スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ポルスカの歴史

2007-01-24 23:22:38 | ポルスカについて
今日受けた「ポルスカの歴史」の授業は極めて興味深く、新たにカテゴリを増やすことに。この記事が最初で最後になるかもしれないけど!?

写真左:ゲスト講師なので、おやつが豪勢でした。
写真右:授業風景

:硬めの内容です。民族音楽学に興味のない人には面白くないと思います。また、資料を入手するつもりで、今後、訂正や異なる意見などが生じるかも。あくまでも今日の授業の抜粋として参考程度に思ってください。

講師について
Magnus Gustafsson。なんとも偶然、1/20に紹介したHöökのCDで演奏とCD解説をしている人だった。ストックホルムの音大などで音楽学(Musicology)の教鞭をとる傍ら、スモーランド地方(Småland)の膨大な曲のコレクションを記録、保存する国営の組織にも所属している。言われて思い出したけど、図書館にスモーランドの曲の詳細な楽譜と解説の大きな本があり、その著者でもある。
「ノルウェイやデンマークなど北欧に伝わる10の共通するメロディ(フレーズで曲では無い)」など興味深い記事や、ポルスカについての本を英語でも書いているそう。

こんな面白い話、「スウェーデン語だからわかりません」で終わらせたくない!
朝から猛吹雪で遅刻したMagnusを最前列中央席で待ち構えました。
最初はスウェーデン語オンリーで??だったけど、私に質問をしてくるので「スウェーデン語ワカリマセーン!」と言うと、そうなんだと気づいてくれ要所要所で英語で説明してくれた。加えて休憩時間の質問猛攻撃で今日を乗り切れました!

スウェーデンの民族音楽のコレクションについて
1922~40にかけ、録音された2万曲の中から8千曲を本として出版(SvL 地方ごとに分かれた有名な白い本。ただし、ヴェステルボッテンなど北の地方にポルスカがあると当時思われていなかったため、主にスウェーデン南部のみを扱ったコレクションとなっている)。
それ以外に、手書きで書き記された1700~1800年代の曲が5万曲。
総数としては、スウェーデン全土で約10万曲あると言われている。歌を除いた楽器用の曲としては、この数はどの国と比べても群を抜いている

1500年代 中世のダンス
ヨーロッパでは、ゆっくりしたダンス/fördans(4拍子)に続けて、早いダンス/efterdans(3拍子、4拍子、2拍子など)を踊る形が主流だった。
ダンスのフォームは、円、2列、自由に動く(ラインダンス)の3種類でpardans(par=ペア、dans=ダンス、つまりカップルダンス)では無かった。
次第に、円の中心に男女が出てきて踊る、2つ列が女性のラインと男性のライン、ラインダンスが男女交互の順に並ぶ、とpardansに近い形に。
14世紀にはすでに哲学者がpardansに移行しつつあることを記した言葉がある。

Pardansの発展
はっきりと男女がペアになって踊るようになった場所は分かっていない。当時の文化の中心であった北イタリア、フランス、ドイツなどと思われる。
またダンスの普及スピードは音楽よりも速く、そのためダンスに合わせた曲が沢山つくられる結果となる。
この頃より中世ののダンスにルーツを持つ、二つのパート(遅い&速い)を持った曲がヨーロッパ中に広まる。(「前半(4拍子)タン、タン、タン、タン 後半(3拍子の場合) タタ、タン、タン」という形が多く見られる)
例)ハンガリーのチェダーシュ、オランダのポロ、ルーマニアのダイナなどなど

ただし、ペアダンスはフィンランドを含む先には伝わらず、また大陸から海を越えてイギリスやアイルランドにも伝わらなかった。イギリスでカップルダンスが踊られたのはワルツ(1800年ジャストにパリで創作されたダンス)が入ってきた1800年代のこと。

スウェーデンの状況
Pardansが入ってくる以前、円で踊るスタイルが中世ヨーロッパより入ってきた。現在も、夏至祭クリスマスにポールや木を囲んで踊られる。
1680年代に書き記されたスモーランドの曲で中世の2パート・スタイルの残る曲は、1/20紹介のCDの4曲目。4拍子の前半と3拍子の後半がある。

