中国不滞在記 in 神戸

行って見て聞いて考えた中国のこと

中国の見方、日本の視覚

2015年04月11日 | 日中関係
時速250キロの高鉄から撮影した江西省の農村の菜の花畑。なかなか美しい。

国に来て2年半、住むほどにこの国の本当の姿が分からなくなる。

大学の寮に住み、日本語科の学生と付き合い、たまに日本語科の中国人の先生と食事をしたり、旅行したりするだけなのだ。その他の中国人との付き合いがほとんどない。市場のおばちゃんや、自転車屋の反日オヤジ、警備員など、笑顔で接してくれて、簡単な会話をする人はいるが、それで何か分かるのかといえば、何も分かるはずがない。外国人にフレンドリーだなっていうくらい。今の大学に移ってからは、生活が便利になった反面、大学外の中国人と友達になる機会がさらになくなった。きわめて限られた人間関係の中で、中国の社会や中国人の考え方など分かるわけはないのだ。表面の、しかもごく一部を撫でさすっているに過ぎないのだが、それでも感じ取れることがないではない。

オイラの中国の見方は是々非々、この国にお世話になっているから悪口を書かないとか、日本と比較して悪いところばかり書くとかいうスタンスは好きではない。日本に対しても同じことである。日本の社会は、住みやすく安全で、面白いことが多いが、あまりに馬鹿丁寧で細部にこだわりすぎて、ストレートではないのでイライラすることが多い。だが、祖国だとか愛国心だとかいうより(安倍なんかにお説教されたくない)無条件に日本の自然、環境が好きだし、家庭があり、友人がいる。自分の居場所は日本しかない。もし自分が中国の会社のまっただ中で働いて、日々中国人と付き合っていれば、中国は第二の故郷になるだろう。在中国の方々のブログをよく拝見しているが、やはりすごいと思うのは中国で起業したり、中国人の会社で自分の腕一本を頼りに奮闘している人たち。この人たちは、中国のいい部分を思う存分楽しみながら、不合理な部分は容赦なく批判する。先入観も思い入れもない。そうありたいものだ。自分が出来ることは時々の出会いで、感じたことを素直に書くしかないのだけれど。

昨日は3年生の勉強会だった。
日本から帰ってきたばかりの学生が二人初参加。
中国の学生派遣団の一員として、北京大や精華大の学生たちとともに、日本人学生と交流したり、国会や博物館の見学など忙しいスケジュールをこなしたらしい。
面白いのは日本に対する二人の感想がまるで食い違っていたこと。

一人は、日本は中国とほとんど同じです、と言う。

「工場地帯に行けばゴミも落ちているし、東京は北京や上海と同じです。違いを感じませんでした。
料理もおいしいとは思いませんでした」。

もう一人は全然違うと言う。

「町は静かで清潔で、人々のマナーがよく、日本料理がとても美味しかったです」。
エレベーターを降りるとき、日本人は”開”のボタンを押して、『おります』と言います。ほんとうに礼儀正しいと思いました」。

同じものを見、同じものを食べているのに、感じ方が全然違っている。面白いものである。
先入観がないのはどちらであろうか。。。

行知学院(私学)3年のKさんがあるコンクールの応募作文を書いてきた。
素晴らしい内容だと思う。中国で日本語を学ぶ学生が、大きなプレッシャーにさらされながら、けなげに頑張っているかが分かると思う。そして彼女の冷静な分析にも驚かされる。

彼女は、成績が優秀で、本来は留学できるはずだったが、父親が頑固な反日で行けなかった学生だ。
見かねた中国人の担任教師が父親に電話して説得したが、それでも言うことを聞かなかったという。
父親は小学校を2年間しか行っていないから反日は教育の結果ではない。ちなみにここまでする中国の先生は珍しいだろうと思う。この学校の先生方は学生に親切で優しい方が多い。

以下はKさんの作文。(原文のまま、指導も訂正も一切していない)

