とある喫茶店にて。
ウエイトレス
「じゃ 今日から働いていただきます。
ええと・・聞いてると思うけど
あなたの出勤日は
金・土・日 とっても忙しい曜日なんで
とにかく まずは ミスのない接客でお願いしますよ。」
泉ポンコ
「任せてください。
私 これでも 少し前までは
料理教室の先生してましたから。」
ウエイトレス
「そんなの 何の役にも立ちませんよ!
この喫茶店はたくさんのお客様が
入れ替わり立ち代わりの忙しい店ですから
まずは テキパキとした接客を心掛けてくださいね。」
泉ポンコ
「私 いつごろから 厨房で
料理ができるのかしら?」
ウエイトレス
「ですから~ そんなことより~
入ったばっかりなんですから~
まずは 接客を覚えることが大事だって
言ってるでしょうが!!」
泉ポンコ
「あら やだ!
料理教室にいた助手の女の子みたいに
切れやすいタイプ? あなた。」
ウエイトレス
「もう・・・そうじゃなくて
この店の客層とか 混む時間帯とか
そんなことをしっかり覚えてから
そのあんたの希望とやらの
厨房に進むってことなんだよ!
店長がそう言ってんだよ!」
泉ポンコ
「ま~・・乱暴な言葉使い。
それじゃあね お嫁にいけないわよ~~うふふふ。」
ウエイトレス
「むかつく・・・・
つべこべ言わずにやんなさいよ!」
泉ポンコ
「はいはいはいは~いのはい。
で? どうしろってことなのかしら?」
ウエイトレス
「まず お客さんが入ってくる・・」
泉ポンコ
「はいはいはい そりゃ入ってくるでしょう・・・
入り口が開いてれば。 で?」
ウエイトレス
「いらっしゃいませ。空いてるお席にどうぞ。と言う」
泉ポンコ
「あら いやだ お客さんは空いてない席には
座らないでしょう?」
ウエイトレス
「ば~か! 空いてる席なら
どこでもいいですよって
お客さんに自由な選択をさせるんじゃないの!
あんただって どっかお店に入ってさ
こちらのお席どうぞ・・なんて
勝手に決められるのいやでしょ?」
泉ポンコ
「あら 私 そっちのほうが好き。
どこに座ろうか・・なんて迷わなくていいじゃない?」
ウエイトレス
「この店はね 自由に座らせるんだよ!!
わかった??」
泉ポンコ
「はいはいはい。・・・で?座ったら?」
ウエイトレス
「まずは お客さんの人数を確認して
ほら このコップに水を入れて
お水とその横のおしぼりを人数分だけ
テーブルにもって行く・・
これくらいは わかるよね?」
泉ポンコ
「はいはいはい。
子供じゃあるまいし わかりますわ。・・・・で?」
ウエイトレス
「いらっしゃいませ。
こちらにメニューがございます。
お決まりになりましたらお呼びください。」
泉ポンコ
「決まらなかったらどうするのかしら・・ね。」
ウエイトレス
「あんたね
何かしら 飲んだり食ったりしようって気になったからこそ
この喫茶店に来るんだよ。お客さんっていうのは!!」
泉ポンコ
「あら・・・・私なんか・・何となく座りたい
できれば 真水で充分・・って感じのときもあるのよ。
そんなお客様も いるんじゃないかしらあ??」
ウエイトレス
「超・・・ムカツク・・・・グググ」
泉ポンコ
「あら 腸が悪いの?吐き気も?
少し 横になるといいのよ そんなときは・・ね?」
ウエイトレス
「・・・・・・ク~っ ・・・・ウ~。。。ググ。
どこまで 説明したっけ・・」
泉ポンコ
「あ~ 真水問題のところからかしら?」
ウエイトレス
「とにかくね! ここのお客さんは
必ず! 何か! 頼むんだよ!」
泉ポンコ
「まあ~ そうなの?」
ウエイトレス
「お客さんがね メニュー見ながら
注文するから
必ず メモを取りながら
最後に復唱しなきゃだめなんだから!
わかった?」
泉ポンコ
「そうだわ。あなたの言葉で思い出したのよ 今。
私ね 高校時代コーラス部でね・・・」
ウエイトレス
「そりゃ 合唱だろう!
そうじゃなくて復唱! お客さんの注文したメニューを
間違えないように 繰り返して言うんだよ!」
泉ポンコ
「あなたって 根っからの乱暴者ね。
よく お客様商売が出来るわよね・・不思議発見!だわ。」
ウエイトレス
「(無視)・・・それからね
ランチセットには飲み物が付くからね
お飲み物は先にお持ちしますか?って聞くのも忘れちゃダメ!」
泉ポンコ
「聞くのを忘れたらどうするのかしら?」
ウエイトレス
「聞きにいけよ! 」
泉ポンコ
「頭いい!!」
ウエイトレス
「でね その注文の紙・・
ほら この紙に書いて 厨房に渡す。
コーヒーやジュースの飲み物は
私たちが 作るんだからね。
あんたさ コーヒーメーカーとか
使ったことあんの? すぐ出来るの?」
泉ポンコ
「ま~・・・私 料理教室をやってたのよ。
コーヒーなんか・・・関係ないわ。」
ウエイトレス
「ふ~・・・・ウザイ・・・」
泉ポンコ
「惣菜なら 得意よ。」
ウエイトレス
「ソウザイじゃなくて・・・ウザイっていったんだよ!」
泉ポンコ
「ソがぬけちゃったのね。ダメじゃないの。」
ウエイトレス
「(無視)あとでコーヒーメーカーの使い方
特訓するからね!ちゃんと覚えてよ!」
泉ポンコ
「はいはいはいはい。そうしましょう。」
ウエイトレス
「注文の品 お客さんのところに運び終わったら
これで 間違いございませんか?
