来月50回目 大御所へ感謝込め
うつみ宮土理(左から4人目)が主催した「シャンソン・ド・メグロ」は、「パリ祭」のプレ企画として開催された
岸洋子
越路吹雪
芦野宏
淡谷のり子
シャンソン歌手が一堂に会する祭典「パリ祭」が、今年50回目の節目を迎える。
近年、シャンソン界を率いてきた大御所が相次いで亡くなり、追悼を込めた催しもある。折しもこの夏は、レコード会社5社が合同でシャンソン黄金時代の名曲を集めたCD11作品を出す。この機に、シャンソンの深い歴史に思いをはせてはいかがだろう。
パリ祭は1963年、石井好子が、フランス革命記念日の7月14日に合わせ、シャンソンの祭典として始めた。当初は、石井の事務所の歌手が中心だったが、次第に拡大して国内最大規模のシャンソンコンサートに。オールスター的な要素もあり、若手が大舞台を踏む貴重な機会にもなった。
第1回の会場は、東京・日比谷野外音楽堂。石井は当時の様子を「五千人もの人が集(あつま)り、地面に座ったり木や塀の上に登ったりして聞いてくれた」とエッセーにつづっている。一時はパリ祭の出場権をかけたコンクールも併催し、加藤登紀子らを輩出した。
石井は91年に日本シャンソン協会も設立。石井の元マネジャーで、パリ祭プロデューサーの窪田豊は「親分肌で何をやっても人が集まる。歌手でありながら、プロデューサーでした」と振り返る。レギュラー出演者には前田美波里、美川憲一など、シャンソンを持ち歌とする歌手も名を連ねる。珍しいところでは、ロック歌手・ROLLYも。「面白いのを引っ張ってきた、と石井さんが語っていた。固定観念にとらわれず、十人十色の個性があっていい」と音楽評論家の安倍寧(やすし)は評価する。
一度も欠けることなく継続し、今年50回の節目を迎えた。だが、窪田は、石井やシャンソン協会会長職を引き継いだ芦野宏の不在を悔やむ。パリ祭を演出する放送作家の高平哲郎は、「石井先生は追悼がお嫌いだが、今度ばかりはそうはいかない。オープニングでは十数人の方々の歌声とともに在りし日のお姿をビデオで見せる」と話す。
第1部は夏の情景にまつわる歌、第2部は宝塚メドレーなどで、50回にちなんで計50曲を披露。出演は戸川昌子、クミコ、佐々木秀実ら。永六輔、秋元順子らゲストも多彩だ。7月14、15日の2日間で、会場は東京・渋谷のNHKホール。問い合わせは、ジェイステージナビ(電=03・5957・5500)へ。
名作復刻の夏
中原美紗緒
高英男
石井好子
メーカー5社が合同で発売するのは、「LA CHANSON AU JAPON~シャンソンの黄金時代~」というシリーズ。昭和20年代後半から30年代に活躍した歌手の作品を中心に、計11作が6月27日に発売される。企画したシャンソン研究家の高橋正人は「本国を超える数の歌手が覇を競った日本の黄金時代を再検証してみたかった」と語る。
キングからは、石井好子(1922~2010)、「雪の降る街を」を歌い、派手な衣装で話題を呼んだ高英男(1918~2009)、「河は呼んでる」をヒットさせ、ドラマ主演もした中原美紗緒(1931~97)、けた外れのスケールを持ち、「希望」など歌謡曲も大ヒットさせた岸洋子(1935~92)の4作が発売される。
EMIは、今も語り継がれる大スター・越路吹雪(1924~80)、ビロードのような歌声で、シャンソン館も建てた芦野宏(1924~2012)、「ブルースの女王」の肩書の一方、シャンソンでも先駆者だった淡谷のり子(1907~99)の3作。越路、淡谷の作品は、コロムビアからも出る。ビクターはオムニバス盤で、大木康子、戸川昌子らの銀巴里ライブ録音が特徴的。テイチクのオムニバスは、石原裕次郎やクミコまで網羅している。
企画の背景には、8年前、フランスの俳優が古いシャンソンをカバーした作品が現地で300万枚の大ヒットになった出来事があった。国内でも“黄金時代”をピークにその人気は長期低落傾向にあるが、高橋は「シャンソンはJポップの中にも生きている。クミコ、佐々木秀実など新しいスターも生まれている」と、日本人の心に根付いたその力に期待を寄せる。
安倍寧も、「妙に気取っている、という印象をもたれて時代に合わなくなった点はあった」という。しかし、「戦前は宝塚と映画『巴里祭』『巴里の屋根の下』を通じて憧れの的となり、戦後は大ブームとなったのがシャンソン。しゃれっ気があり、人生を語る歌詞も日本人好み。若い人もその魅力に気付いてくれれば」と期待を語る。
シャンソン 活性化へ動く
深江(右端)が経営する「La MandA」で開かれている銀巴里形式の「シャンソネットライブ」
パリ祭以外にも、低迷気味のシャンソンを盛り上げようという動きはある。
タレントのうつみ宮土理は、今年5月に「シャンソン・ド・メグロ~パリ祭への道~」を、夫婦で経営するキンケロ・シアター(東京・中目黒)で開いた。うつみは、「シャンソンには芝居があるし人生がある。公演は夢だった」と思いを語る。前田美波里、ROLLYら今年のパリ祭出演者も登場。次回は秋の公演を予定している。
パリ祭出演歌手・深江ゆかと、ピアニスト・藤原和矢は昨年、経営する「スペース&カフェ La MandA」(東京・自由が丘)で「シャンソネットライブ」を始めた。2人は、22年前に閉店した東京・銀座の音楽喫茶「銀巴里(パリ)」の出身。その経験を生かし、ライブは4人の歌手、4人の生バンドという銀巴里と同形式だ。3人は銀巴里の経験者、1人は若手と、質の維持と後進育成も両立させる。地方からも客が訪れる人気で、今春から公演を月2回に増やした。深江は「銀巴里のように、歌い手が純粋な歌い手でいられる場所を作りたかった」と語っている。(文化部 清川仁)
(2012年6月22日
読売新聞)
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