ホストクラブにて。
客
「あれ? 今日は 淳くん いないの?」
ホスト
「すみません。
本日は ちょっと急用で。」
客
「淳くんに会いに
わざわざお店はねてから寄ったのに。
じゃあ もう帰ろうかしら。
あの子いないと つまんな~い!!」
ホスト
「あの・・・今日は代わりに・・新人が入っておりまして・・」
客
「そうなの?・・・・・どんな子?
イケメン?」
ホスト
「ま レアな好みによっては・・イケメンかと・・」
客
「ちょっと~! 顔だけでも見せてよ。
どこどこどこどこ?どの子?」
ホスト
「あ・・の・・柱の横に立っております・・・」
客
「あれって 置物じゃないの?
趣味の悪い彫刻に見えるよ。
テカテカ光ってるよ。」
ホスト
「いえ・・動きます。
置物ではなく・・生き物です。
あの光は頭から発しております。」
客
「ちょっと~
あんなおっさん どっから見つけてきたの?
この店 そろそろ やばいんじゃない?」
ホスト
「・・ここだけの話ですが・・あの人
淳くんのお父さんなんですヨ。」
客
「え~~っ? なんでまた お父さんが・・ホストに
どういうこと? 信じらんない!」
ホスト
「今日 急に 淳から休むって連絡入って
社長が怒ったんですよ。
そしたら 淳の親父さんが電話に出て
俺が代理で行くと・・なかば強引に・・」
客
「あのお父さん・・幾つ?」
ホスト
「戦後の生まれだと・・豪語してます」
客
「バカじゃないの?
ここの客は み~んな
若くてかっこいい
イケメンに会いたくて来てるのに
おっさんが相手?
さっきまで働いてたキャバクラの客と
同じジャン。」
ホスト
「ただ・・なんせ淳のお父さんですから
気に入ってもらうと・・何かと・・
都合がいいんじゃないですか?」
客
「・・・・そう言われれば・・
確かに・・淳くんと結婚したい・・なんて
ちょっとだけ考えてるし、
そうなると あのおっさんが
義理のお父さんってことになるよね。
ジャケンには出来ないか・・
いいわ! 気に入ってもらっとかないとね
将来のためにね!!
指名するわ!」
ホスト
「アリガトゴザイマス!
定吉さ~ん 指名はいりました~~♪」
・・・・・・・・「ハイヨっ」
定吉 登場
「よいこらしょっと。
「あんたが指名? 俺を?
あんがとよ。
ああ~ 俺もついにこの年で
ホストデビューか・・・感慨無量・・
一度はやってみたかった・・
長い道のりだったのだったのだ。」
客
「あの・・・・定吉さんていうんですか?
お名前。」
定吉
「サーダーと呼んでくれ!」
客
「プッ!沖縄のお菓子みたい」
定吉
「あれは
サーター・アンダギー。
俺は濁点が入ってる。一緒にしないでくれ。」
客
「そんなことより
おじさん 淳くんのお父さんなんですって?」
定吉
「違うといえば・・嘘になる。
そうだと言えば・・ミツヤサイダー。」
客
「(典型的オヤジギャグ・・・だな)
あの・・・淳くん今日どうしちゃったんですかあ?」
定吉
「ああ あいつね 今夜子供が生まれるってんで
病院に行ってんだよ。何か?」
客
「え~~~~っっっ???
うっそ~~~っ!
どど独身じゃなかったの~~っ?」
定吉
「あいつね 二人目なんだよ。
上はね 女の子。不細工。
今度は どうも男の子らしいよ。
一姫二太郎ってか?ガハハハ~」
客
「くそ~・・騙された・・
あなたは僕の理想のタイプ。
結婚するならあなたみたいな人と・・
是非・・なんて言ってたんだよ 淳の奴」
定吉
「あら~ そんなことを?
あいつ 小さいときから嘘つきだったからなあ。
親として謝るよ ペコリン。」
客
「淳のためにと思って
この店で ドンペリなんか入れちゃって・・
・・・・私って ばかみたい・・グスっ・・・泣けてきた・・」
定吉
「ドンブリ? 俺ね どっちかというと
吉野家より 松家の牛丼が好きだな。
姉ちゃんはどっちかな?
。。なるほど。
・・・こうしてホストと客の会話が続いてくんだな・・
ちょっとした言葉を風船のようにふくらます
・・淳の口癖だよ。
淳のやつ なかなかやるじゃないか。
我が息子ながらたいしたもんだ。」
客
「もう~~~っ! ばかじゃないの!おっさん!
今 話してんのはね!
淳が独身で あたしのこと好いてくれてるって思って
高~い飲み物頼んだり
ブルガリの時計買ってあげたり・・グスン・・」
定吉
「あれ 姉ちゃん サムガリなんだ。
今ね 赤外線下着てえのがあってね
あのももひきは暖かい。
サーダーご推薦だぜ。
ユウ!使っちゃいなタウン。
・・・ああ こうして会話が
ひとつの言葉から風船のように
ふくらんでく・・・・淳よ・・
父ちゃん やったぜ。(涙)」
客
「・・・今・・ざっと計算したら・・
淳につぎ込んだお金・・
400万以上だ・・・」
定吉
「400万?
中途半端だな。
500万のほうが覚えやすい気がするな オレ。」
客
「そうだ! あんた 親なんだから
お金返してよ! 淳につぎ込んだ分!
騙されてたんだからさ! 訴えるわよ!」
定吉
「姉ちゃん オレもね 結構ウタエルヨ。
特にね サブちゃん、鳥羽一郎なんて
得意なんだよ。」
客
「ちょっと~!!
誰か~~!!
このおっさん なんとかして~~!!」
ホスト
「お客様 何か・・」
客
「このおっさん ひどすぎるよ・・
淳くんのお父さんっていうから
我慢して聞いてりゃあ
淳くんは二人の子持ちっていうじゃない!。
結婚をちらつかせて
あたし 淳くんに400万も貢いだのにい~
ひど過ぎる・・・・ウワ~ン・・・泣けるよ~・・」
ホスト
「あの お客様・・
この定吉さん
淳の父親っていうのは
本当ですが
あとは 全部うそですよ。
淳はまだ 23歳。
結婚してるわけありませんよ。
安心してください。」
客
「え~っ?
おっさん ほんと?
今話してたこと全部作り話?
も~・・・やだあ~!
ガハハハ~ 笑っちゃうよ。」
定吉
「あれ ねえちゃん 本気にしちまった?」
客
「あ~~ よかった・・・
ああ~ 気分晴れ晴れ~!
な~んか パ~ッとはじけたい気分!
よ~し! ドンペリ一本 いっちゃおうかな!」
ホスト
「アリガトゴザイマス!
ドンペリ一本 定吉さんに入りま~す!」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
定吉。55歳。
ホスト初日の売り上げ
120万。気分上々。
end