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【ゲームクエスト】ティズ トウキョウ・インセクト・ズー

2011-01-31 20:19:08 | ゲームクエスト
ティズ トウキョウ・インセクト・ズー(プレイステーション)

2009年4月23日掲載、これもちょっとどうなんでしょう。

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 夏休みのある日、不思議な少女に出会った主人公のリョウは突然カブトムシになってしまった。リョウは戸惑うが、カブトムシの仲間達とともに「お母さん」を探して森や砂漠など様々な場所を冒険することになった。だが、そこは閉鎖間近の「東京昆虫博物館」の中であり、環境の制御が失われて気温が低下していく。虫たちの運命はどうなるのか、なぜ主人公が虫になったのか・・・。

 これが「ティズ トウキョウ・インセクト・ズー」のあらましである。なかなか興味深い展開であり、クリアしてしみじみとした気分を味わった。素晴らしい作品である。絵本が原作であるらしい。本作のことがとても気に入っているという人もいるだろう。

 だが私は納得していない。なぜなら、本作のオビに「ゲームを、ゼロから変えてみた。Playing Movie Game」と書いてあるからだ。こうきたら、あとは私のいつもの主張である。

 「作品」としては素晴らしくとも、これは断じて「ゲーム」ではない。ゼロ(原点)から変えてしまったものはもはやゲームではない。もしオビに「インタラクティブ・デジタル絵本。お子様の誕生日プレゼントに最適!」と書いてあれば私も納得できるのだが。

 例えば「ラーメンをゼロから変えてみた」としよう。麺の代わりにご飯を、スープの代わりにカレーを入れてみたとしよう。果たしてこれをラーメンと言えるのか? こんなものは「ラーメンどんぶりに入ったカレーライス」であると誰もがわかるのに。

 知恵(と操作技術)を使って勝利を目指し、その過程を楽しむのがゲームだ。かつてゲーマーはゲーム戦士だったものだ。ゲームとは何かを「描く」ためのものではないのだ。描かれたものを「観るだけ・読むだけ・眺めるだけ」のものはゲームではない。ゲームではなくなったものを「革新的なゲーム」みたいに表現してはならない。

 面白ければなんだっていい、と言う人もいるだろう。全くそのとおりだ。面白ければゲームでなくともいいのだ。これはゲームである、とさえ言わなければいいのだ。売れるものを作るのは企業として当然で、消費者がそれを求めているのである。ただし、国内に限り。

 日本のゲームが世界に通用しなくなってきていると言われている。ごく端的に言って、その原因を私は次のように考えている。かつての日本のゲームは緻密な設計のために世界に認められていた。だがゲーム機の性能向上に伴って、「緻密」であることと「繊細」であることが混同され、(ゲーム以外の)何かを繊細に「描く」ことにばかり向かってしまい、緻密さが失われたのである。繊細さとは日本人の特性なのだろうが、海外で必ずしも理解されるとは限らない。今後の日本のゲーム業界に必要なのは、何かを繊細に描くためのクリエータではなく、ゲームを緻密に設計する職人なのである。

 本作はプレステ初期に発売された。やはりそうだ。当時の多くのクリエータは何かを描きたかったのだ。確かにその当時、このようなものを描こうとすれば、プレステなどのゲーム機で開発するのが簡単だし、しかも金になっただろう。だがその時点でラーメン屋がラーメンという名のカレーライスを作ってしまったのだ。変わっていないのはゲーム機という器だけ。そしてこれをなぜか新しいラーメンだと思い込んでしまった消費者も多かった。古くからの客が「最近のゲームはつまらない」というのもよくわかる。ラーメンを待っていたのにカレーライスが出てきては納得がいかないだろう。今となっては、ゲームを3あたりから変えてみたWiiとDSには期待したいところだ。

 業界への文句ばかり書いてしまったが、デジタル絵本としては本作をオススメできる。さすがに今見ると技術的には未熟だし、中盤にはどこにいけばわからない時もあったが、斬新な部分もいくつかある。会話は字幕なしのフルボイスで、ホンジャマカの石塚氏や爆笑問題の太田・田中両氏のほか、前田愛氏(声優ではなく女優さんのほう)も出演しているので、そちらのファンの方もどうぞ。


