のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

見上げたら時間泥棒でない空

2010年10月31日 | 散歩漫歩
畑や田んぼでの仕事中や出かけた先で
流れる雲や夕焼けの色の移り変りに目を奪われることがあります

このブログでも雲や夕焼けの様子を何度も紹介してきました
仕事に追われている中
ぼんやり空を見上げているのはむだそのもの
むだな時間を重ねてもなんの稼ぎにもならない
こう非難されてしまうのが落ちでしょうが
でもこの本は それこそ貴い時間といっています

久しぶりに痛快な本を読んだ気がします

この本には「ぼんやりすること 休むこと 懶惰(らんだ)であること
閑なこと それらを楽しむことのすばらしさ」が
串田孫一や朝永振一郎や深沢七郎や
『森の生活』のH.D.ソローや坂東玉三郎たちの言動や
ミヒャエル・エンデの『モモ』のこと
自らタヒチやニュージーランドや温泉で体験してきたこと
などから次々に紹介されています


ぼんやりしているとき こころは 開放されている
すると風も木も草も石も空も日向も小鳥も鮮やかに見えてくる
巨木に触れば何百年の命を伝えてくれる
万物の中にとけこんでいる己の小ささも見えてくる
人は自然の中のほんの小さなものに過ぎないことを自覚し
天地の姿、営みのひとつひとつにわけもなく驚き畏敬し感謝する
人はやがて「謙虚」という意味をかみしめて生きることになる …


ぼおーっとしているうちに心がからっぽになり
妙にさっぱりした気分になることがある
心が洗われると明日も明後日もよいことがたくさんあるような
そんな気分になる
新鮮な生命力の湧いてくるのを感じる
煮詰まっていた問題が不意に解けることがある
それまで思いつかなかったアイデアが浮かぶことがある
「閑を創る」ことは「文化を創る」ことだ …


近代化・都市化・過密化・高速化・遅寝化などは
たしかにまちをにぎやかにし便利にしたが
その一方では「森」を奪い 「闇」を奪い 「静謐(せいひつ)」を奪い
多様な生命の生存の拠点である「風土生命体」を奪っている
人はぼんやりできる空間、時間を失い
とめどない心の破壊という打撃を受けている …


「質の良いぼんやり時間」を約束してくれる居場所を
つくるのもまちづくりの課題でしょう

深呼吸は吸うことでなく吐くことだといいます
肺の中を空っぽにすれば自然と新鮮な空気が入ってくると

著者は天声人語を担当したジャーナリストです
気負いもなく読めてしまう新書です

辰野和夫『ぼんやりの時間』岩波新書1238 2010年3月 720円+税

的を得た百年続く志

2010年10月30日 | わが家の時時
塩尻視察の宿泊地は諏訪湖畔でした
諏訪温泉に宿泊したこともありますし
高速道SAの温泉施設には何度も立ち寄ったことがありましたが
湖畔に片倉館という文化遺産があることは知りませんでした

シルクエンペラーと呼ばれた片倉財閥の二代目社長が
欧米で地域住民に対する文化福祉施設が充実していることに感銘を受け
ぜひ諏訪にもつくりたいと基金60万円を投じて昭和3年に完成した施設です

浴場棟と文化交流と娯楽を目的とした会館棟からなり
ステンドグラスや彫刻で飾られた大理石造りの浴槽は
一度に100人も入れそうな広さで深さも胸まであって
底には玉砂利が敷かれていて歩くと快感

たとえはじめは個人の思いつきであっても
それが的を得たものであったなら
地域に愛され 引いては地域の文化遺産となって
80年の長きにわたり
まだまだ100年も地域に引き継がれていくものに
なるのだという事例なんでしょうねえ

THE WINE CITY 信州塩尻桔梗ケ原

2010年10月29日 | 農のあれこれ
塩尻視察の続きです

上の写真は市内桔梗ケ原にある観光果樹園さんの宅配伝票の一部
カラーのロゴの入った伝票を独自に作られたそうです
一枚十数円かかっていて
お客さんが書き損じすると内心あぁとつぶやいてしまうと吐露してくれましたが
当事者にしてみれば理解できるはなしです

わが家もナシ宅配専用の伝票を使っていますが
それは業者さんが作ってくれたもので自己負担ゼロ
ここの果樹園さんのように
そこまで経費をかけることはあるのかというご意見もおありでしょうが
わが家の伝票でもナシ用の伝票があるんだという反応もあるくらいですから
オリジナルのカラーのロゴ付き伝票は相当の効果があるのでしょう

