ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

『 も げ る ! 』

2020-08-15 15:02:01 | 出会い
 ▼ 今、伊達の小中学校は10日間程の夏休み中だ。
残念ながら、地域のラジオ体操はなくなった。
 夏祭りやサマーイベントも軒並み中止である。
日本中、どこも同じだろう。

 一つ一つの催しが、暮らしにメリハリをつけていた。
お盆の墓参りも同様だ。
 それらが全て、コロナでくるってしまった。

 世界が大きく変わる分岐点なのかも・・・。
「だから」と、「何かをどうかする」こともできやしない・・・。
 せめて、どんな想いで見聞きし、何を記憶に刻むか、
一人の目撃者として、気概だけは忘れないでいようと思う。

 さて、最近の私だが、やや調子がおかしい。
とにかく、『朝ラン』がダメだ。
 いつも、心が揺れる。

 2,3日おきに、5キロか10キロを走ってきた。
それが、危ういのだ。
 確かに、この1ヶ月程天候不順だった。
それだけが言い訳ではない。
 
 前夜、「明日は走ろう!」。
そう決めて、就寝する。
 ところが、その通りにことが進まない。

 目ざめても、その後のストレッチが済んでも、
まだ、ためらいが続く。
 「今日はやめにして、明日にしようか。」
そんな想いが、いつまでも巡る。 
 
 ようやく自分を励まして走りだしても、
2キロ付近までは,うつむいたまま走る。
 ようやく『朝ラン』が楽しくなるのは、
折り返しを過ぎてからだ。

 「何故だ?」。わかっている。
やはり目標が大事なのだ。
 例年なら、この時季は、
9月の『旭川ハーフマラソン』が意欲をかき立ててくれる。
 それがないのだ。

 それぞれの思いを持ってランナーが北都・旭川に集まる。
老若男女は違っても、みんな輝いて見える。
 その中の1人でいることが嬉しい。

 そして、自分のペースで1歩1歩進む。
みんな同じ方向を向いて、精一杯走る。
 私も一緒に頑張る。
義姉妹の声援にも助けられ、
矢っ張り、完走したくなる。

 そんなマラソン大会の楽しさを知った。
だから、『朝ラン』も続いてきた。

 「なのに!なのに!」なのだ。
どうも気乗りしない。
 「しかし・・、きっと・・、必ず・・、再び・・」。
いつかマラソン大会が開かれる。
 まだまだ先かも・・・。
それでも、『継続は力なり』だ。
 「老いてなどいられない!」。

 今は、大会にまつわる出会いをふり返り、
明日からの『朝ラン』のエネルギーにしよう。

 ▼ 総合体育館のトレーニング室が音頭をとり、
『スマイルジョグだて』と名づけたマラソン仲間ができた。
 最初の春、『伊達ハーフマラソン』に向けて、練習会があった。

 予定外だったが、若い連中に混じって、
本番同様のハーフコースを走ることになってしまった。

 当然、私はスローペースのグループだ。 
経験豊富な女性ランナーがコーチになり、
4人で走った。
 
 前後2人ずつ、並走した。
私と30歳代らしい女性が後方についた。

 1キロ7分少々のラップを正確に刻み、コーチは
私たちをリードした。
 
 坂道にかかると上りや下りの走法、
走行中に水を呑み込むコツなど、
走りながらコーチから教えてもらった。
 その教えは、今も役立っている

 さて、5キロを残した辺りで、コーチが言った。
「今日は別ですが、本番はここからペースを少し上げます。
 もうみんなバテバテでしょう。
その時に、頑張って数人を追い抜くの。
 すると力が湧いてきて、
ゴールまでいいペースで走り切れるから・・。」 

 感心して聞いていた私の横で、
そこまで一緒に走ってきた彼女が、
荒い息のまま、初めて声を上げた。   

 「私、抜かれてガックリする方だった。
今度は、絶対そうする。」
 前方を見たまま、
晴れ晴れとした顔をした。

 しかし、その後2回も、
それをやってのけるとは思いもしなかった。

 ▼ その日から2週間後が、本番だった。
全道から健脚が伊達に集まった。
 活気があった。

 コーチからのアドバイスをすっかり忘れ、
ただただ完走だけを目指した。
 だから、1キロごとのペースを守って走ることを心がけた。

 伊達ハーフマラソンコースは、10キロから15キロまでが上りだ。
次第に走力が落ちた。
 上りが終わり、1キロが過ぎても、
ペースは遅いままで戻らなかった。
 周りのランナーも、同じようにバテバテで走っていた。

 その時だ。
「ワァ、追いついた!」。
 張りのある女性の声が後ろから聞こえた。
2週間前、私と並んで走った彼女だった。

 その走りには勢いがあった。
荒い息のまま、彼女は言った。
 「もう、足、もげそう。
でも、何人も抜いてきた。
 最後まで頑張れそう。」

 私の返答など聞くこともなく、
彼女は走り去った。

 ゴール後、会場に彼女がいた。
自己ベストだったと明るかった。
 「足、もげると思ったけど、
最後を頑張れたから・・」。

 相変わらず私は、終盤に失速したことを悔いていた。

 ▼ 同じ年の5月、洞爺湖マラソン大会で、
初めてフルマラソンに挑戦した。
 彼女も、初めてエントリーしたと聞いていた。

 31キロ過ぎの苦境を乗り越え、
ただただ1歩又1歩とゴールに向かって、粘った。

 私の限界が間近だと思いつつ、
『ゴールまで3キロ』の標示を見た。
 ここまで39キロも走ってきたのに、
「もう無理かも」と弱気になった。
 その時だった。

 「ワァ、追いついた!」。
張りのある女性の声が、後ろから届いた。
 聞き覚えがあった。

 「1歩1歩足を前へ!」。
それだけが全てだった私に、向けられた弾んだ声だ。
 嬉しかった。

 彼女は私と並ぶと、すぐに言った。
「もう、足、もげそう。でも、最後まで頑張る。
残り5キロから、何人も抜いてきたよ。」

 彼女は、しばらく並走してくれた。
「ありがとう。先に行って。」
 私が促すと、彼女はペースを上げ離れていった。
1人2人と追い抜く姿が見えた。

 私に力が戻った。
「ここからだ。1人でも2人でもいい、
追い抜いてゴールするんだ。」
 そんな気持ちになっていた。

 完走したゴールの先で、
芝生にスラッとした足を投げ出した彼女がいた。
 「足、もげなかったね。」
私が言うと、
 「うん、また走っても、この足、付いているみたい。」

 その日以降、彼女には会っていない。
転勤したと聞いている。
 いつかどこかの大会で、今度は私が言う。
「ワッ、追いついた!」。
 そして、「足、もげそう。」って、
必ず言う。




   夏 ガクアジサイが 素敵!
                ※次回のブログ更新予定は 8月29日(土)です  

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« どんなメンタル?! | トップ | ゴ ル フ あ れ こ れ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

出会い」カテゴリの最新記事