みかん日記

省農薬ミカン園の様子や農薬ゼミの活動内容を伝えます。

農家は社長 ~ 農業研修レポート in 宮崎

2007-09-30 12:38:57 | 不定期コラム
『農で起業する』
『農!黄金のスモールビジネス』
(ともに築地書店)

これらの二つの本に感銘を受け、
著者・杉山経昌さんの下で、
つい先日まで一週間の研修をさせてもらいました。

場所は、宮崎県綾町。
日本最大級の照葉樹林をはじめとする、
豊かな自然を活かした産業が中心の小さな町です。

メーカーでの研究者、
外資系企業での営業というキャリアを経て、
脱サラした杉山さんがその地で行っているのは、
観光ブドウ園の「経営」。

ブドウの栽培やブドウ園のPRはもちろんですが、
それ以外にも杉山さんは「経営者」として
様々な“非常識”に汗を流し、
日々改善を実行していました。


たとえば、肥料。

農家によっては、農協が推薦する施肥設計に従って
N、P、Kメインの施肥を行っています。

しかし、
実際には収穫量や天気、
圃場の性質などによって土壌成分は大きく異なり、
それゆえに施肥計画も異なるべきであると言えます。

また、肥料成分もN、P、Kだけではなくて、
Mg、Caやその他B、S、Fe、Mn、Moなど
様々な微量元素も植物の成長には無視できない要素です。

杉山さんは、圃場の土壌分析をするとともに、
その年の天候・湿度・降雨量・日照時間・葉緑素量などを測定し、
それらのデータを自身で設計した肥料設計プログラムに投入することによって
「必要なときに、必要なだけの」肥料を投入しています。

さらに、肥料の購買発注に関しても、
数社の業者間で相見積りを取り、
様々な条件(例えば袋詰めでなくてダンプカーで運んでくれて良い)を提示し
交渉することによって、かなりのコスト削減を実現しています。


たとえば、ビニールハウス。

杉山さんの第一ブドウ園は、縦80mのビニールハウスが7棟並んでいる形です。
その建設を業者に頼めば費用が莫大にかかるということで、
杉山さんは自分で立ててしまいました。

構造に関しても、
芝刈り機が縦横無尽に走れて助走作業が楽になるように、
不要な柱が代替物に置き換わっているなど、
様々な工夫が見られます。


たとえば、顧客管理。

杉山さんのブドウ園では、顧客リピート率が非常に高いです。
その秘密は、
上質な顧客サービスもさることながら、
徹底した顧客管理にあります。

コンピュータ上で顧客簿を作成し、
「最近はいつ来園したか」
「過去に何回来園したか」
「過去に何箱商品を送付したか」
などの情報を蓄積しています。

そしてそれらの情報を下に、
優良顧客だけをPR先として選定し続け、
顧客母集団が自分とマッチする方向、
つまりニーズとシーズが合致する方向へと誘導しているのです。


「百姓」とは、
栽培・施肥・建築・経営・営業・接客などなど
100もの技術が要求される素晴らしく高度な職業である
と杉山さんは言います。

農業政策談義もよいですが、
杉山さんのように、
経営的で、
俯瞰的で、
弛緩集中的な
農業ビジネス経営者としてのミクロな視点が、
日本や世界の農業を元気にするのではないかと改めて感じました。

(*興味のある方は、ぜひ冒頭にある本を読んでみて下さい。)

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
行なうは易く、言うは難し。 (いちかわ@熊野)
2007-09-30 21:42:34
 この本は出たての頃に読みましたが、「いかにも」という題名の割には常識的で当を得たことが書いてあるなあ、というのが感想でした。私の周りでも、いわゆる働き盛り・一家の大黒柱の農業者は大なり小なり同じようなことをやっています。
 ただ、出る杭となるのを嫌ったり、農業組織への遠慮からあまり公にはしないものなのですが、本まで出してしまうって一体・・・と思いながら読んだのですが・・・最後の「著者近影」を見て納得でした。一度ご覧下さい。
>行なうは易く、言うは難し。 (松崎)
2007-10-01 23:48:08
コメントありがとうございます。
ただ、申し訳ないのですが、云わんとしておられることが今一つよく分かりませんでした。率直な表現で結構ですので、もう少し噛み砕いてご説明お願いします。(タイトルも意味有り気ですね。)
私は農業に関してはズブの素人ですので、いちかわ様のオススメの書籍や人物等おられましたら、是非ご紹介下さい。勉強させて頂きたいと思います。
言うは難し。 (いちかわ@熊野)
2007-10-03 07:51:18
 分かりにくかったですか。本当に実行が易しいと思っているわけではないのでタイトルも後半だけで良かったのですが・・・すみません。

 最近、新規就農や田舎暮らしのための本がたくさん出版されていますが、農業や農村生活の経験がない人が書いたとしか思えない、底の浅いものが多いようにも見受けられます。
 この本もタイトルからしてその類かなあと思いながら読み始めたのですが、全然違って、非常に実践的で共感の持てる内容でした。
 世の中、思ってはいるけど表に出せない事とか、言いたいけれど口には出せない事、やっているけど秘密にしておきたい事がいっぱいありますよね。農業の世界でのそれらを全部書いてしまったのが、この本です(そういう意味で農家の間でも話題になっています)。
 「やっぱりみんな(かどうかは知りませんが)そう思ってたんだ」とホッとすると同時に「しかしこの人、ここまで書いて大丈夫か?」と感じながら読み進めていったのですが(何が大丈夫かというと自分でもよく分かりませんが)、最後の写真を見て笑っちゃいました。未読の方のためにあえて具体的には書きませんが、「ああ、こういう強烈な人だから、こんなのが書けるんだな」と思ったのです。

 というのが、最初のコメントの解説です。読みにくい文ですみません。

 で、おすすめの本や人物ですが、私もそれほど顔が広いわけでもないのですが、どういう方面がお好みか教えていただければ、紹介できるかもしれません。
 また、杉山さんは私のお会いしたい人物の一人でもありますので、ミカン山で情報交換出来ると良いですね。
>言うは難し。 (松崎)
2007-10-03 20:09:35
なるほど~。詳細なご説明ありがとうございます。私は、私がなんとなく農業に対して抱いていた違和感を具体的に言葉にしてもらった思いでした。
若輩者ですが、またみかん山でお願いします。
すみませんでした! (市川@熊野)
2007-10-10 15:57:52
 今日、本屋で著者の本を見かけたのですが-写真が変わってました!これでは解らないのも無理はない。私の読んだ版では「近所の川でバタフライをしているところ」がこの本に載っている唯一の写真だったと記憶しているのですが。こんなほのぼのしたイラストは見た記憶がないぞ!
>すみませんでした! (松崎)
2007-10-20 12:14:04
なるほどそういうことでしたか。笑
研修中はその川に連れて行ってもらって一緒に泳ぎました。そしてバタフライしてました。ほんとに溜息が出るほど元気な方です。
私も読み始めました。 (soubei1949)
2008-02-22 15:14:47
この本を、最近入手。読み始めたところです。

団塊の世代。私も、あと少しで定年。

すでに、農地も購入しており帰農予定です。

杉山氏をヤフー検索中にこのページを見かけまし

た。これもご縁ですね。よろしくお願いします。
はじめまして (オガワ)
2008-02-23 20:49:19
こちらこそよろしくお願いします。

松崎さんは今海外旅行中です。
また帰ってきたらコメントを書いてもらうように
伝えておきますね

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