ウィザードリィ エクス ~前線の学府~(プレイステーション2)
2007年1月9日掲載、不明瞭な部分を修正
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RPGとは何かという考察で引き合いに出されるのが、RPGとは「役割を演じるゲーム」だというものです。直訳としては正しいのですが、この直訳が大いなる誤解の元になっていると私には思われるのです。
「役割を演じる」などと言うと、脚本が別にあるかのような錯覚を与えてしまいます。その結果として「RPGはストーリーを楽しむゲームだ」と考える人が増えたのではないでしょうか。もちろんストーリーを楽しむゲームがあっても良いのですが、それがRPGであると言われたら、私のような古いゲーマーは抵抗を感じるのです。
私が思うに、RPGとは「あなたならどうするかゲーム」であると意訳する方がロール・プレイング・ゲームという英語のニュアンスが伝わるのではないでしょうか。かなり以前にも書いたのですが、プレイヤーは一瞬一瞬を自分の判断で生き抜いて、その結果として自分だけのストーリーが綴られる、というのがRPGなのです。そこではゲームの進行自体がストーリーの進行なのです。決して他人のストーリーを眺めるゲームではありません。先人達がしばしば述べてきたように、RPGは「筋書きの無いドラマ」であったのです。
そんなわけで、今の私が(オンラインゲーム以外で)RPGと認める数少ないシリーズの一つが「ウィザードリィ」なのです。そして本作「ウィザードリィ エクス ~前線の学府~」は、和製ウィザードリィの一つであり、シリーズ中で最も若々しい雰囲気を持った作品です。
基本はウィザードリィなので、キャラクターもストーリーも多くは与えられていません。ゲームの舞台、つまり世界がメインとして与えられています。特徴的なのは、「アカデミー・オブ・フロンティア(前線の学府)」というサブタイトルから分かるように、プレイヤーは学徒(学生)ということです。誰もがかつて学生であったことから馴染み深く感じることと思います。そして敵モンスターや迷宮などに独自の解釈を与えることで、新鮮な感覚でプレイできるようになっています。
キャラクターを作成し、パーティーを組んで、装備を整え、チュートリアルも兼ねたクエストをこなしながら、あとはひたすらロード(迷宮)を探索し、戦い抜きます。人間などの種族からなるクルセイド軍の一員として学徒達は駆り出されます。魔族のディアブロ軍と、古代機械文明のイカロス軍との三つ巴の戦いです。ひたすら戦って己を鍛え、見つけたがらくたを錬金術で装備品へと仕立てながらロードを侵攻し、クルセイド軍の勢力を増やしていきます。各ロードにおけるディアブロ軍との勢力関係がゲージで示されるので、大きな戦いの中での若く名も無き戦士達のエピソードという雰囲気があります。
そのうちに校長から、最近起きている不思議な出来事についてのクエストを依頼されます。これがメインシナリオなのですが、特に期限もないし、多くのイベントを追っていく必要もありません。現場に付いたらテキストによる会話に続いて戦闘が起こるだけです。美麗なムービーイベントは全くありませんが、そういうイベントって想像力による脳内ストーリーの邪魔になりますので、テキストによる表現に過不足は無いと思います。ドラマはイベントやエンディングの中にあるわけではないのです。そしてメインシナリオでさえ世界を語る材料に過ぎないのです。世界を感じ、世界に生きることが究極のRPGだと思います。
現在私はシナリオをクリアして何十人も作成した学徒達のレベルアップをしているところです。本作は明確なレベルアップ場所があるので、転科(いわゆる転職)を繰り返して様々な魔法を習得できます。しばしば嫌がられるレベルアップ作業ですが、私は嫌いではありません。効率的なレベル上げの場所や手法を探るために頭を使うのも面白いですし、そういう修行の期間だっていわばストーリーの一部だと考えています。