塩尻桔梗ケ原といえばワインです
実は国産ワインではじめて美味しいと思えたワインは
コンコードという品種を原料とした塩尻産赤ワイン
今回は訪れることができなかったので次はぜひ五一ワイナリーへ

猫の手も担い手も誇るブランディング

2010年10月28日 | 農のあれこれ
27,28日と長野県塩尻市へ農業委員会の視察がありました

「経営基盤の強化」「競争力ある産地体制づくり」「消費者との連携」と
どこにでもある政策課題と目標を掲げながら着実に実績を積み重ね
なにがわがまちと違うのかと考えさせられてきました

農業者が高齢化してきた
経営も農地利用も縮小せざるを得ない
地域全体で可能な限りカバーしなければならない
作業を手伝ってくれる労力支援組織(ねこの手クラブ)を立ち上げ
農業の持続的発展を図ろう ということで
行政やJA 生産者組合 農業委員会等を運営母体とする
営農サポートセンターを10年前に設置

22年度は9月末までに延べ237戸の農家が利用し
延べ982名の支援者が延べ2,220日 延べ28,644時間作業…

そしてこの11月には農業公社を開設
農作業の受託から受委託のあっせん 農地利用集積円滑化 担い手育成
耕作放棄地対策 特産品開発 市民農園管理 農業情報の受発信
と地域農業を振興する事業が並んでいます

さらにサポートセンターや公社とは別に
耕作放棄農地を再生させるNPOも昨年発足し
市は農機具を貸し出してもいます

支援組織を作って
場合によっては直接農作業できる組織(公社)も必要
とプランをつくることはできるのですが
それを実現してしまうとは

農家と支援者との間の調整もたいへんだったでしょう
よく公社設立まで推し進めて来られましたねと伺うと
キーパーソンがいた様子ですし
行政の姿勢もブレなかったようです

それは21年度の農用地利用集積(利用権設定)の実績が
柏市が33件22ha弱なのに対し塩尻市が589件160ha余りという
数字にも現れています
市単独の助成金をずーっと継続していることも
その要因になっているようですが
農家が行政を信頼するには十分でしょう

労力不足 耕作放棄地解消といった直近の課題を解決する方策も整えた
農地集約化によって経営基盤も整えた
さて次は…
外からは「憧れる地域」「買いたい地域」に
中からは「誇れる地域」「売りたい地域」にしたいという
長期的な地域ブランド戦略にも取り組んでいます

単なる特産品ブランドの構築でなく
戦略的なコミュニケーションを継続的に行い地域全体のイメージアップを
と 2年前に経済事業部の中にブランド推進室を設置
こういう行政部門をつくってしまうのも驚きです
レタスアイスの商品開発やエキナカビストロなどを模索中
写真のロゴマークもその一環
特産のブドウがシンプルに表現されているのに好感が持てます

わがまちと環境が違うとはいえ
短期から長期までまちづくり戦略が網羅され
しかも着実に推し進められているという印象
わがまちでもできるはずなんですがねえ

口開き光風水受け止めて

2010年10月22日 | ネイチャースケッチ
たびたびのアケビネタで恐縮です

五葉アケビの実です
ぼんやりと大きな実をぶら下げて実は大きな口を広げて
何を待っているのかなあなんて思えてきます

ずずっと近寄ってみると
パステルカラーの果皮が印象的です

            

さらに日に透かしてみると果皮はオレンジ色に変わり
ひとつひとつの種子に養分を送る繊維組織まで見えます

            

先日の三葉アケビとの比較です

            

取り置いていた実なので色あせてきていますが
三葉の実の方が鮮やかな色をして果皮も肉厚です
食用に店頭で見られるアケビはこちらの種類のようです

クラフト材料にするなら五葉の弦の方が野性味があるように思えるのですが

急がないせかせかしないのどやかさ

2010年10月21日 | わが家の時時
信州上田への弾丸ツアー
もうひとつの目的は温泉に入ってぼんやりの時間を過ごすこと

塩田平の代表的な温泉として通り過ぎたことはあったのですが
一度も立ち寄ったことのない鹿教湯温泉へ

鹿に姿を変えた文殊菩薩が
信仰心の厚い猟師に温泉の場所を教えたという開湯伝説があって
そこから鹿が教えた湯すなわち鹿教湯というそうです
古くから湯治場としても栄え
国民保養温泉地に指定されて
大きなリハビリテーション病院まで立地しています

