ヤングライオン通信

ocnブログから引っ越してきました。

ザ・ウォーク

2016-01-28 22:31:21 | 映画
ストレスは拡大中。

頑張れ頑張れ頑張れオレ。


ということで「ザ・ウォーク」


もちろん3D上映を選択。

しかし、取った席が思ったよりスクリーンから遠かったので、マナー違反ながら上映中に前の方の空席へ移動。
やはり3D作品は視界いっぱいにスクリーンが広がる位置がオススメだ。






パリの大道芸人フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レビット)は、ある日アメリカで超高層ツインタワービル「ワールドトレードセンター」が建設されることを知り、そのオープン前にツインタワー110階の屋上にワイヤーを張ってその上を命綱無しで渡ることを決意する。




足元のワイヤー越しに見える地面は、ずっとずっとずっと下の方にある。
飛んで来るビス・落ちて来るワイヤー。

あらためて言う事でもないが、もう3Dの要素を十二分に発揮した画面作りになっている。

当然、3Dで観るべき映画ということになる。


この話は、40年程前、現実にこの男がワールド・トレードセンターでやって見せた事件をモチーフにしている。

ちなみに作品内のストーリーテラーも本人役の彼がやっているので、このチャレンジが成功するということもネタバレにはならないだろうという前提で描かせていただく。


まあ、彼の挑戦の結果は成功どころの騒ぎではない。

最後の30分間、まあ渡ること渡ること(笑)。


観ている私も、気付くと本当に手の平がジットリ汗で濡れていた。
「手に汗握る」という表現の見事さをあらためて感じてしまう。


ただし。

これは私自身の倫理観によるものなのかも知れないし、アメリカ人が持つ「個性の表現」の重要性みたいなものを私が理解できないだけなのかもしれないが、とにかく…

「こいつは頭がおかしい」としか思えなかった。

ガールフレンドや友人を伴ってNYへ来て、協力者を集め、作戦を練り、決行する日が決まる。
その日が近づくにつれて、主人公のテンションはそのガールフレンドさえも戸惑うほどに高まっていく。

クスリでもやってるのかと思った。


自己を表現する手法は様々だろうし、それが「綱渡り」であることも構わない。
しかし、他人の土地建物に忍び込んで生死に関わる様な挑戦をすることの、どこに他者が共感する余地があるのか。

現場を守る実際のビル作業員たちは主人公グループのウソに騙され、彼らに対する厚意からルール違反を許し、結果的に協力させられてしまうことになる。
映画のストーリーに対してこんなことを言うのも野暮でバカバカしいのだが、これでもし死人が出ていたら、彼らを通した作業員はどう思っただろうか。

彼の行いは違法で当然この後逮捕されるが、その後、ビルの責任者からは勇気を讃えられてビル屋上への無期限フリーパスが彼に与えられた。


これがフィクションなら素直に受け止めもするかもしれないが、これが現実の話だと思うと、結果的に私の感覚の方が間違っている様な気もする。

例えば新宿で都庁の屋上をワイヤーで繋ぎ、綱渡りする男が現れたとして、日本人は彼の様な受け止め方をするのだろうか。


この事件によってこの超高層ビル自体が世間の注目を集めることになり、「ビルに命が吹き込まれた」みたいな正当化する表現となって出て来るが、それは当然「9・11」を意識しての表現であろうと思うと、やはり腑に落ちない部分は消えない。



個人的にはほぼ主人公に感情移入はできなかったが、3Dの威力を最大限まで引き出していることは間違いない。


視覚効果としての楽しさなら、十分満喫できる映画。

オススメ度:76点









白鯨との闘い

2016-01-21 22:36:38 | 映画
再びストレスと戦う日々が訪れた。

ちょっと厄介なストレスだけに、前回の様に「耐える」より「乗り越える」が必要な様子。

困ったものだ。


ということで、スクリーンでは私の相手よりも遥かに強大な敵「白鯨」と戦っている人を見て自らを慰めることに。






時は19世紀、売れない小説家ハーマン・メルビル(ベン・ウィショー)は、かつて捕鯨船エセックス号が遭遇した事故について取材するために、数少ない生存者であるトーマス・ニカーソン(トム・ホランド)の元を訪れた。

当時、14歳で水夫として乗り込んでいたトーマスは数十年前に海で起きたことについて話すことを拒んだが、妻の説得もあって重い口を開き始める。

エセックス号の乗組員を仕切る一等航海士に選ばれたオーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワース)は、技術も経験も一流ではあったが、他の地域から来たよそ者であったことから船長になれない苛立ちを抱えながらの乗船。
一方船長はジョージ・ポラード(ベンジャミン・ウォーカー)。船乗りとしての経験は浅いものの、名家の出身であることから今回船長に抜擢された。

鯨油を集めるために1年の計画で出港したエセックス号だったが、新米の船長に優秀な部下という構図は当然人間関係に軋轢を生み、すでにクジラが乱獲された海域ということもあって航海は行き詰っていた。

しかし、立ち寄った港で遭遇した船乗りたちから、太平洋の遥か東に見渡す限りのクジラの群れる海があることと聞く。
船乗りたちはその海域で出会った「白い巨大なクジラ」に船を破壊されたと言っていたが、後には戻れないエセックス号はその遥か遠い海域を目指すことになる。



