観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

シデムシを飼育して

2014-12-31 11:54:36 | 14
3年 鈴木沙喜

 私は野生動物学研究室に入室する時、「動物を守りたい君へ」(2013高槻)を読む機会を得た。それを読んで、さまざまな生き物の例から、生き物の偉大さや生態系を学ぶことの意義について考えることができたが、この本に紹介された内容から特に糞虫とシデムシ類の特性に感動した。彼らの能力が自然環境を維持するために重要な役割を果たす存在であることに気付かされ、敬意に似た気持をもった。このことがきっかけとなって、今は卒業研究として分解者に取り組んでいる。
 今年は死体や糞に来る昆虫相や分解過程などを季節ごとに調査することができたが、中でもオオヒラタシデムシの飼育実験は印象深かった。
こうした分解者の生活史はよくわかっていないので、それを解明することを目的に5匹のオオヒラタシデムシを採集しして飼育を始めた。10日ほど経ち愛着が湧いてきた頃、あきらかにほかの個体とは動きが俊敏な、違う個体が出現した。それはオオヒラタシデムシの幼虫だった。飼育中に成虫が産卵し孵化したのだ。幼虫は日を重ねるごとに増加し、5日後には30個体以上となった。共食いなどにより、最終的に成虫となったのは10個体ほどになってしまった。飼育をして、さまざまな競争に勝ち抜いた彼らに感銘を受けた。


 オオヒラタシデムシの蛹


 飼育下で生まれ、成虫になったオオヒラタシデムシ

 今振り返ると幼虫を用いて実験を試みるべきだったと思うが、飼育していたときは彼らの独特な生態とその生命力にただ感動するだけで、特にデータをとろうという気持はもたなかった。それでも生態学的に意味のある観察もした。初めて幼虫が確認してから成虫に至るまで2週間余りととても速かった。このことは、自然界にはシデムシ類が膨大な数存在することを意味し、分解量もそれだけ多いということだと思う。一方、成長過程を早くしなければならない何らかの要因があるのかもしれない。あるいはシデムシ類の種ごとに産卵時期や成長過程をずらすことにより資源分割をしているのかもしれない。今後、調査をしていく過程で新たな発見ができればと思う。

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1 コメント

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 (狭間黒男)
2017-08-23 14:19:03
イエーイ

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