまい。


操橋をわたって校庭に走りこむわけにもいかない。

「着いたよ。どうすればいい」

走りながら携帯からながれてきた理沙子の要請はきいた。

たしかになにか異様な雰囲気が学校全体をおおっている。

妖雲がたちこめている。

まちがいなくVの存在がもれでている。

だがどこから……。

大麻のイガラッポイ匂いが校舎のほうがから、漂ってくる。

それもすごく濃密だ。

Vの体臭なのか大麻そのものの匂いなのか。

判定できない。

大麻の匂いのなかから……。

受験勉強に疲れた三年生らしい学生があらわれた。

理佐子がすまして翔太の前をとおりぬける。

「ついてきて」と目で訴えている。





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クリマ/スミレ/桜はまだかいな 麻屋与志夫

2009-02-21 21:54:19 | Weblog
2月21日 土曜日

             

●ハルちゃんにお茶をかけてしまった。

●疲れてホリゴタツによこになっていた。それで「おーいお茶」と声をかけたわた

しが悪い。カミサンが湯呑をコタツの天板の上に置こうとしたとき、ふいに起きあ

がった。それでザンブリ。

●パソコン教室の先生にみていただいた。一日あずけてなんとかなった。いつも先

生には助けていただく。ありがたいことだ。

●このところ身体が不調。歯が痛む。お腹はこわす。風はひく。はやくこの暗雲が

消えるといいな。

●いつも吸血鬼の小説を書きつづけている。これからさらに……と意気込むとこう

しいうことになる。簡単に考えれば、ストレスがたまるのだろう。なにせ相手は吸

血鬼だ。強敵である。心して書きつづけなければならないのだ。

●カミサンはこのところクリスマスローズに夢中だ。花はいいな。美しいものに感

動して毎日がいきられるなんてうらやましい。カンセキやVIVAなどの園芸品売り場

をカミサンとめぐるのはすごくたのしい。

●神代植物公園のクリスマスローズ展で係の人に教えていただいた言葉がある。

●「この花は氷河期を耐えてきた花です。だから強いですよ。あまり細かいことは

気にしないで大丈夫です」

●今日は、カミサンはスミレの小さな鉢をかった。小さな花がさいている。とくに

紫色の花がきれいだ。

       

       

●恋空の観覧車のある千手山公園の桜の木がなんとなく色めき立っている。ことし

は桜の花の咲くのがはやいかもしれない。

●バラの季節もくる。5月には深大寺にまたいきたい。

●そんなわけで、ごめんなさい。小説はお休みさせていただきます。



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説得/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-02-20 10:13:57 | Weblog
「わたしいく。翔太さんはらっといて」

「おくってやるよ」

「エンリョスルヨ。バイクで来てるから」

「照子さんも、どうぞ」

翔太が照子に目でサインをおくる。

「ヤダァ。どうしてわかったのよ」

翔太は二人をのせたクリッパーを警察の前でとめた。

社旗を立てた報道陣の車がひしめいてた。

「記者さん」

「翔太さん。お久しぶり」

「わかれたばかりでしょうが」

「あつそうか。動転しているのよ。それにわたしは野村。彼は高橋」

「野村さん。おねがいがある」
 
4

警察の中でそんなみっともないことできるか。

渋っている署長をまず説得。

彼の彼女がネゴシェイトに協力しようと駆けつけたのだから。

と高橋の口添えもあった。

窓際にクリスマスローズの鉢がポッンと置いてある署長室をでた。

宝木は取り調べ室をのっとり立てこもってしまった。

「バカか。なにやってるんだよ」

キヨミがわめいた。

「それでは説得になりませんよ」

付き添っていた刑事があわてた。

「キョミか」

ドアがほそ目にあいた。

赤く目を光らせた宝木が顔をのぞかせた。

「宝木! おまえきゅうにやせたな」

「そうか。うれしいこといってくれる……」

「あきらめてでてきなよ。

いまだら大麻所持、吸引くらいですむよ」

大麻所持、吸引では罪にはならないはずだ。

と、翔太はおもった。

なかなかうまい説得だ。

宝木はドアをさらに広く開けた。

キヨミをかかえこんだ。

人質にとる気だ。

「バカ」

裂帛の気合い。

キヨミが宝木の腕を逆にねじった。

投げ飛ばした。

「わたしが合気道をやってるのわすれたの」

やさしいことばで宝木をみおろしていた。





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キヨミの恋/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-02-19 17:20:51 | Weblog
2

