大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

トヨタ、フォルクスワーゲン、そしてフィアット。「2強+1」の勢力図へ

2009年04月28日 | ニュースの視点
17日、独フォルクスワーゲンは、第1四半期の世界の販売台数は前年同期比11%減の約139万台となったと発表した。

独政府の販売奨励策が寄与し、主要市場での需要が堅調となった。第1四半期の自動車販売台数でトヨタ自動車を抜き、首位となる見通しだ。

数ヶ月前、トヨタが販売台数でGMを抜いて世界一になったときに私が説明したことが、まさに現実になってきた。

GMを抜き世界一になったトヨタにとって、今後世界一を競うライバルはフォルクスワーゲンになる可能性が高いということだ。

その根拠は、日米欧の主要自動車メーカーの資本関係を見ると分かる。

フォルクスワーゲンはポルシェを最大の株主にしつつ、チェコのシュコダ、スペインのセアトという低価格車を得意とする会社と、アウディ、ベントレーといったハイエンド車を得意とする会社を持っている。

ポルシェ、ベントレーというハイエンド車から、セアト、シュコダといった低価格車までカバーするラインアップは強力だ。

フォルクスワーゲングループが持つ車種の広さはトヨタにとって大きな脅威であり、今後の課題の1つになると思う。

フォルクスワーゲンに次いでトヨタを追随する可能性が高いのは、フィアットだろう。

フィアットが今後GMやオペルを買収することになれば、かなり大きな規模に成長するからだ。

ただ、例えそうなっても、近い将来で見ればトヨタやフォルクスワーゲンには及ばないと思う。

フィアット傘下にはマセラッティ、フェラーリという超ハイエンド車があるが、これらの市場は極めて小さいものだからだ。

トヨタ並みにミドルエンドの車のラインアップを揃えてくるようになると、世界のトップ争いができるようになるだろう。

やはり本命はトヨタとフォルクスワーゲンの一騎打ちという構図だが、今のままではフォルクスワーゲンの方が有利だと私は思う。

トヨタは平均的に非常に質が高い車を揃えているが、例えるなら「Jazzのような」あるいは「セクシーな」印象を与える車種が欠けているからだ。

以前、トヨタは1600万円ほどの価格でスポーツカーの販売を予定していたが、先駆けて日産にスカイラインGT-Rを800万円で発売されてしまったせいか、未だ開発中とのことで発売されていない。

現時点において販売台数で抜かれてしまったのは、トヨタそのものが原因というよりも、ドイツなどの欧州の国が新車販売に対して強力な補助を実施したためであり、さほど気にする必要はないだろう。

この点について、欧州は見事に「心理経済学」を理解した対策を講じており、それが効果を発揮している。

トヨタをサポートするという意味でも、日本の役人や政治家は、ぜひ今の欧州を見習ってもらいたいところだ。

世界大不況を経て、自動車業界の勢力図は一変した。トヨタ、フォルクスワーゲン、そしてフィアットを中心に今後どのような展開を見せていくのか注目していきたい。

8 コメント

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Unknown (憂国の士)
2009-04-29 12:45:58
この記事だと大前先生は政府の補正予算には賛成だと考えていいのですね?
トヨタにはセクシーさが足りないのですね?
セクシーさとは何でしょうか?
企業が成長しようとする場合、他社の後追いでは勝負出来ないと思いますよ。
私はトヨタにはわけのわからないセクシーさを追うより、日本企業としての独自性の追求が必要だと考えます。
セクシー (morinko)
2009-04-29 16:52:24
私は「セクシー=独自性」だと考えます。
現在の(今までも)トヨタ車はあまりにも一般受けする保守的なデザインや性能の車が多すぎると思います。まあ、それが現在までのトヨタを支えてきた要員の一つとも言えますが、要するにこれからの世界市場ではトヨタの独自性を象徴するような明確なアイデンティティをもったデザイン・性能の車も必要ではないかと思います。
物のセクシーさ (ていおー)
2009-04-30 03:43:49
車に限らず「高級」というカテゴリーが存在する商品には、単にスペックだけではなく、トータルデザインから醸し出される色気が存在します。それを一般的な言い方として「セクシー」と表現されているということです。セクシーな商品には「触ってみたい」、「所有してみたい」という一種の欲望を掻き立てられるからです。トヨタがVWに対抗するためにハイエンド市場で独自の色気を持った商品が必要なのは言うまでもありませんが、このことは多くの日本メーカーが不得意とする部分でもあります。高コスト体質の日本企業にとってハイエンド市場で存在感を示せないことは企業の存続にも影響するわけで、トヨタだけではなく多くの日本企業にとって大きな課題の一つだと私は思います。
Unknown (憂国の士)
2009-04-30 08:50:35
morinko様
ていおー様

詳しい解説ありがとうございます。
ハイエンド市場で独自の色気を持った商品が必要という事は大いに賛同出来ます。
確かに日本の企業はハイエンド市場では弱く、大きな課題だと思います。
なんでトヨタにこだわるの (名無し)
2009-05-05 13:52:18
米国の自動車会社は、やがてフォードだけになってしまうでしょう。そうなったらなんともさびしいい。これだけ多様な自動車会社が存続している日本こそがすばらしいのであって、GTRやZの日産やロードスターやRX8のマツダとかいうような車は、ちゃんと会社の個性が出ているいい車です。トヨタにスポーツカーはつくってもらはなくてもそれはかなわない。なんで大前さんはトヨタばかり持ち上げるのかな。でかけりゃいいというものでもありません。ある程度のサイズがあればいい車はつくれます。GMのようにでか過ぎると放漫になり自滅します。トヨタの放漫さは今は問題になるほどではないでしょうが、どうも、トヨタという会社に僕は放漫さを感じるわけです。
高級車とは・・・ (クルマ好き)
2009-05-17 11:52:11
トヨタのクルマ作りは隙がなく80点主義(特徴はないが大きな欠点がない)を貫き、ハイブリッド車では世界をリードしている。今後は高級車もハイブリッド化されていくことは間違いないだろう。しかし、高級車には効率化だけでは表現できない世界があることも事実。デザインや内装の質感ではまだまだ世界の高級車には追いついていないのが現状だろう。トヨタはたとえば、ジャガーのようなクルマをお手本にするべきだはないだろうか。スペックには表れない何かがあることに気付くべきだと思う。そんなクルマが作れたならば本当の意味での世界一の自動車メーカーだと認められるのではないだろか。
Unknown (Unknown)
2009-05-22 18:31:57
ハイブリッド車。いいですよね。しかしなぜあのデザイン?デザインの仕事をしてる者から見ると、甚だ疑問です。ホンキで売りたいのでしょうか?それとも何か制限されてるものがあるのでしょうか?技術は素晴しいのに外観の魅力不足。欧州車に追いつくのはあと100年かかるのでしょうか・・・
セクシーについて (Chackam)
2009-06-08 11:52:11
 セクシーというのは、イメージですよね。いいものを表現したひとつのフレーズなんだと思います。
 いいものの究極について、稲盛さんが仰ってますが、それは「パーフェクト」であって、相対的な最高位である「ベスト」は、単なる妥協点ではないかと。
 トヨタは、ベストを追求してきたんでしょうが、これからはパーフェクトを追求してないといけない、ということではないんでしょうか。物足りなさが目につく間は、まだまだ追求するべき課題があるということでしょうから。完璧なものは、当然ながら「セクシー」でもあるはずです。
 なんて、受け売りの横流しですいません。

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