大前研一のニュースのポイント

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新興国の債務不履行は避けられない

2008年11月04日 | ニュースの視点
米国発の金融危機の余波を受けた新興国経済の混乱が一段と拡大している。

ハンガリーやウクライナ、アイスランドに加え、新たにベラルーシやパキスタンも国際通貨基金(IMF)などの国際機関や友好国に支援を要請し始めた。

一部の新興国が債務不履行に陥ることに対する警戒感が、欧米金融市場で高まっているが、すでに予定通りに支払う余力は残されていないとの見方を裏付けるような兆候も現れている。

例えば、ウクライナでは金融危機とは無関係な大手行への怪文書騒動で、取り付け騒ぎが起こり、中央銀行が対処する事態になるほど、市民の自国の将来に対する不安は高まっている。

新たにIMFに支援を要請したパキスタンも、通貨の下落幅を見ていると非常に危険な状況だと思う。

こうした新興国に先駆けて経済成長を遂げつつあった、ロシア・インド・中国といった国でも大きな変動が起こっている。

インドでは、通貨ルピーが24日の取引で一時1ドル50.03ルピーという史上最安値を更新するという事態に陥った。08年年初来からの推移を見ると、通貨安・株安が劇的に進行していることが分かる。

株式市場の下落に連れ立って通貨も大きく下落するのは、ヘッジファンドの影響だ。

株式市場が急激に下落する荒れた局面を迎えると、それを狙って通貨を空売りするというのがヘッジファンドの典型的なパターンだからだ。

インドは、まさにこのパターンに陥ったのだと思う。

インドとは違って中国は通貨を未だに国家管理としているお陰でヘッジファンドが手を出せなかった。

この点において、中国が通貨を自由化せずに国家管理のままにしていたのは幸運だったと思う。中国政府は、今の状況を見てホッと胸を撫で下ろしているのではないだろうか。

中国にとって恐いのは、「メキシコ型」の通貨下落に陥ることだ。

メキシコでは経済が成長し、それに合わせて通貨「ペソ」が強くなってくると、ある局面から「ファンダメンタルに不安がある」「南北格差が問題だ」などと騒がれて、

急激に通貨「ペソ」が下落するという事態を何度も繰り返し経験している。

通貨「ペソ」をして「泣きペソ」と呼ばれてしまうほど、ヘッジファンドに弄ばれ、食い物にされ続けた経験があるのだ。

ヘッジファンドのように、本来的な意味での「投資」をするのではなく、主に「投機」を目的とする人が蠢いているうちは、新興国がその通貨を完全に自由化してしまうのは得策ではないと思う。

ヘッジファンドの獲物になった挙句、経済が落ち込んでしまい、結局は国の開発が大きく遅れるという事態になってしまうからだ。

一方、私たちが世界経済の動向を見るときには、ヘッジファンドが何を狙い、どのような動きを見せているかに注目することも大切だ。

当たり前のことだが、株価も通貨も実態経済を反映しているだけではない。株価や通貨が下落している本当の理由、その背景を見極められる目を養ってもらいたいと思う。

1 コメント

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Unknown (デンジャラス)
2008-11-04 22:23:18
怖っ!!!
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