温泉街を見降ろすところにある文殊堂は「日本三大文殊」の一つとされ
その前にある共同浴場が文殊の湯
無色透明の単純温泉ながら気持ちの良い湯

昼日中の共同浴場
独り占めの浴槽でのどかな時間が過ぎていきました…

と言いたいところですが
たまたま居合わせた方が声をかけてきてしばらくおしゃべり

ぼーっとはできませんでしたが
文殊の湯に下りていく坂道に沿って配置された
色とりどりのシソ科のコリウスが気分を和ませてくれました

松茸に沸く山沈む松林

2010年10月20日 | わが家の時時
秋の収穫後の気分転換に例年のごとく日帰り弾丸ツアー
今年は昨日19日に松茸の大豊作に沸く長野県上田市の松茸山へ

             

マツタケの生えている赤松林の中に山小屋があって
そこでマツタケづくしのコース料理をいただくという趣向

例年ならひと月分の出荷量が一日で出荷されるという大異変とか
ならコース料金も下がっているかと期待したいところですが
組合の協定があって…
でも例年よりも使っているマツタケの量は増えていますと
今朝のラジオで店の女将が弁明していました

あれでマツタケが増量されているのかわからないのが
初心者の悲しいところ

どびんむし、茶碗むし、てんぷら、汁、なべといただいて
サービスだとうどんまでいただいておなかがいっぱい
マツタケご飯はお土産にどうぞとパック詰めに用意してくれました
なんと気が効くと一瞬思ったのですが
よくよく考えれば来られなかった家族・知人へのお土産になって
今度はごいっしょにという心憎いばかりの宣伝効果

            

樹齢何十年という赤松林
数十年前に全国的に広がったマツクイムシの被害はなかったようです

が 松山の斜面には切り倒された松の幹が重ねられています
ビニールシートで覆われたものも見られます
マツタケの菌床でも培養しているのかとスタッフに尋ねると
実は現在マツクイムシ被害が進行中だとか
害虫の被害を受けた木を山から持ち出して焼却処分できないので
薬剤で燻蒸しているのがあのビニールシートとか

十年後 松林はなくなっているかもしれません
というスタッフの説明がさびしく心に響きました

忘れられ日陰に開く大あくび

2010年10月14日 | ネイチャースケッチ
語源は「開いた実」なのか「あくび」の様子に似ているからなのか
これは昨年紹介した自生のアケビとは違う品種のようです

こちらは三つ葉 あちらは五つ葉
あちらのほうが果皮が鮮やかな色をしています

5年ぐらい前に友人から株をもらってきて
ポットに入ったまま庭先においておいたら
水抜き穴から根を伸ばし
今年はじめて実をつけました

いつまでたっても実がつかないので忘れていました
近くの梅の木にからみついています
居間の日よけ用にアケビ棚を作らないといけないかもしれません

土動く水と気温のちょうど良さ

2010年10月13日 | 梨の品種
湿度も適度にあって気温も10月にしては暖かいものですから
ナシ畑のあちこちでキノコの姿が見られます
名はわかりませんが ナシ畑とすればよいだろうと

さて 現在「新興」と「王秋」を収穫中です
ご注文に応じて随時出荷しております
どちらの晩生品種も
「新高」のような夏の猛暑の影響はなかったようにみられます
十分な日照を浴びて糖度も例年以上か

「新興」は余裕がありますが 「王秋」は余裕はなさそうです
新規に王秋畑を増やそうとしていますが
毎年 少しずつということでご了承ください
といいながらPRです

            

特に新品種「王秋」は注目
まだ店頭に並ぶことはなく
生産者から直接購買する以外に入手できないと思います

形状がラグビーボールのようで果皮の色もきれいとはいえませんが
果肉は晩生種としてはさくさくときめ細かく
甘味と酸味を持ち合わせた果汁はまさに『10月の豊水』
その外見を裏切る美味しさです
わが家のナシは「秋麗」も同様で
そんなのばかりです

しかもひと月以上も常温保存が可能で
追熟すると洋ナシのような感触になって
一つの品種で二つの美味しさを楽しめるともいわれます

(慈梨×二十世紀)と新雪を掛け合わせてできた品種

形状と追熟したときの美味しさは中国ナシ「慈梨」の性質
果肉のきめ細かさと酸味は「二十世紀」ゆずり
晩生で保存がきくのは「新雪」ならでは
それぞれのご先祖の良いところ取りの品種です

