俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

偏見的総合判断

2009-05-29 14:52:44 | Weblog
 カントは「純粋理性批判」で先験的総合判断の限界を明らかにした。つまり無限とか永遠とかいった経験不可能なものを根拠にした思弁は必然的に矛盾に陥るということを証明した。
 多くの人は偏見的総合判断(私の造語)に基づいて主張するので議論が噛み合わない。もし論理学の基礎的な知識と正しい情報さえあればこんな事態に陥ることはない。
 例えば「白馬は馬でない」という詭弁がある。もし白馬が馬なら黒馬は馬ではなくなるという理屈だ。これは論理の基礎である「逆は必ずしも真ではない」という事実を知っていれば簡単に見破れるパラドクスだ。
 「白馬が馬である」という命題を勝手に「逆」にして「馬は白馬である」と読み替えるからこんなパラドクスが生じる。「白馬が馬である」ということと「黒馬が馬である」ということは何ら論理的に矛盾しない。
 正しい情報の不足も偏見的総合判断を招く。北朝鮮のように「我が国のミサイルや核兵器の成功が世界中から賞賛されている」などと言論統制による嘘の報道が続けられれば、国民がこの件に関して正しい判断をすることは不可能だ。事実に基づかなければ正しい判断は生まれ得ない。
 論理に対する無知と情報不足や経験不測が偏見的総合判断を生む。

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