崖っぷちロー

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ゲーム実況プレイ動画における「実況」の意味

2009-04-29 00:00:32 | ニコニコ動画・ネットとか
通常、私たちはゲーム実況プレイ動画という名称について疑問を持つことはないでしょう。しかし、もう半年ほど前ですが、某掲示板において「実況プレイ動画というけど『実況』していないじゃないか」という旨の書き込みがあった。
 (そんなに前なのは、このエントリを書く機会がなかなかなかったから)

どうやら、このレスを書いた人は、野球中継などの実況と比べているようだ。
なるほど、たしかに野球中継の実況と聞いて私たちが一般にイメージするようなことをしている人は少ない。
 (全く居ない訳ではない。過去には、競馬実況を模した動画を配信している方もいらっしゃった。)

(1)スポーツの一般的な実況で行われていること
 そこで、まず、スポーツ中継等で行われている一般的な「実況」について考える必要がある。

 辞書的には「実況」とは現実のありのままの姿。実際の状況。を言うらしい。これは対象そのものを指しているだろう。今問題にしているものとはすこしズレるようだ。よりぴったりくるのは、「実況放送」の辞書的定義だろう。
 「実況放送」=実際の状況を、その場から直接ラジオやテレビで放送すること。

 そして、この辞書的意味での「実況」こそ、スポーツ番組等で主に行われている「実況」だろう。例えば野球中継にしても、実況者が話す内容というのは、現実に起こっている事態をそのまま視聴者に伝えるものである。誰々がバッターボックスに入っただの、第○級を投げただの。 
 
 ラジオにおける野球中継の実況においてもっとも明確に分かることだが、これらの「実況」というのは、音声によって特定の情報を他者に伝えること目的とするものである。
 この意味での「実況」の受け手は、その音声情報によって頭の中にその場面を思い浮かべることが可能となるし、この種の「実況」が行われているのは、そもそもそのようにして情景を思い浮かべさせるためでしょう。

 そうすると、辞書的意味における「実況」=スポーツ中継的「実況」というのは、情報伝達を目的としたものであると言えるでしょう。
 
 そして、このような意味における「実況」をしているゲーム実況プレイ動画は少ないというのは確かでしょう。その意味で、先に取り上げたレスの指摘は当たっている。

(2)ゲーム実況プレイ動画における実況
 では、一般のゲーム実況プレイ動画で行われている「実況」とはなんなのか?それを考えるには、そもそもゲーム実況プレイ動画とは何かというのを考える必要がありそうである。

 ゲーム実況プレイ動画の発展2でも少し言及したように、ゲームをしている様子を他人に見せるというのは何も珍しいことではない。子どもたちが集まってゲームをするというのは以前から日常的に行われていたものである。このようなプレイ環境にゲーム実況プレイ動画の源を求めることができるだろう。

 そして、そこではもちろんプレイヤーも見ている者もワイワイおしゃべりをするのが普通でしょう。この周りにいる友人たちと交わす会話というものは、例えば「ボス倒したぜ!」というような報告をすることこそあれ、決して「○○が敵にダメージを与えたよ」というような細かな情報を逐次伝えることを目的としたものではない。

 そこでは他愛のないおしゃべりが行われているのであり、その話題がゲーム内容についてのものである場合もあれば、学校での出来事の場合もある。はたまた今日の晩ご飯について話す場合もある。
 
 つまり、私たちはゲームをしながら他人とのコミュニケーションを楽しんでいたのであり、けっして情報伝達目的で話していたのではなかった。

 さて、このような原風景的なものにゲーム実況プレイ動画のルーツを求めるならば、そこで視聴者を念頭において行われるお喋りや発言というものも、コミュニケーション目的であるとは言えないだろうか。
 (動画それ自体のみを見れば単なるリアクションやつぶやきにすぎないと思えるものであっても、視聴者のリアクションやコメントが付けられることでコミュニケーションとして成立するだろう。)