ご注文の品 全部 揃いましたか? って
ちゃ~んと確認してから 伝票を渡すのよ!
ここは 最も大切なポイントなんだから!」
泉ポンコ
「誰に渡すのかしら? 3人とかだったら迷うわねえ」
ウエイトレス
「一番 年食った人の前に置けばいいんだよ!」
泉ポンコ
「じゃあ じゃあ・・例えばよ
そうだわねえ・・中年のご夫婦と
もう やっと歩けるくらいのおばあちゃんの場合は
どうなのかしら・・
やっぱり 一番年上のおばあちゃんに伝票を?」
ウエイトレス
「あんた それはね ヘリクツっていうんだよ!」
泉ポンコ
「そうだわ! それで思い出したんだけど
クツはどうするのかしら・・
サンダルかなにか履くの?
それとも ピンヒール?フクスケのスニーカー?」
ウエイトレス
「サンダルが支給されるから心配するな!」
泉ポンコ
「まあ・・なんだか頼もしいわ・・心配するな なんて。
久しぶりに聞いたわ。」
ウエイトレス
「とにかくね。もうすぐ
ほかのウエイトレスも 出勤してくるから
今日は 他のウエイトレスの動きかた
しゃべり方 後片付けのやり方を
しっかり観察して早く覚えてちょうだいよ!」
泉ポンコ
「そうよね。 えらそうに
あなたから なんだかんだ言われるより
実際に見て覚える・・・これが一番なのよね。」
ウエイトレス
「ふ~・・・ったく。 でも・・・あんた・・いい年して
なんで ウエイトレスに?」
泉ポンコ
「ずっと経営してたお料理教室が
時代の波についてゆけず・・・閉店。
助手の女の子も
ひどい捨てゼリフを残して去っていったのよ。
でもね・・・やはり・・・食べるのが好きなの。
ちょうど このお店の前を通りかかったら
ウエイトレス募集 しかも年齢制限が書かれてないじゃない?
だから・・事務所に電話して・・・」
ウエイトレス
「・・・でも よく 店長が雇ったわねえ
あんたのこと。」
泉ポンコ
「あ・・・・・ひとつ言い忘れてたわ アナタに。
あの店長ね・・・・実は・・
私の息子なのよ。内緒なんだけど。
気がつかなかった? 名前が 泉 湧く造
あなたに伝えるのが 遅すぎたかしら~?」
ウエイトレス
「・・・・・・・え?・・・・」
泉ポンコ
「気にしないで 気にしないで ねねね
気にしないでね。
あなたのそのデカイ態度は 息子には
言わないから・・・たぶん。あるいは おそらく。」
ウエイトレス
「もう~~っ!!ひど~い!
やめてやる!!フン!」
ドタドタ・バタバタ・・・バタン・キュー~。
泉ポンコ
「あら~・・・一人辞めると
私 新人なのに 忙しくなっちゃうわ。
今日から コーヒーメーカーの猛練習しなくちゃ。」
・・・・・・
ほかのウエイトレスたち 出勤。
「あれ? 先輩は? まだ来てないの?
おばさん ここで 何してんですか?」
泉ポンコ
「あ 今日から ここでアルバイトさせていただく
泉ポンコです。 よろしくお願いするわね。」
「あの~ 山崎先輩は?」
泉ポンコ
「なんだか・・この喫茶店に不満があるらしく
今日を限りに辞めるんですって。ねえ~
どうされたのかしら ねえ~。」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
ドタバタ・・・ドドンガチャ。
さっきのウエイトレス
「ちょっと! おばはん!
さっきの話しの流れでうっかり騙されるとこだったわよ!
うちの店長ね!よ~く考えてみたら
泉 湧く造じゃなくて
原野 達三だったわよ! もう!
語呂が似てるだけで
全然違う名前じゃないの!
アブナカッタ~!! 主任の職を失うとこだったよ。」
泉ポンコ
「あらら~ 店長のお名前
これで間違いございませんか?って
確認するのを忘れてしまったのね。
たしか さっき 復唱と確認が
最も大切なポイントだって言ってたわね。
まだまだ 甘いのねえ。
あなたと一緒にお仕事は・・無理みたい。
でも おかげさまで
今日も 退屈な時間を過ごさずに済んだわ。
幸楽びよりな 一日だった。
明日はね・・
回転寿司 「グルリンコ」の面接なの。
毎日毎日 目が回りそう!
面接三昧で。
明日で ちょうど50軒目。
なんだか 達成感さえ感じるの。
もうね ここまでくれば
面接も スポーツなのよ。
料理の腕を発揮できる場所を探して
泉 ポンコ まだまだ頑張ります!」
・・・・・・・
・・・・・・・・・・シ~ン。
泉 ポンコ
「あれ~? どうしたのかしら。
誰も いなく なった・・みたいね。」
こうして
泉ポンコの旅は 続いていくのだった。
end