そういえば・・・

母の脊髄梗塞回顧録

魔法の杖のオジサンとは

2013-04-04 17:16:23 | 現在の日記
童話「魔法の杖を持ったオジサン」いかがでしたでしょうか?
これは、私の「もう一人のおっちゃん」お友達の比気さんが書いた童話です。

私たちとは違い、だんだんと悪くなってくる病気なので比べる事は出来ませんが、
読んだ後にじわじわときて、泣きそうになってしまったので、「大勢の人に読んで欲しいから、転載許可をちょーだい!!」といったら、笑いながら(多分ね)許可をくれました。

発症したのが38才の頃で(現在は73才)、だんだんと悪くなるのだから「その前に3000m級の山を全部登ろう!」と思って、杖を突き、時には幼い息子さんの手を引き、時にはザイルで引っ張られながら念願の3000m級の全山を踏破しました。

現在、はっきり言って足元はかなり怪しいのですが、今でもリュックを背負い、2本の杖をついて、あちこち出かけていきます。つい数年前の話として、杖でうちの近所の山を登って、麓にテントを張って、バックパックの旅をしたと聞いたときには、目から星が出そうでした。

天下茶屋のおっちゃんは、血を吐くような努力をして奇跡を掴んだ人ですが、
この人も、かなりとんでもない人だと思いました。


こないだ花見に伊豆まで(もちろん杖とリュックで)来てくれたのですが、こちらで待っていた仲間にも杖の人がいました。彼は脳性麻痺で4才まで車椅子だったのですが、リハビリで2本の杖で歩けるようになったとの事です。奥ゆかしい人なので、全然知りませんでした。
山の話をしていた時に「自分も大学の時に長野にいたんですよ」といって、一同びっくり。
Aさん「○さん、大学を出てたんだ~!専攻は何?」
本人「社会福祉です」
私「寮とかに入っていたの?」
本人「普通に下宿で自炊してました」
私「えー、それじゃ、ご飯つくれるんだ!」
・・・びっくりする所はそこか? (←誰もツッこんでくれなかったので自分で)


いやー、世の中には、面白い人がいるもんですね。


※自分も登ろうと思ったとんでもない方へ
 山に登る時は、単独行ではなく数人で。
 予備日を設けて、引き返す時は潔く引き返しましょう~。

童話「魔法の杖を持ったオジサン」後編

2013-04-04 17:00:22 | 現在の日記
風が強い、雪の降る北アルプスを登ったり、暑い暑い屋久島の宮之浦岳を登ったオジサンはもっともっと辛い病院の生活に入ったのです。

オジサンは、手術を受けて退院した後も、ピコタン ピコタンと歩いています。昔の魔法の力がほしくなり、また、山の神にお願いしました。

「どうか私に魔法の力をめぐんで下さい。新緑の山、花の山、岩の山、紅葉の山、白い山を登りたいのです。」

山の神はいいました。

「寒い風の吹く朝、早く起きて、山に向かいファイト ファイトと言って歩きなさい。暑い暑い日中に山に向かいファイト ファイトと言って歩くのです。私は必ずあなたに魔法の杖をあげましょう。」


オジサンは寒い朝も、暑い昼も、雨の日も「ファイト ファイト」と言って歩きました。山の神は少しずつオジサンを許すようになりました。一生懸命歩いているオジサンを見続けた山の神は、退院して初めての山登りの朝早い暗い林の中で魔法の力が入った杖を、オジサンにあげました。

魔法の杖をいただいたオジサンは、乗鞍岳、御岳、立山と登り3000m以上の山を全部登りました。魔法の杖を持ったオジサンのそれからは、苗場山・白備大山・九州の百名山全山新緑の山。白山・木曽駒のクロユリ、旭岳からトムラウシ岳へ縦走のコマクサ・朝日連峰縦走の花の山。常念岳・アラスカのヘーリー山・剣岳・甲斐駒の岩の山。金峰山の紅葉の山。谷川岳・八ヶ岳の白い山を登れました。

魔法の杖を持ったオジサンは、これからも新緑の山、花の山、岩の山、紅葉の山、白い山を登り続けることでしょう。                         
                                   おわり。    

童話「魔法の杖を持ったオジサン」 前編

2013-04-04 16:32:32 | 現在の日記
童話「魔法の杖を持ったオジサン」  比気 弘洋


山登りの大好きなオジサンがいました。そのオジサンは、年をとるとともに山に登るのが辛くなりました。オジサンは、楽に山を登る方法がないかなーと考えました。魔法の力によって高い山も急な所も、寒い時にも暑い時にも楽々と登れるように、魔法の力があれば良いなあと思ったのです。オジサンは山の神にお願いしました。
「どうか私に魔法の力を恵んでください。頂上に立って雲の海に浮かぶ山々、夕日に照らされて赤く染まる岩や雪を見たいのです」

山の神は言いました。
「寒い風の吹く朝、早く起きて、山に向かいファイトファイトと言って走りなさい。暑い暑い日中に山に向かいファイト ファイトと言って走るのです。私は必ずあなたに魔法の力をあげましょう。」

オジサンは寒い朝も、暑い昼も、雨の日も「ファイト ファイト」と言って走りました。山の神は魔法の力を少しずつ、オジサンにあげるようになりました。オジサンが「ファイト ファイト」というと、きつい登りも楽々に、凍てつく夜もテントの中でよく眠れるように、なりました。オジサンはとうとう魔法の力を山の神からいただきました。

オジサンは次から次へと山を登りました。岩ばかりの狭い頂上や、雪で真っ白になった頂上、風が強い頂上でも楽々と登れました。
 オジサンは日本で10番まで高い山を全部登り、3000mより高い山も、あと3ツの山を登れば全部登ってしまうのです。オジサンは、もう、簡単に登れると思っています。


それからのオジサンは毎日、夜になると、ビールやお酒を沢山飲むようになりました。酔っぱらっては山の神との約束を守らないで、走るのを怠けるようになりました。山の神は怠けているオジサンから魔法の力を少しずつ取り上げています。山の神が怒っているのを知らないオジサンは、木曽の御岳(おんたけ)の山登りに行きました。山の神は御岳に雨をポツリポツリと2日も3日も雨を降らせました。オジサンは雨が少し降ったので喜んでテントの中で、酒やウィスキーを飲んで歌を唄って楽しい3日間を過ごしました。山登りに行ったのに、山に登らないのです。山の神はますます怒りました。オジサンから魔法の力を取ってしまったのです。


ある日、オジサンは、社内野球でピッチャーをやったのです。魔法の力で相手チームをやっつけようと思っています。山の神に見捨てられたのを知らないオジサンは「ファイト ファイト」と言っても、魔法の力が出てきません。カーブやシュートを投げても打たれてしまいます。そのうちに腰がだんだん痛くなってきて、ついには、ピコタンピコタンと歩くようになってしまいました。
 それからのオジサンは、なだらかな坂道も辛い登りとなり、駅の階段も急な登りとなりました。オジサンは「ユックリ ユックリ」と言って歩かなければならなくなり、この時はじめて山の神に魔法の力を取られたのを知ったのでした。
オジサンはお医者さんにお願いしました。
「どうか山に登れるようにして下さい。」
お医者さんは「ハイ、入院しなさい」と、言ってキラキラ光るナイフや太い注射器を見せつけたのです。