化粧品店にて。
店員 「いらっしゃいませ。」
トメ 「はい。 いらっしゃいました。」
店員 「何を お探しですか?」
トメ 「5年前に出て行った亭主をね~。」
店員 「あ~・・・それは今ちょっと
在庫しておりませんが・・(ナニナニナニ!このばあさん)」
トメ 「冗談だよ!冗談!
真に受けるんじゃないよん。
このトメが探しておるのはね
5年前のお肌だよん!」
店員 「え? お肌?(ナンダナンダナンダ!このばあさん)
どういうことですか?」
トメ 「決まっておるじゃろ!このトメくんの
5年前のお肌だよ~!
テレビで よ~く宣伝しとるじゃろ?
ほれほれ 化粧品のコマーシャルでさ
マイナス5歳肌!」
店員 「あら~・・あれはですね あくまでも
メイクで そういう風に見えるってことで
それに・・・お客様・・・マイナス5歳しても・・
たいして・・・お変わりないと・・思いますけど・・(フ~。)」
トメ 「置いてないの?うん?」
店員 「はい・・・今 在庫しておりません(あたりまえだろが!)」
トメ 「お取り寄せしてもらえるじゃろか?」
店員 「問屋さんにもないと思いますけど・・・
(どうなってんの?このばあさん)」
トメ 「今すぐ 問い合わせておくれよ!」
店員 「今日は 日曜日なんで
問屋さん お休みなんですよ~(バ~カ)」
トメ 「んま~・・・やる気のない問屋だね~・・
こっちは やる気まんまんで来ておるのに~!
客の要望にはすっ飛んで来なくちゃあ あきまへん!
・・・あら?・・・・おや? はて・・・?
さっきから どうも
目に着いてしょうがないんだけんどね。
在庫ありません!って左右に振るそのお手々!
ああた! そのツメ どうしたのさ!
ゴミが付いておるよ!てんこ盛りで!
客商売でだな しか~も! 化粧品店でだよ
ゴミ付きツメで こんな上品な客に応対するなんざ~
許されんよ!!」
店員 「(プッ!) お客様・・・
これは ゴミじゃないんですよ~!
ネイルアートといって
ツメにいろんなデコレーションをして
華やかな雰囲気を出す
今 最先端のお洒落れなんです。
ネイルアートって言うんですよ。(ア~ア~・・)」
トメ 「ええ~っ?? お洒落れとな?
その固まったゴミが? ウッソ~~も ほどほどにしな!」
店員 「あらら~・・・・
ご存知ない・・やはり・・時代遅れなんですね~お気の毒・・」
トメ 「冗談じゃあ ないよん!
いつなんどきでも 時代に敏感なのが
このトメの生きる道。
そ~んな ゴミつきツメが流行っておるなんて嘘だろ?
ああたの独りよがりじゃないんかい?」
店員 「あの・・・おばあちゃんね
その首からぶら下げてる真っ赤なフレームのメガネをね
ちゃんと掛けてしっかり見てくださいよ。ホラ!」
トメ 「んま~! ああた!目上の者に命令する気かい?
こっちはね! ゴミか飾りかぐらいは
メガネ掛けんでもわかるよ!うるさいね!
そのゴミつきツメをば・・
じっくりとメガネを掛けて見ろってか?
あつかましい 女だね~ったく~・・・
どれどれどれどれ・・・ドレミファソラティド~~♪♪
うん? うん? うううううん? マンボ♪
ぎゃぎゃぎゃ~!! ひゃ~!!
ツメの先に お星さまが~!!キンキラリン!
宝石が~~!!コンコロリン!
おとぎの国が~!!ケンケレケン!!
あじゃじゃじゃ~! 何なのさ!何なのさ!
美くしか~~!!何色も入り乱れ~
まるで・・・カラフル絵画のようでごじゃる・・・・」
店員 「でしょ でしょ?きれいデショ?」
トメ 「んま~・・・驚きだよ~!
ツメは 切る! はがす! とぐ! かむ!引っ掻く!
どんなに頑張ってもマニュキアじゃないか!
それが ああた! 盛る?おツメさんの立体化?
しかも! てんこ盛り? ひゃ~! 凄か~!!」
店員 「時代は進んでるんですよ~おばあちゃん」
トメ 「・・・・・思えば・・・トメくん・・・
遠くにきたもんだ。あ ヨイショ。
時代に追いつくには 四方 八方 十六方見渡しておらんと
・・・イカンノダネ~・・・グス。情けないね~グス。」
店員 「ま~・・・おばあちゃん・・大丈夫ですよ~・・・
おばあちゃんの若い頃には
考えられない洒落れですからね~。同情します。」
トメ 「でね。 今ね すご~くいいこと思いついたんだよ!
英訳するとね グッド・アイディア!又はナイス・アイディア!
その・・・ネイル・アート?・・・っていうやつね
このトメくんにもね・・・エヘ~・・
してもらいたいな~ エヘ~・・・
マイナス5歳肌の在庫がないんだからさ
その代わりにだな ま 5本とは言わずとも
1本だけでいいからさ~・・・エヘ~・・・
できればだな 面積の広い親指をね ちょいとね
キンキラリンの指にね~ してもらえるとね~・・
ウホホ・・・助かるんだよね~」
店員 「・・・・・(ゲッ!ちょっと同情したら調子に乗りやがって)
あのね おばあちゃん これはね~
ネイリストっていう専門の人がいてね~
そのお店でやってもらうんですよ~
お金を払ってね。
ここでは ちょっと出来ないんですよ~」
トメ 「そこを なんとか やっとくれよ!」
店員 「そう言われましても 材料がないし・・
私 ネイリストでもないですし~」
とにかくですね ここでは無理ですから
ネイルショップに行ってください!(勘弁してほしいよ!)」
トメ 「んま~! 融通の利かない女だね~!
こんなばあ様が 流行の最先端にかじり付こう!
っていうんだからさ!
百円ショップにでも行って!ビーズでも買ってきて!
のりでもアロンアルファでもいいからさ!くっ付けてさ!
試してみよう!っていう情熱はないんか!!え~っ??
お客様を満足させようっていう
優しい心はないんか!え~っ?
ああ~・・このおばあちゃまの親指に
美しい絵画を描きたい~・・そんなフツフツと湧き上がる
向上心は ないんか! え~っ???」
店員 「ないですね」
トメ 「あじゃ~! その言い訳なしの返事!
わかったよ! 自分でやりゃあ いいんだろ?
材料さえありゃあ この指にだな
富士山だって 飛鳥山の桜だって描けるってことだな。」
店員 「そういうことです。難しいですよ!」
トメ 「んま~・・愛想のない女だね~。
難しい・・・ああ~その挑戦的な言い方に
たった今! 芸術製作の意欲 湧きにけり!
・・・・ちょいと! よ~くその指見せてみな!
なんとしても! 自分でやってみるぞ~!!
・・・ほほ~・・なるのほど・・その星型をしとる
まばゆいばかりの光を放つ石が気になるな・・・」
店員 「これは スワロフスキーという 石ですよ!
ジェルでくっ付けて・・・ドライヤーで
さっと乾かし・・・・重ねて置いていって・・・
さらに・・・・・・季節ごとのイメージ・・・・シール・・・・
・・・・・・・・配色・・・etc......」
トメ 「んもうね~ わかったよん。グダグダ説明しなくともさ~。
ああたのね ネイルアートへの熱い思いはご納得しました!
とにかくね 立ち話もなんだからさ~
そこの椅子に すわろふすきー!!!
お茶でも一杯入れとくれよ!」
end