 つまり、ゲーム実況プレイ動画における「実況」とは、コミュニケーション目的のものなのである。

(3)「実況」という名称
 さて、このように考えるとしても、では、なぜこれを「実況」と呼ぶのか。コミュニケーション目的のお喋りなら「雑談」と呼称してもいいのではないか?現に「雑談プレイ」などと自称する「ゲーム実況プレイ動画」も存在するのである。

 これを考えるに当たっても、やはりゲーム実況プレイ動画の沿革を遡る必要がある。
 ゲーム実況プレイ動画の発展で書いたように、現在のゲーム実況プレイ動画はピアキャストやVIP・何でも実況板での各配信に遡ることができるだろう。これは、誤解を恐れずにいうと、2ちゃんねる的文化に属するものとも言えるだろう。

 このように2ちゃんねるにまで遡って来たとき、同じく2ちゃんねるの文化である、テレビ番組の「実況」文化が頭の中に浮かび上がってくる。

 2ちゃんねるでは各テレビ局ごとに「実況板」が割り振られており、視聴者は放送されている番組を見ながらリアルタイムに感想などを書き込むのである。「キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!」などが古典的書き込みであろうか。

 そこでは、番組の内容などの情報を伝達する目的での書き込みはあまり見られない。もちろん、番組内に出てきた人物などを取り上げることもあるが(「幼女キター」など)、それは情報伝達の為と言うよりも、ネタとして消費するためである。時には、放送されている番組と全く異なる話題について話していることすらある。

 この実況板では、情報伝達目的での書き込みというのはほとんど見られず、むしろコミュニケーション目的やその他の雑多な書き込みが行われており、これらが総じて「実況」と称されているのである。
 
 これは、アニメ板におけるルールの中で表れる「実況」という単語の使い方を見ればより明確になる。アニメ板では実況が厳禁とされているが、そこで禁止される「実況」は「視聴しながら書き込む行為」と定義されている。ここではもはや書き込みの目的や内容については全く考慮されずに総称されているのである。

 これをゲーム実況プレイ動画に持ってくるならば、ゲーム画面を前にして喋る行為は、その目的や内容にかかわらず、「実況」と総称できることになる。
 (但し、なん実板では複雑なことになってしまう。

  動画等の配信者=「実況」者の行為について書き込む行為=「実況」となる。そこでは2つの異なる「実況」が存在するのである。)

 したがって、テレビを見ながら表現すること全てを「実況」と呼ぶ文化の下流で、ゲームを見ながら話すこと全てを「実況」と呼ぶ文化が出来たのではないかと考えることができる。とすると、ゲーム実況プレイ動画において行われているコミュニケーション目的での発言も、ゲームを見ながら話されるものである以上、「実況」と称されることになるのである。

(4)おわりに
 とはいえ、情報伝達目的とコミュニケーション目的は互いに排斥しあうものではない。スポーツ中継の実況者も雑談をするし、「実況者」も状況を適切に伝えようとすることは多々あるのである。
 
 さらに、「実況」として行われるものは、何もこの2種類に限られる訳ではない。

 いわゆる「解説動画」と呼ばれるものは、そのゲームの熟練者などがゲームのルールや戦略、勝ち方のコツなどをまさしく解説しているのであり、これはスポーツ中継における「解説」にあたるものである。このような解説も、ゲームを見ながらの表現であるから、「実況」と総称される中に含まれるのである。

 このように、ゲーム実況プレイ動画における「実況」は、コミュニケーション目的、情報伝達目的、解説目的などを含んだものなのである。

 さて、翻ってスポーツ中継の実況を考えると、実はこれも情報伝達目的だけではないのである。これら3者が融合しており、ただ、情報伝達目的が前面に出てきているというだけなのである。

(5)まとめ
 広義の「実況」=ゲームを見ながら表現すること全て
  ├狭義の「実況」=スポーツ中継的実況=情報伝達目的の表現
  ├コミュニケーション目的の表現 →ゲーム実況プレイ動画における「実況」の中心
  ├解説目的の表現
  └その他の表現


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