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6 コメント

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インタラクティブ絵本 (どらお)
2011-02-01 18:34:05
最近になって探していたこのソフトを
ようやく買うことができたのですが、
PS以前にインタラクティブを前面に出したハードこと
3DOで遊んでいたからか
そういった発想は出てきませんでした。
言われてみると成る程、その通りかも知れません(汗)。
自分も
物語に重点が行きだしてから
(RPGを筆頭にゲーム全体で)
ゲームっぽさが薄れていったように思います。
そういえば
(中村家の嫁になった)前田愛さんって
声優の方とつい最近まで同一人物だと思ってました(笑)。
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3DOっぽいですね (おかもろ(再))
2011-02-01 20:37:11
 どらおさま、コメントありがとうございます。この文章もやたらと先鋭化した書き方でお恥ずかしい限りです。

 おっしゃる通りインタラクティブと言えば3DOで、本作はどこか3DOっぽい雰囲気です。今ではインタラクティブなんて言葉は聞かないし、マルチメディアというのもやや古い感じです。現在ではこういうの、なんて言うんでしょうね。

 前田愛さんについては私も何やら区別がつかなくて、本作ではどちらだったっけと調べてから投稿しました。こちらは間違いなく勘太郎さんの嫁の方ですね。
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気になる… (manken99)
2011-02-07 21:11:21
 この感想もよく覚えています。主張に「なるほど」と感心した事もありますが、私も昔探していた事があったものの結局見付からなかった為、少しでも内容を知る事が出来て嬉しかったという理由もあったのだと思います。設定を聞くと、先のストーリーがかなり気になりますね。もう一度探してみようかな…。
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実は… (おかもろ(再))
2011-02-07 22:41:50
 漫研さま、コメントありがとうございます。ちょっと原理主義的な部分を強調してしまった文章で、今になって肝を冷やしております。確か漫研さまのゲームクエスト投稿文の中に「自分にとってゲームとは腕前を競うものであった」という記述がありました(タイトルは失念してしまいましたが)。その反響として「かつてゲーマーはゲーム戦士だったものだ」のように書いていたのでした。

 ティズは余韻の残るお話や不思議な映像表現など見所の多い作品です。キャラのしゃべり方だけは妙に耳についてしまいますけど。今なら300円程度のお買い得価格で売っていると思います。
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よし、絶対見付けて買うぞ! (manken99)
2011-02-08 19:03:39
 私の感想文の事を覚えていて下さって有難うございます。覚えていて下さった事自体も嬉しいですし、私のつたない感想が、他の人に何らかの影響を与えていたと聞き、とても嬉しく思います。あれは「ブレスオブファイア」の感想文の冒頭で、「決まったストーリーを辿るだけの、他者と競う要素が無い1人用のゲーム」に対する偏見が、このゲームに出会ったお陰で無くなったと、そういった主旨の事を書いたのだったと思います。実は自分の中では、綺麗に纏めようとして却って変になってしまったと、少し恥ずかしく思い、余り読み返したくない感想だったりするのですが…。しかしおかもろ(再)さんのこの「ティズ」の感想もそうですが、自分では「ちょっとどうか」と思っている感想が、他の人の印象に強く残っているという事が、よくあるものなんですね。これもまた自分の意見を発表する事の醍醐味の1つだと言えるかも知れません。
 私もいずれ近い内に、ゲームの感想をブログで発表する事を考えてみたいと思います。その時までには、このソフトも手に入れる事が出来れば良いのですが…。それにしても300円とは安い!
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ブレスオブファイア! (おかもろ(再))
2011-02-08 20:02:44
 漫研さま、「ブレスオブファイア」でしたね。「店で何を買うか」「ダンジョンで右に行くか左に行くか」を決定するのだってストーリーの一環だ、という主張もありました。あの感想文はゲームのストーリーというものを様々な階層から俯瞰していた名文であったと思います。文章的には極端だったりいびつだったりしても、遠慮のない誠実なメッセージがあれば読み手に響くのかもしれませんね。それにしても、こんなところでお互いのネタばらしになるとは何とも不思議な感覚です。
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