Monotonous City --旧ソヴェトのロボ超人と呼吸音

退屈とは高貴な病であって、有閑階級のみが特権的に患う事の出来るものであった。
「贅沢な余暇と退屈な余暇」より

説教人が説教されるとき

2008-06-18 | 今日の勉強(最近学んだこと)
夕べは仕事を目一杯やったので、一人、しん坊へ。
どうしても刺身と日本酒が飲りたかったわけです。

店内はほぼ満席。必然的にお一人様はカウンター席へ誘われます。

と、横にいたのが、5時から飲んでいるという年配の方。すでに顔は赤い。うれしそうに金目鯛の刺身を摘み上げながら、「ほんんっとに、ホヤってうまいよねぇ・・・」その幸せそうな顔を見て思わず、「ホントですよね。ホヤ、お酒に合いますからねー」と返してみた。

近くにいる女将さんが小さな声で(ごめんね・・・)と。何がゴメンかよくわからずに、飲み物とおつまみをお願いする。

彼は、一人でホヤを傍らに日本酒「南部美人」をちびちびやる私に興味を持ったようで、話しかけてくる。ラーメンと牛丼は一人で黙々と食べるのを信条としている私はホヤと日本酒に集中して楽しんでいた。話しかけられるとちょっと味がわからなくなるので、暫く黙って聞き流していたところ、「君の、そのメガネはなんだ?なんでかけているんだ?」と。ありゃ、例の「笑福亭笑瓶風」紫外線予防メガネをかけていたままだった。ちょっと雰囲気がまずいな、と思ったのもつかの間。「君は、マイナーか?」と。

始めは意味がわからなかったのですが、どうやら、「勝ち組か、負け組みか」という意味らしい。何をもって勝ち組というか、負け組みというか、その定義に言及するのもはばかるのですが、言い換えると、ここでは、「自分の夢を達成できているかどうか」というもの。

次いで彼の口をついて出てきたのが「君はマイナーだな。マイナーは応援したくなる。だから、がんばれよ。」と。

なるほど、これはきちんと聞かなければ。なぜ「マイナー=夢を達成できていない」だと思ったのか。なぜそれを応援するのか。お酒が少々まずくなることを省みず、そのシニアなアドバイザーに耳を傾けた。要約すると・・・

「派手なメガネをかけて一人でこんな安くてうまい居酒屋に来る人は、軽薄で、外では見栄っ張りで、自分本位。将来をテキトウに考えている。物事の本質が潜む歴史や匠のことを知らないし、知ろうともしない。輝いている人はスグ判る。しかし、貴方にはそれがない。だから、マイナーなんだよ。」

批判を真摯に受け止めるには、自信(自分を信じる)という強い精神力が必要です。その第一歩は、どんなに腹立たしいことだとしても、冷静さを保つことです。

以前受けたビジネストレーニング「メンタルタフネス」では、批判を客観的に咀嚼して受け入れ、自身の改善のポイントは何かを探ることに活用しろ、しかしそれは、「そうでなければならないわけではない」ことだと教えこまれました。また、グローバルパートナーが主宰する「ファシリテーション」のトレーニングでは、批判勢力との調和を求めるには、まず相手を認知して、受容し、対話を始めることが必須であると説いています。さらに、メディアトレーニングで学ぶ、相手のアジェンダに振り回されない、「ブリッジング」という技術が頭に浮かびました。

ご批判のコメントに不慣れな私は、やや緊張した面持ちで第一声を「そうですね。その通りかもしれません。ご意見に興味があるので、なぜそう思うかを教えていただけませんか。」としました。相手の方はニヤリとし、自身の仕事への取り組み方や、これまでの成果、家族への想い、世間への不満・・・について滔々と語り始めたのです。

小一時間その話を聞きながら終始「なるほど、そうですね、そうなんですね。よくわかります、そう思います。」と相槌を打つ。

そうすると、相手の当初鋭かった目つき、こわばった表情がだんだん和らいで、次第に笑顔になっていきました。気がつくと、ほとんど話を聞いているだけなのに、「君は偉いなぁ、君のような将来あるものに日本を託したいんだよ。わはは」と肩をバンバン叩いたりし始めます。

彼が家族の話や故郷の話をし始めたときに転機が訪れました。聞けば18代続く本家の長男。彼には息子が一人いるものの、病気で長期の治療を余儀なくされている。この家を継ぐというプレッシャーに翻弄されていると、とうとう身の上の話をし始めたのです。私は、質問を投げかけるも、話を聞くことに決めました。長女夫婦にも跡継ぎがいなく、どうやら婿側にその意思がない云々。

ほどなく、彼が話をし尽くした様子を見計らい、私はこう言ったのです。「私にもおとうさんと同じ世代の親父がいます。親父には、自分が今こうして生きて未来にいけることを感謝するようになりました。きっと、家族っていうのはそうやって親父に感謝するんですよね。」

きっと彼は、自分ががんばってきたことや、培ったものをもっと認めてほしかったのかもしれません。感謝とは、相手の認知、受容、肯定、対話を誘発し、ポジティブなコミュニケーションを醸成します。

彼は、微笑を浮かべて、握手をしてくれました。やわらくて、温かい手でした。もう、赤かった顔は肌色に戻っています。

「またお会いしましょう。」

二杯目のお酒を飲み干した私は、お店を後にしたのでした。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マスター)
2008-06-18 19:24:29
いい飲み手になったねぇ。大人だねぇ。
Unknown (しゅく)
2008-06-18 23:05:24
ありがとうございます。全てマスターのおかげですよ!
おぉ。 (PECO)
2008-06-18 23:54:49
密かに大人になっていくのね♪
Unknown (しゅく)
2008-06-19 00:40:49
少しずつ。ですよ。>PECOさん

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