本作の楽しさのポイントは3つあります。1つ目はマップの手応えです。序盤は非常に簡単なマップによって、その構造を理解させるようになっています。しかし中盤以降は一枚ごとに異なる難しさを持ったマップの連続になります。マップをじわじわと埋めていくのがゲームを進めているんだという実感になるのです。マップは50種類以上あり、多くのマップは2フロアで使われていますので、全てを埋めるのは結構大変です。しかしシナリオを進めるだけなら、マップの出入り口だけを踏破してマップ構造のランダム配置を利用すれば、マハロール(行ったことがある場所に瞬間移動する魔法)を使ってかなりのショートカットができます。
ポイント2つ目は錬金術師の学科です。錬金術師はアイテム合成・鑑定が出来るほか、「限定解除二刀流」や「全ての装備品を装備可能」などのスキルによって明らかに他の学科より優遇されており、探索には必須の学科と言えます。ただし成長が遅いため前線への投入時期が難しいので悩みどころですが、それもまた楽しいのです。
そしてポイント3つ目は、100人までの学徒が作成できることです。いろんな種族・学科・性格の学徒を大量に作成し、相性やパーティーバランスを考えて侵攻の役割をあたえるのが、私が本作で最も楽しめた要素です。プレイヤーは学徒という立場の他に、全学徒の役割を常に考慮して適宜配置する司令官というか学級担任のような立場も味わえます。シナリオ進行と学徒大量作成は両立しないのですが、もともとシナリオクリアまでは比較的短いですし、長く楽しむには良いということで私の一推しのプレイスタイルです。
このように本作は本家ウィザードリィにも無いような要素が面白さの一部を担っていますが、メインの作りは紛れも無くRPG「ウィザードリィ」です。従来のファンには新たな要素が、新規プレイヤーにはウィザードリィとしての骨幹が十分に楽しめると思います。やり込み要素も十分で、アイテム、敵(属性別)、合成法、マップ、称号など埋め尽くすまでにかなり楽しめます。多くの人に本作を楽しんでもらいたいです。
最後に。本作はエンディングまでなら努力次第で誰でもクリアできます。ですが、真の「ウィザードリィ」はエンディングの後から始まるのです。そこでは実力と同等に運も必要です。そして、たとえ運が悪くても、危機的状況からいかにリカバーしてベストなプレイをするか、というのがRPGの最もエキサイティングでドラマチックな瞬間だと思うのですが・・・。
2007年1月9日掲載、不明瞭な部分を修正
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RPGとは何かという考察で引き合いに出されるのが、RPGとは「役割を演じるゲーム」だというものです。直訳としては正しいのですが、この直訳が大いなる誤解の元になっていると私には思われるのです。
「役割を演じる」などと言うと、脚本が別にあるかのような錯覚を与えてしまいます。その結果として「RPGはストーリーを楽しむゲームだ」と考える人が増えたのではないでしょうか。もちろんストーリーを楽しむゲームがあっても良いのですが、それがRPGであると言われたら、私のような古いゲーマーは抵抗を感じるのです。
私が思うに、RPGとは「あなたならどうするかゲーム」であると意訳する方がロール・プレイング・ゲームという英語のニュアンスが伝わるのではないでしょうか。かなり以前にも書いたのですが、プレイヤーは一瞬一瞬を自分の判断で生き抜いて、その結果として自分だけのストーリーが綴られる、というのがRPGなのです。そこではゲームの進行自体がストーリーの進行なのです。決して他人のストーリーを眺めるゲームではありません。先人達がしばしば述べてきたように、RPGは「筋書きの無いドラマ」であったのです。
そんなわけで、今の私が(オンラインゲーム以外で)RPGと認める数少ないシリーズの一つが「ウィザードリィ」なのです。そして本作「ウィザードリィ エクス ~前線の学府~」は、和製ウィザードリィの一つであり、シリーズ中で最も若々しい雰囲気を持った作品です。
基本はウィザードリィなので、キャラクターもストーリーも多くは与えられていません。ゲームの舞台、つまり世界がメインとして与えられています。特徴的なのは、「アカデミー・オブ・フロンティア(前線の学府)」というサブタイトルから分かるように、プレイヤーは学徒(学生)ということです。誰もがかつて学生であったことから馴染み深く感じることと思います。そして敵モンスターや迷宮などに独自の解釈を与えることで、新鮮な感覚でプレイできるようになっています。