なぜポルスカと呼ぶのか
Polska(ポルスカ)は、スウェーデン語でポーランドを意味する。理由は、このpardansがポーランドよりもたらされたことにある。(ポーランドが発祥ではないことに注意)
当時のスウェーデンは大陸文化から取り残されており、1500年代に活躍したヴァーサ王の長男が、当時繁栄していたポーランド王妃と政略結婚をした。この頃にポーランドよりこの大陸文化(ダンス)が伝わった。つまり、ポーランドが当時、大陸文化との唯一の接点であった。(この後、ポルスカはスウェーデンで独自に成熟し固有のものが出来たと推測するが今日の授業では触れられなかった)
「pardansの発展」で例を挙げたように各国でそれぞれの呼び名がある。
では、ポーランドではポルスカを何と呼ぶのか?(ポルスカは単にこの手のダンスをスウェーデンでそう呼んだだけに過ぎない)ポーランドではマズルカ(mazurka)。

北欧諸国
ノルウェイでは普及と共に、前半のゆっくりした4拍子(Gangar:ガンガル)と後半の速い3拍子(Springar:スプリンガル)とに完全に分離され地方へ広がっていった(Halling:ハリングはpardansではない)。デンマークでは前半の4拍子の部分だけが一部地域に残り発展していった。フィンランドではメヌエット(menuett)という形になった。

ポルスカの種類(地方による種類ではない)
Ⅰ-a 中世のダンスにルーツを持つ。”La Folia”(西洋中に見られるメロディ)はこのグループ(ちなみに"La Folia"に関する本が今年出版されるらしい)。
 -b Serra
-c モダル音楽(歌 Visorや中世バラッドなどに由来)

Ⅱ-a 1700年代に作られた16分音符のポロネーズ(ポルスカ)
 -b I-cから発展した16分音符のポロネーズ(ポルスカ)

Ⅲ メヌエット(Menuett)

Ⅳ 1800年代に作られた8部音符のハーモニスク音楽のポルスカ
  ハンボ(hambo)、ボンドポルスカ(bondpolska)などはこのグループ

Ⅴ Ⅱの発展系
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2 コメント

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Unknown (みかたろう)
2007-01-25 10:40:14
こんにちは。今回は特に面白い内容だったので思わずコメントしてしまいます。ポルスカ、元々はマズルカと共通のものだったんですね! とすると…随分と変容したものですね。

8000曲の楽譜というのも気になります。私自身、ネット等で集めたもので1200曲程度が限界…好きなあの曲やこの曲が収録されているのかと想像すると…ほしくなってしまいます(笑)。何という本なのでしょうか。
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ヨーロッパの民族音楽 (管理人)
2007-01-26 05:44:53
みかたろうさん、こんにちは!
面白い話ですよね。ちなみにスウェーデンのポルスカはノルウェイと同じで後半分離型だそう。ブログに書くには話が膨大すぎであまり書けませんでした。例えば、フィンランドのメヌエットはフォーク・ミュジックとして残っているメヌエットで珍しいそうで、AパートがメヌエットでBパートがポルスカのmenuett-polskaというのが多くあるそうです。こういった日本語の資料って、ネットでは見かけませんが学問的に研究している日本人はいるのでしょうかね?図書館には、「ヨーロッパの民族音楽」と題した本が沢山あり、スウェーデン語が分かると面白いことが書いているんだろうなぁと思います。

授業を聞いていると、ラテン語を元にヨーロッパ各地に広がった各国語と似ていると思いました。以前、「西洋の言語は、幹から枝分かれした木のよう。アジアは、逆に複数の枝葉から一つの幹と発展し、それが複数存在する状況なのでルーツを探るのが難しい」と聞いたことがあります。アジア音楽には詳しくないのですが、どんなでしょう。
このMagnus先生、テーマを変えてまた来月来るそうです。

1200曲ですか。私は何曲持っているのでしょう…数えたことがないので分かりません(笑)。
お尋ねのコレクションは、Folkmusikkomissonen という組織が出している本です。色んな地方にArkivといって、その地方の曲を収集、保存、本の出版などをしている国の運営による組織があり、これはストックホルムにあるArkivで、「Svenska Låtar」という24冊シリーズです。ストックホルムの音楽博物館(musikmuseet)で買えますが、品切れの時も多いです。日本からだとどうやって買うのか分かりません。

意外に欲しい曲は入っていなくて、例えばByss-Calleの曲なら、適当に印刷したような薄紫色の表紙の57曲入っている楽譜集が有名だったり(曲のタイトルで「Byss-Calleの何番」という時はこの楽譜集についている曲番)。個人やその他の地方団体で綴じた本や、ステンマごとに配っている楽譜集なんかもも相当数あります。
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