俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

心神耗弱

2008-05-11 10:17:54 | Weblog
 危険運転致死傷罪が制定されてから飲酒運転事故が大幅に減っている。2000年には26,000件もあった飲酒運転事故が2007年には7,000件台にまで減った。厳罰化によって事故が減った典型的な実例でありそれなりに有効な法律だとは思うが、私は大きな疑問を感じている。刑法39条と整合していないからだ。
 刑法39条によれば心神喪失なら罪を問われず、心神耗弱なら減刑されることになっている。
 酩酊状態が心神耗弱状態であることは明らかだ。精神が異常な状態でなければかつて「走る凶器」とまで言われた自動車を酩酊状態で運転できる筈がない。
 飲酒運転事故だけは心神耗弱状態を理由に厳罰化され、その他の犯罪では心神耗弱状態を理由に減刑されているのが現状だ。法律をこんな支離滅裂な状態にしておいて良いのだろうか。
 異常な犯罪ほど被告の心神耗弱が争点となり、犯罪の事実よりも(誰にも分からない)犯罪時点での被告の精神状態に議論が集中する。弁護団が被告の異常性を強調すればするほど刑が軽くなるという奇妙な裁判が続いている。
 心神耗弱という曖昧な概念が法律に必要だろうか。公判時点ならともかく犯罪時点で被告が心神耗弱状態だったかどうかなど絶対に誰にも分からない。分からないことを裁判で争うから裁判官による恣意的な判決が横行する。これでは裁判の公平性が損なわれてしまう。

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