なにかますますファンタジーの世界の話になる。

翔太はミヤとの対話をすすめていくうちにあることに気づいた。

Vたちにもテリトリーがある。

政治家や社会の上層部に生息してかれらを支配しようといている部族。

「学生たちのイジメをくいものにしているものがいるんですね」

「オリオン通りだけで、そこを通行するもの捕食するもの。

芸能関係のものにくらいつくもの。

いろいろいるからな」

「おもしろいですね」

「生活の苦しみ。

恋の悩み。

権力意識。

金への飽くなき欲望。

つけいるすきはいくらでもあるからな」


3

「翔太さん。

たいへんだよ。

サターンの宝木が警察でおおあばれしている」

あのあと器物破損か暴行罪ででも逮捕されたのだろう。

大麻なども所持していたはずだ。

「トチギちゃんねる11を見て」

なるほど。

あの野州新聞の記者がマイクをつきつけられている。

「バンドのメンバーは一人も逮捕されなかったのですか。

おかしいな。

吸血鬼の仮面をかぶったバンドで。

すごくノリがよかった。

あんなバンドが宇都宮にあるなんてきいていないな」

「あまりしゃべりれすぎると。

ヤバいですよね」

「そうだな」

ミヤの姿がすけてく。

「また、会おう。

お酒うまかった。

ごちそうさま」

しごくあたりまえの挨拶をのこしてミヤは消えた。


「ああおどろいた。こんなに、はやく現れるとはね」

キヨミたちはパルコの裏の屋台村でギョウザをぱくついていた。

翔太もカウンターの後ろのテレビをのぞきこむ。

宝木たちRFは部屋の隅においつめられていた。

警察の取り調べ室はめちゃくちゃにはかいされていた。

「あんなにあばれたらヤバイよ」

「RFになりたてだから、こわいものしらずなのだ」

「ねえ、もとにもどせないの。

たすけてほしいよ、アイツのこと」

「キヨミさん。それって、loveですか」

仲間の照子にからかわれている。

「ばぁか。だれがあんなデブ」

キヨミが真っ赤になった。





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宇都宮/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-02-18 20:13:51 | Weblog
第八章 恐怖指数の拡大