体育の日一日だけの日本晴れ

2010年10月12日 | ネイチャースケッチ
少し前のお天気週間予報ではしばらく晴天が続くような雰囲気でしたが
今朝は早くもポツリポツリ落ちてきました

夕方に青空が見えたものの
予報をチェックすると曇りマークのオンパレード

これはこれは今年も湿気た秋になりそうです

水はけの悪い田んぼは機械が入れず稲刈りのまま
その間にナシの間伐や新植畑の棚張りの準備でもしましょうか

月出ると思えぬ朝の欲の雨

2010年10月10日 | 梨の出荷
降雨だけで言えば台風並みの低気圧通過でした。
外にあったバケツの半分ぐらいの深さまで水が溜まっていました。
でも10年10月10日の三日月を愛でることができました。

今年のナシの収穫は幸水、豊水と時期が遅れたのですが、
晩生種ほど早まる傾向があるようです。
その原因は晩生種の開花した4月上旬までは例年並みに生育が推移したものの
中旬に雪が降るほどの寒気が入って中生種、早生種の開花が遅れたため。
そして、夏の猛暑で晩生種の熟期が進んだのではないかと思われます。
そんなわけで「新興」と交互に「王秋」を収穫しています。

          

通常、日本ナシはお尻を上にしてパック詰めしますが、
「王秋」は縦長の実のため洋ナシのように横向きに詰めています(上写真)。

今年の「王秋」、接ぎ木の部分はそれほどでもないのですが、
育成中の苗木の実は少し小ぶりになってしまいました。

昨年、苗木にしては収量があって実の評判もよかったものですから、
着果量も欲張ってしまいました。
そこへこの夏の日照りです。
自然の猛威というよりそれを忘れた作り手の欲のなせる結果。

反省。

われ玉のあわれや寒露のど渇く

2010年10月08日 | 梨の品種
「新高」につづき「晩三吉」もぱっかりと割れてきました。
晩生種は生育期間が長いためか
期間中の天候の影響を受けやすいのかもしれません。

気候も涼しくなって喉の渇きもなくなるころだし、
あんまりナシの出番はないか…と思いきや、
こんなお手紙をいただきました。

「88歳になる母が毎食後、ナシをいただいております。
美味しいだけでなく、なにやら便通もよくなるようで。
つきましては、追加して注文したいのですが」

そうなんです。
ナシにはこういう効能もあったんです。
漢字で利(り)のある木(き)と書いて、役に立つ木という意味。
漢方では、熱からくる咳(せき)を止め、
痰(たん)をおさえるという効果があるとされています。
ナシ特有のシャリシャリとした歯ごたえは
石細胞といわれる成分で、お通じをよくしてくれます。
ナシに多く含まれるカリウムは血圧を下げる作用もあります。

これをPRしていけばまだまだ需要は伸びるはず。
10月にもなれば収穫作業も追いかけられなくなります。
晩生種も増やしていきましょう。

みて食べてナシもいろいろありの実

2010年10月07日 | アグリママ
先日の土曜日(10月2日)、ららぽーと柏の葉の特設会場で
柏市の「食」と「農」をつなぐまちづくりイベント、
「かしわフードショー2010」が開催され、わが家のナシも出店しました。

             

「豊水」に「あきづき」「かおり」「新高」を展示販売。
まだあまり馴染みのないはずの「あきづき」から完売して
新品種の評判がすでに定着していることを実感。
「かおり」と「新高」の1kg以上の特大玉2個入り箱も
その大きさからか、反響がありました。

柏市内の農産物の展示販売の合間には
山形県庄内を「食の王国」として世界に発信している
レストラン「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフ
奥田政行さんがクッキングライブを展開。
イベントを知らずに来店したお客さんも聞き耳を立てる
その話術とパフォーマンスはさすがカリスマシェフ。

イベント終了後の関係者の交流会では、
商品価値のないナシを使ったコラボができないかと
話題提供のつもりで持ち込んだわが家のナシのコンポート。
奥田シェフがそれを見つけて、テーブル上にあった焼き豚と
生の甘長とうがらしと合わせてフランスパンに挟んで
わが家の“母”に「食べてごらん」と手渡してくれました。

1+1+1が3ではなく5にも6にもなったような素材のハーモニー。
スローフード協会イタリア本部から世界の料理人1000人に選ばれた才能を
体感させてもらいました。