キャラクターを作成し、パーティーを組んで、装備を整え、チュートリアルも兼ねたクエストをこなしながら、あとはひたすらロード(迷宮)を探索し、戦い抜きます。人間などの種族からなるクルセイド軍の一員として学徒達は駆り出されます。魔族のディアブロ軍と、古代機械文明のイカロス軍との三つ巴の戦いです。ひたすら戦って己を鍛え、見つけたがらくたを錬金術で装備品へと仕立てながらロードを侵攻し、クルセイド軍の勢力を増やしていきます。各ロードにおけるディアブロ軍との勢力関係がゲージで示されるので、大きな戦いの中での若く名も無き戦士達のエピソードという雰囲気があります。
そのうちに校長から、最近起きている不思議な出来事についてのクエストを依頼されます。これがメインシナリオなのですが、特に期限もないし、多くのイベントを追っていく必要もありません。現場に付いたらテキストによる会話に続いて戦闘が起こるだけです。美麗なムービーイベントは全くありませんが、そういうイベントって想像力による脳内ストーリーの邪魔になりますので、テキストによる表現に過不足は無いと思います。ドラマはイベントやエンディングの中にあるわけではないのです。そしてメインシナリオでさえ世界を語る材料に過ぎないのです。世界を感じ、世界に生きることが究極のRPGだと思います。
現在私はシナリオをクリアして何十人も作成した学徒達のレベルアップをしているところです。本作は明確なレベルアップ場所があるので、転科(いわゆる転職)を繰り返して様々な魔法を習得できます。しばしば嫌がられるレベルアップ作業ですが、私は嫌いではありません。効率的なレベル上げの場所や手法を探るために頭を使うのも面白いですし、そういう修行の期間だっていわばストーリーの一部だと考えています。
本作の楽しさのポイントは3つあります。1つ目はマップの手応えです。序盤は非常に簡単なマップによって、その構造を理解させるようになっています。しかし中盤以降は一枚ごとに異なる難しさを持ったマップの連続になります。マップをじわじわと埋めていくのがゲームを進めているんだという実感になるのです。マップは50種類以上あり、多くのマップは2フロアで使われていますので、全てを埋めるのは結構大変です。しかしシナリオを進めるだけなら、マップの出入り口だけを踏破してマップ構造のランダム配置を利用すれば、マハロール(行ったことがある場所に瞬間移動する魔法)を使ってかなりのショートカットができます。
ポイント2つ目は錬金術師の学科です。錬金術師はアイテム合成・鑑定が出来るほか、「限定解除二刀流」や「全ての装備品を装備可能」などのスキルによって明らかに他の学科より優遇されており、探索には必須の学科と言えます。ただし成長が遅いため前線への投入時期が難しいので悩みどころですが、それもまた楽しいのです。
そしてポイント3つ目は、100人までの学徒が作成できることです。いろんな種族・学科・性格の学徒を大量に作成し、相性やパーティーバランスを考えて侵攻の役割をあたえるのが、私が本作で最も楽しめた要素です。プレイヤーは学徒という立場の他に、全学徒の役割を常に考慮して適宜配置する司令官というか学級担任のような立場も味わえます。シナリオ進行と学徒大量作成は両立しないのですが、もともとシナリオクリアまでは比較的短いですし、長く楽しむには良いということで私の一推しのプレイスタイルです。
このように本作は本家ウィザードリィにも無いような要素が面白さの一部を担っていますが、メインの作りは紛れも無くRPG「ウィザードリィ」です。従来のファンには新たな要素が、新規プレイヤーにはウィザードリィとしての骨幹が十分に楽しめると思います。やり込み要素も十分で、アイテム、敵(属性別)、合成法、マップ、称号など埋め尽くすまでにかなり楽しめます。多くの人に本作を楽しんでもらいたいです。
最後に。本作はエンディングまでなら努力次第で誰でもクリアできます。ですが、真の「ウィザードリィ」はエンディングの後から始まるのです。そこでは実力と同等に運も必要です。そして、たとえ運が悪くても、危機的状況からいかにリカバーしてベストなプレイをするか、というのがRPGの最もエキサイティングでドラマチックな瞬間だと思うのですが・・・。
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