あした来る彼女(2) - 魂の労働

2006年03月16日 | Weblog
私自身はあまり実感はないが、景気が回復基調であると言われる。比例して主要企業の今年の新卒の就職内定者数が上向き、来年の採用予定者数も軒並み向上している。しかし、98年の不況からあまりにも時が経ちすぎた。この国の破壊された労働環境や雇用情勢は1年や2年、少しばかり持ち直しても正常な状態に戻るには倍以上の時間がかかるし、戻らない可能性もある。この10年近くでフリーターは400万人以上になり、非正規雇用者は爆発的に増えた。ニートや引きこもりも社会の底に滞留している。自殺者の数も3万人を越えて7年になる。劇的に減ることはないだろう。政府や財界は表面的な数字を取り上げて、景気回復を喧伝しているが、新自由主義下の景気回復は雇用なき回復であったり、雇用の質が劣悪化する現象を伴うことは80年代の米国や英国で既に実証済みだ。このまま雇用に関する数字の上辺だけが改善すると、これまでに労働市場に上手く入れなかった人々が忘れ去られるかもしれない。労働環境に関して比較的恵まれた大企業に属する人や公務員とそれ以外の人々との所得格差は増々開くだろう。その犠牲のもとでGDPの数字だけは取り繕って、かつての米国や英国のように先進国の体面だけは保つだろう。実は日本の場合、米国や英国より状況は悪くなるかもしれない。なぜなら、両国は企業の採用に原則として年齢制限は設けられていないし、違反すれば裁判にだってなる。日本では企業の努力目標でしかなく罰則もない。積極的に今まで非正規で働いていた人を正規に雇用しようとする企業など殆どないだろう。そうして正規の労働現場から一度はじかれた人間は、希望まで失くしていく。 
 
 もう平成18年になってしまった。
 年号で意識したことがなかった。
 ぼんやりしている間にもうこんなに経ってしまった。

 元気になったらオランダについて調べたい。
 オランダは安楽死が合法化されているのだ。
 いきなり日本から行って死なせてほしいと切り出しても
 そうやすやすと事が運ぶはずもないので、詳しく知りたい。

 安楽に死にたいのではなくて、確実に世を去りたいのだ。
 ちゃんと認められて手続を踏んで。
 たぶんオランダの安楽死制度はそういう生やさしいものではないだろう。
 オランダに頼る心を断ち切りたい。

 もしオランダでそんなに親切なら、
 世界中のめんどくさがりの人が大量にオランダに殺到して、
 オランダはほかの国からずいぶん非難されるだろう。
 とっくにみんなにそういう国として認知されているはずだ。

 いまそうなっていないのはなぜなのだろう。
 きっと基準がものすごく厳しいのだ。
 日本は労働力にならない人をじわじわいづらくさせるより、
 安楽死を合法化すればよいのだ。
 その際にお金をたくさんとるようにすれば国庫が潤うだろう。
          (あした来る彼女の3月12日の日記より)

働くことを欲して、働けずここまで自分を追い込んでいる人が存在する。
真面目過ぎて、誠実に生きようとし過ぎて現実の労働の現場よりきついきつい魂の労働に苦しんでいる人が私の目の前にいる。
誰が悪いのか。政治家か。企業か。私か。君か。
涙が出てくる。いっそ作り話ならいいのに。