つれづれに 

老いてゆく日々、興味ある出来事に私見を添えた、オールドレディーの雑記帳です。

梁石日 著「闇の子供たち」・・・

2008-10-13 | お気の毒です
 梁石日(ヤン・ソギル)は大阪市生まれの在日韓国人作家である。『闇の子供たち』は、タイを舞台とした幼児の売買春・人身売買・臓器売買を描いたフィクションで、2002年に発表されている。
 この本を読み始めたときは、幼児売春の描写が余りにグロテスクで読むのをやめたくなった。10歳前後の幼い子供たちが搾取され飢えに苦しみ、虐待に怯え、幼児愛好者たちの性的玩具になり、はてはエイズに感染し生きたままゴミ袋に入れられてゴミ捨て場に捨てられるという残酷さ、フィクションだとしても寒気を覚えた。NPO法人の福祉団体に身を投じ、子ども達を救済するため活動するヒロインの日本人女性、だが、国際社会は無関心で何もしてくれない。やりきれないラストシーン、これがフィクションでよかったと、つくづくそう思った。
 この「闇の子供たち」は、「亡国のイージス」、「魂萌え」の阪本順治監督、江口洋介・宮崎あおい・佐藤浩市・妻夫木聡らの出演で映画化され8月2日より公開されている。バンコク国際映画祭に出品されたが「タイの実態とかけ離れた内容である」として上映中止になったという。それだけタイの実態に鋭く深く迫っている映画だといえるのかもしれない。

 だが、この小説が全くのフィクションでないことを証明する事実が明らかになった。先月28日のロイター発のニュースで、東南アジアの他の国にもこれに似た実態があったのである。
 【カンボジア出身のソマリー・マムさんはクメール・ルージュの残忍な支配下で孤児として育った。家族の思い出もなく、本当の年齢や名前も分からない。だが、売春宿に売られたときのことは思い出すという。強制的売春と闘う活動家へ転じたマムさんは、劇的な人生を回顧録「The Road of Lost Innocence(原題)」にまとめた。
 1970年代前半に生まれたマムさんは、クメール・ルージュの支配を少し覚えている。1970年代後半、クメール・ルージュが虐殺や拷問、飢えによって死に追いやった人の数は推定170万人に上る。マムさんは16歳ぐらいのとき、売春宿に売られた。
 捕らわれの身となっていた間、売春宿の経営者が横柄な態度をした少女の頭を銃で撃つなど、恐ろしい光景も目にしたという。カンボジアでは貧しい家庭の娘が借金の代わりに売春産業に売り渡されることがあり、女性に対する暴力を取り締まる法的な力は弱い。
 マムさんは非政府組織(NGO)で働くスイス人の助けを借り、売春宿の経営者に100ドルを払って自由の身となった。こうした金銭による解放は、安全に売春宿から去る限られた方法のひとつになっている。
 解放後に泊まったホテルで、マムさんは初めて暖かいシャワーを浴びた。そのときに初めてきちんとしたせっけんを使った感動を著書で記している。
 マムさんはその後、結婚して一時的にフランスで生活し、カンボジアの「少女たち」をどのような形であっても助けると決心して母国に戻った。―中略―。
 人身売買と闘うNGOのフューチャー・グループは、カンボジアでは最大5万人が売春に関わっており、少女の少なくとも40人に1人が性的産業で働かされていると推計する。
 マムさんは現在、ソマリー・マム基金への資金集めと強制売春問題への関心を高めるため世界中を旅している。また、向こう1年間で世界中で200万─400万人の女性や子どもが性産業に売られると推測している。―後略―。】

 タイは観光地として日本人にもなじみの深い国である。しかし現在、首都バンコクでは反政府デモ隊と警官隊が衝突を繰り返すという政情不安が続いている。私たちにはその国の上っ面のきれいなところしか見えないが、東南アジアの発展途上国にはまだまだ貧しい村々があり、裏社会で幼い子ども達を巡る悲劇が繰り返されているのかと思うと恐ろしくなる。
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4 コメント

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東南アジア (北斗 裕二)
2008-10-14 01:07:42
近所に東南アジアから来ている人と、最近知り合いになりました
日本語も分かると言う事で、日常会話には支障はないようですね。
まだゆっくり話した事がないんで、今度東南アジアの話を聞いて見ようと思っています。

東南アジアは、貧しい所が多いですね。
強制売春を徹底的に排除して、日本のようにソープのような感じではできないんでしょうか?
その点日本は不景気と言っても、恵まれていると思います。
それにしても衆議院解散とか言っている間に、もっと他の事に力を入れてもらいたいものです
Unknown (オールドレディー)
2008-10-14 05:38:36
♠北斗裕二さま
日本は平和です。日本人はまだまだ幸せだとおもいますね。
発展途上国はどこでも貧富の差が激しく、人権なんてないに等しい国が多いのでしょうね。
子ども達を食い物にする大人は一番許せません。

今の日本を変えるのは与野党どちらでしょうか。それも分からなくなりそうです。
買う人間は・・・ (板谷)
2008-10-14 15:16:01
大人はともかく、子供を買うなんて、親のお腹に良心を忘れて来たのでしょうか?
東南アジアで子供も含めて買春するのは日本人が多いみたいで、本当に気持ち悪いです。
今、小児性愛者が多いじゃないですか?子供のグラビアモデルとかいるし、それを喜んで買ったり写真撮影会に群がる男たちが、たくさんいます。売る親も最低ですけど。
それから、それに飽き足らなくなって実行に移してしまう犯罪者達。インターネットの主婦サイトを読んでいると、子供の頃にいたずらされたことのある人たち、結構います。
最近そういう犯罪者が増えている事と、その手の雑誌やビデオ(これは東南アジアの国に撮影に行っているらしいです)やサイトが氾濫している事とは、決して無関係ではないと思います。

「子供とでも、そういうことができるなんて、しらなかった」とそいつらは言うんですよ。
できなくはないかもしれないけど、こどもにとっては拷問以外のものではないでしょうね。大人だってそうなんだから。
そして、簡単に道ばたの子供達をつかまえて餌食にするんです。女の子だけでなく、男の子も表にでないだけで、相当数の被害にあっているそうです。
変態漫画やビデオ、インターネットを見なければ、願望くらいで終わったかもしれないのに、「できるのか!」とやる気にさせてしまったわけですよ。

とても「闇の子供たち」を読む気にはなれません。勇気がでないのです。
どうして、犯罪を助長するような漫画や雑誌などをもう少し取り締まる事ができないのか。政府はなにをしているのかと思います。殺人の出てくる推理小説(表現の自由というか、誰がそんな難しい事できるねん!って意味で)と、女子供をひどい犯罪に巻き込む事を助長するような、変態性欲の裾野を広げるような特殊なものと一緒にして論ずるのは、やめてほしい、と心底思うのですけど、なかなか政府にその気持ちをぶつける機会がありません(笑)
Unknown (オールドレディー)
2008-10-15 21:53:21
♠板谷さま
原作はとても読むに耐えられないものがあります。
ですが、映画化されたことは不埒な大人たちへの警鐘の意味も込められていると思うのです。
映画やぜひ見たいと思いますね。でも、

原作の中では買春する日本人も登場します。とてもひどい人物に描かれていて、情けなくなります。

ニュースに登場したカンボジアの女性は自分の経験を公にして子ども達を救済しようと活動しているって、すごい勇気ある行動だと思いますよね。

男性たちにこの映画を見てぜひ見てもらいたいです。

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