「最も中日両国の青年交流を障害するのは世論じゃないかと私は思う。
 「あんたに日本に行かされてたまるものか」。これは、私が日本留学の件について、父と相談した時受けられた答えだった。私自身には、日本にかなり好意を抱いている。最初はあまり日本に興味を持っていないが、日本語の勉強につれて、日本という国を深く理解し、段々好きになっていた。日本語学部にはいってから、結構ひどい目に会ったのだ。父に理解してもらえなかったし、四歳年上の兄にまで「売国奴」と呼ばれたこともあった。兄は冗談のつもりで言ったのはよく知っていたが、その言葉にきっと本気の部分も含んでいるだろう。
 私はちょっと考えてみた。父も兄もただ世論の力に逆らえないじゃないか、と。その世論に逆らえない父と兄は世論の一部になり、その力をより一層強めるだろう。
 私の知っている限りでは、20代の若者は本気で日本を憎んだり恨んだりしている人はあまり多くではないが、日本のマイナス情報が出るたび一番過激行しやすいのも世代だ。日本のアニメを見ながらも、日本の悪口を言う。日本人の丁寧さに尊敬しつつも、日本人はいい人だと認めない。つまり素直ではないということなのだ。皆と逆の意見を出せば、攻撃の対象になりやすいから、その場の空気を読んで、不本意でも日本を拒絶する。
 小学校から受けた「歴史の恥を銘記せよ」という観念、テレビで絶たなく放送された抗日戦争のドラマ、上の世代の深い執念。それらは世論を作り出した。そして、今の若者を戸惑わせた。真の日本を見ずに、誰かに作り出された日本を仮想の敵とする人は少なくないだろう。同時に中国を誤解している日本の若者も、多分、本当の中国を見ていない。
 日本のすべてを考えずに拒否する若者がいれば、日本のすべてを考えず受け入れる若者もいる。自分の国に不満を抱え、病態に日本のポップカチャーを憧れ、非現実のものに耽る人々はきっといつか幻の日本から目を覚めすだろう。
 この数年、中日両国の青年交流はいい方向に向かっている。若者たちは憎しみの束縛から解放しつつ、世論の力に耐えて、本当の日本と本当の中国を冷静に自分の目で確かめようとしている。
 日本語を勉強して間もなく3年、辛い思いが色々とあったが、一刻も後悔なんかしていない。いつの間にか、周りは日本と日本語に多かれ少なかれ興味を持っている人ばかりになっている。日本語のお陰で、沢山の人と出会い、友達になった。或は、私の影響で友達が日本偏見を打消ていくようになっている。それも、中日両国の青年交流はいい方向に向かっている証拠の一つだと思う。」
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6 コメント

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Unknown (chinamychina)
2015-04-12 14:05:08
いやー、素晴らしすぎる作文ですねぇ。100点満点ですよ。
Unknown (フラフラカモメ)
2015-04-13 19:00:33
お褒めの言葉、ありがとうございます。
学生に伝えます。
私の2年半の中では出会えなかった作文 (中寛信)
2015-04-14 09:58:46
 海南島です。すばらしい作文をありがとうございました。私の勤務校では出会ったことのない、これからも出会えないかも知れない、そのような作文でありました。まっすぐに自分が人生で向き合っている問題を表現しながらそれでいて力強い歩みを感じさせる、私自身に勇気を持たせる作文でありました。
 2年半では、と書きましたが、33年間の日本での教員生活でも出会えなかったじゃないか、と思いました。
 私はあと1年数ヶ月、中国に残ります。その確信も深まりました

Unknown (フラフラカモメ)
2015-04-17 10:54:42
コメントありがとうございます。
準備期間を与えた作文なので、よく考えて書いてきていると思います。内容はわたしが以前から聞いていたものです。学生の中には架空の話をでっちあげるのもいますが。(フィクションが入っても構わないという考え方が普通ですので注意が必要です。) 3学期間、作文を担当してやっとここまで書けるようになったかなと嬉しく思いましたが、それ以前に、本人が自由な発想力としっかりとした知性を根底に持っているからでしょう。これからも応援してやりたい学生の一人です。
Unknown (麗蘭)
2015-04-30 13:42:26
こんにちは。お久しぶりです。

 Kさんの作文、私も感心しながら読ませてもらいました。素晴らしいですね……。作文の指導をなさった濱田さんも嬉しく思われたことでしょう。Kさんの作文を読ませてくださりありがとうございました。

 今年から日本の大学で日本語領域の講義を受け持っている若い友人がいます。
最近は、日本の大学で日本人の大学生の日本語能力をもう少し高めようと「日本語表現法」「日本語研究」などの名目で講義を開講している大学が多いのだそうです。

友人は、最初の授業の時に試しに作文を書かせたそうですが、原稿用紙の使い方やその文章力、内容に愕然としたそうです。

Kさんの作文を読みながらその話を思い出しました。私も濱田さんと共にこの学生、そして日本語を勉強している学生さんたちををそっと応援したいと思います。
Unknown (ふらふらかもめ)
2015-05-04 01:02:22
コメントありがとうございます。内容について全然指導をしていないので、この作文はKさんの感性と表現力のたまものです。日本語のエラーはわたしの責任ですが。
先学期、日本の高校生と文通させてみましたが、日本からの返事を読むと、軽いタッチで崩して書くのは上手いですが、しっかりした日本語で表現しているものが少なくて心配になったことも事実です。文法的間違いはあるもの、一部の中国人学生の方がきちんとした日本語が書けているような気がします。応援ぜひよろしくお願いします。

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