1

ワークシェアで家計が苦しくなった。

「退塾します」

といったときの母親の目に光った涙を忘れない。

国民総中流意識の崩壊を目の前で見た。

家を建てローンで返済している。

車を買ってローンで返済している。

子どもたちは塾に通わせて。

大学進学を望んでいる。

そうした中流家庭をおそっている恐怖。

その夢から覚めた。 

真面目に働けばバラ色の夢が実現できる。

その夢が消えた。 

人間の苦しみを常食としているVがいる。

「そういうみかたもできるだろう」

肯定するようにミヤが翔太の顔をながめながらいう。

「翔太は覚醒者というだけではない。

サイキックでもあるんだ」

「わかりますか? だったら教えてください。

宇都宮の未来を透視してもなにもみえないのです」

翔太の部屋でふたりはなかよく酒をのみだしていた。

銘柄は「霧降り」と栃木県の地酒だ。

「酒での失敗には日本人はもっと寛容だった。

でもこの男は吸われている。

われわれ吸血鬼は同時活性化したのだ。

あるいは日本にいたときに吸われていたのかもしれない」

ミヤは興味深そうにまだテレビをみながら飲んでいる。

「人の苦しみはVには甘露。

その精気の味はこたえられないのでしょうね」

「血をすって殺すより、21世紀的だとかんがえている。

若者はそれを生ぬるいと批判するがね。

わたしたち古い世代のものは。

やっと陰陽師や勝道上人の。

封印が風化して。

陰府(地中あるいは夜の世界)から解き放たれた。

自由にうごきまわれるようになったのだ。

こんどこそ、人間と共存できることをのぞんでいる」

「若者は、こんどこそ人間を征服すると……」

「そう意気込んでいるのだ」

「だから宇都宮の未来がまだはっきりしないのかもしれませんね」

吸血鬼とのインタビューはまだはじまったばかりだ。

翔太はミヤをすごく身近にかんじる。

でもミヤは何歳くらいなのだろうか。

それをきくのは失礼だろうなと……。

「奈良、平安どころではない」

翔太にはそんな昔のことは想像できなかった。

「ここは、宇宙の都。

それで宇都宮。

天国の薔薇園を追われたおれたちが初めて踏んだ地球の大地だった。

そのときからの記憶がわたしにはある」




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恋空の観覧車。回転して/クリマ展

2009-02-17 18:23:43 | Weblog
2月17日 火曜日

●だいぶ陽射しがあたたかになった。

●バラがあまり咲かないのでこのところカミサンはクリスマスローズに夢中だ。先

週も神代植物公園にクリスマスローズ展をみにいってきた。その時のようすはカミ

サンのブログ「猫と亭主とわたし」でご覧ください。mima_002です。

●いまクリマがすごい人気でブームだということがよくわかった。

●きょうは、このまちの日曜大工の店「カンセキ」にいってみた。ここも所狭しと

クリマの鉢が並んでいた。東京のようにはやくどんどん売れるといいな。

●というのは、わたしの感じた所ではこの町も、他の地方都市と同じように凄い不

況だ。

●東京にいると不況ということはあまり感じない。あまり可愛くない値段だとおも

うクリマが展示即売会でバンバン売れていた。

●ともかくわが町は、不況である。わたしが主宰する「アサヤ塾」の駐車場から

は、あの「恋空」の観覧車がみえる。ところがこのところまったく動いているよう

すがない。寒風の吹きッサラシ、日光颪の厳しさにわかものが倦厭しているのかと

おもってきた。

●ところが、このところのうららかな春の日でも、日曜日でも動いていない。

●さびしい。娘や息子たちといくたびあの観覧車にのったことだろう。その子ども

たちは、親となっている。孫がきたので千手山公園につれていった。

●「あれが、恋空の観覧車だよ」と教えてやった。すごく感激してくれた。わがま

ちの観光スポットとなっている。

●その観覧車が動いていない。あまりの不況に子どもたちのお小遣いがへってしま

ったのだろうか。バイトさきもなかなか見つからないそうだ。

●恋せ、わかもの。恋人たちの笑い声をのせて観覧車がゆっくりとまわりだすのは

いつなのだろうか。

●ともかく前日光高原のこの町の北の展望はすばらしい。男体山。赤薙と日光連山

の雪景色がみられる。もうすぐ公園も桜の季節をむかえる。はやく動きだしてよ

「恋空」の観覧車。

       




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呂律がまわらない/夕日に中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-02-17 08:47:08 | Weblog
7

「おれをこのへんに捨ててくれ。

なんとか生き延びることはできる。

なにせ、おれは吸血鬼だからな」

「ヒロシ。いうな。

ぼくは友情を、もうあんたとは友だちだと信じている。

この夜のなかに捨てていけるかよ」

まだ夜ははじまったばかりだ。

酔客が街をぶらついている。

地下室であれだけの騒動があったのに。

街にはなんのかわったところはない。

ヒロシは傷口から緑の血をながしている。

数箇所ある傷はたいしたことはない。

それよりも精気を吸われている。

数人のVの若者に吸いつかれてた。

「長老の精気は濃いな」

などとサブロウがわめいていた。

コウジがおそわれたときの症状に似ている。

体がダランと伸びている。

それこそマジで精気がない。

地下室からばらばらになって逃げだした。

パトカーがきた。ことをあらだてることはできない。

Vと翔太たちのあらそいは表面化したらおかしなことになる。

ヒト以外のものがこの夜の底で棲息している。

とは、ノーマルに人間にはしられたくない。

ヒロシです。なんておどけていたミヤはもう息をしていないようだ。

「ヒロシ。ミヤさん」

どちらの名前でよびかけたらいいのかわからない。

「ミヤにしてくれ」

「なんだはなしできるんだ」

「消耗がはげしいので息をとめていただけだ」

「ついでに、体重をかるくすることもできないのですか」

「重力には逆らえない。でも……」

バッとミヤの背に巨大な天使の羽が生えた。

黒かったらコウモリの羽根とおもえるのだが。

ミヤのそれは夜目にも白かった。

「おれは眠り続けていたから。

地球の空気で汚染されていないからな」

だから白い羽根なのだ。

羽根をバサッとはばたくと翔太の体ごと虚空に浮く。

「すごい力だ」

8

「テレビでもみますか」

ミヤは遠慮するかとおもった。

ケツコウ新しいものがすきらしい。

だがテレビには古びた顔が映っていた。

大蔵大臣が株安の対処について語っていた。

呂律がまわらず、酔眼もうろうとしていた。

「吸われているな」

ぼそっとミヤがつぶやく。

ミヤはだいぶ精気がもどってきた。

司会者がしたり顔で。

「ロリツともいうのですが。

この語源は中国の川が……」

と博学ぶりを披露していた。

もんだいは、そんなことではないのだ。

この大臣はたたかれるだろうな。

もうだめかもしれない。

マスコミの餌食になって辞任に。

追いこまれるだろう。

翔太はそうしたマスコミのおもいあがりには批判的だった。

日本人は武士の情けということばをわすれている。

なにがなんでも正義の味方という。

なにがなんでも国民の味方。

という。庶民を味方にしての。

マスコミの非情。

斬り捨て御免。

という態度も気にいらない。

だいいち、これはあきらかにVに精気を吸われた男の顔だ。

たいへんだ。

Vの手は政界にまでのびている。




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乱闘/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-02-16 16:16:48 | Weblog
翔太も個室をとびだした。

耳をつんざくロックはもうひびいていない。

怒号。悲鳴。罵り声。

翔太はサブロウとむかいあった。

「なんてことする。気でもくるったか」

「狂ったのではない。もとにもどったのさ」

これがVのもともとの業とでもいうのか。

ひとをおそい。

鉤爪でひきさく。

血を吸う。

邪魔者はたとえ、同族でもコロス。

はたして殺すことができるのか。

疑問だ。

黙らせることはできる。

たとえ、長老たちでも口を封じられる。

そのための攻撃だ。

いままでは、おとなしくしていた。

ヒロシたち長老に使えるふりをしていたのだ。

「宝木!!!

いいかげんにしたら。

サターンの名が泣くよ」

キヨミがとびこんできた。

キヨミの長い脚が蹴りをはなった。

重いのでふっとびはしないが、宝木はよろけて。

長いコートの裾をじぶんで踏んで倒れた。

「おまえさ、宝木!! なにやってるかわかるの。

人を無差別におそっているんだよ」

「どうせおれは吸血鬼の従者だ。

なにをやろうとかってだろう」

「バカ」

キヨミは悲しそうな声をだした。

喧嘩仲間だけにわかる友情。

RFに成りさがった宝木を憐れんでいる。






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