ハーマン・メルビルの「白鯨」と言えば歴史的に、また世界的にも有名な小説。
過去、いろいろな映画にも象徴的な存在として登場したり引用されている。

その「白鯨」を書くに当たって筆者がモチーフとしたのが、この映画で描かれた実際の事件だったということを私はここで初めて知った。


軸となるストーリーは非常に単純。
そこに何を読み取るかをじっくり考えさせる映画。

ただ、ビジネスとしてそれではよろしくない、観客を集めたいという気持ちもよく分かる。

だからと言って、こういう宣伝が結果として映画への不信感を招くのではないだろうか。
「白鯨との闘い」というタイトル・予告編のシーン選び。
この作品はそういうシーンもあるが、「ジョーズ」の様な映画ではない。

あまりネットでの評価が高くない原因の多くは間違いなくそういうことなのだろう。
でも映画の質は決して悪くない。


当時、非常に有益な燃料だった鯨油を集めるために、人々は世界の海へ出てクジラの乱獲を行った。
言わば白い巨大なクジラは、人間の「エゴ」に対して警鐘を鳴らす「神」として登場する。

「神」によって生きる術を奪われた人々が、それでも生きていくために何を選択するのか。
「誇りある生き方」とは何か。


水中から水面を眺める、音もないキラキラ・ユラユラとした情景のカットが何度も使われている。
美しいがしかしそこは人間が住める世界ではない。
息苦しさを感じ、水の上へ出ると地獄が待っている。

投げ掛けるテーマは重い。


登場人物は男ばかり。
さらに、全員が時が経つにつれてどんどん小汚くなっていく。
人数が多く、人相が変わっていくにしたがって誰が誰か一部分からなくなるが、それでも人物描写が上手いのであまり支障にならない。

美しい女性の出て来ない映画は観ていてやはり疲れるが、それでも最後までしっかり引き込まれた。

エンドロールの音楽(特に3曲ある内の2曲目)も美しかった。



じっくり味わう良作。

オススメ度:80点




















スター・ウォーズ フォースの覚醒 2nd【ネタバレ含む】

2016-01-11 12:57:16 | 映画
3連休最終日。

実は非常に悩んだのだが、新作スター・ウォーズ2回目の鑑賞に足を運んだ。


昨年も気に入った作品は2回観に行ってはいたのだが、やはり劇場で2回観るという事がそれほど一般的な行為でもないということは自覚しているし、他に観たい作品もある訳だし。

ただ、待ちに待った大好きなシリーズが再スタートしたことへの敬意というか、それが希望にかなうデキだったことへの感謝というか、エピソード1~3の新3部作をこの10年以上けなし続けたことへの懺悔というか。

とにかく2回目を観なければ収まらない。そういう感じなのだ。






昨年2回観た作品は、当然1回目で劇的に気に入った作品になる訳だが、結果として「MAD MAX」の様に2度目も変わらず楽しめたものもあれば、「ジュラシック・ワールド」の様にそうでもない場合も当然ある。

しかし、今回の再鑑賞は結果として大正解。
1回目以上に楽しむことができた。


【以下、ネタバレ注意】


試写会などの前情報がまったくなく、私自身が公開後も一切の情報を遮断していたこともあって、1回目はストーリーを追う事に集中していた。

今回は旧3部作を意識したシーンやセリフを確認したり、旧3部作のキャラクターを探したり、登場人物の細かな演技やジョークをチェックしたり。

「このレイのヘルメット、ルークのやつじゃん!」
「スターキラーベースの中でハン・ソロがチューイに言う『後でここで落ち合おう』ってセリフ、この後もう戻って来れないことの暗示になってんじゃん!」
「最後のXウィング部隊は、白人・黒人・アジアン・宇宙人・男・女など、全ての人類を代表として揃えてるのかな。」
「ルークのライトセイバーが何故、惑星タコダナの地下に納められているかについては、おそらくエピソード8で描かれるルークの過去に繋げる形であえて明言を避けたのか。」
「エンドアで焼かれたダースベイダーのマスクが何故、カイロ・レンの手元にあるのかは特に説明がないな。」
「キャプテン・ファズマは今回いい出番はなかったけど、フィンとの関係でこの先広がっていきそう。それが恋愛なら、マスクの中身は黒人かラテン系の女優ってところかな。」

チュー・バッカの演技はどちらかというとコメディライン寄りだが、今回は非常に凝って演出してあった。


今回は吹替え版だったが、おかしなタレント起用はなし。
旧メンバーも過去の吹替え版と変化なく違和感なく観ることができた。(ルークは声が若かっただけに次回作はちょっと心配。)

レイ役の声優はちょっとイメージが違ったが、あのレイの強い眼差しの印象のおかげであまり気にならなかった。



様々なハリウッドスターが実はカメオ出演しているという情報も小出しにリークされ始め、何度も劇場に行きたくなる様に、そしてその上で新たな発見がある様に設計されていて、その辺りも抜かりがない。


これから中国での公開が始まるというから、興行収入の記録更新はおそらく間違いないだろう。

ソフト化される段階で、またもうひと祭りあるに違いない。
ファンとしてはまだまだ目が離せない。



ブリッジ・オブ・スパイ

2016-01-09 15:18:03 | 映画
3連休初日。

睡眠時間は4時間ほどだが、このタイミングで観ておこうと朝8時30分開始の上映回に向けて家を出た。

公開2日目だが、観客はわずか。





米ソ冷戦真っ只中の1960年代、敏腕弁護士として活躍していた主人公ドノヴァン(トム・ハンクス)の元に舞い込んだ仕事は「ソ連のスパイ」アベル(マーク・ライアンス)の弁護だった。
逮捕されてもアメリカ当局に協力の姿勢を見せないスパイには、極刑が妥当というのが当時の風潮だったが、アメリカでは外国人にも正当な裁判を受ける権利があることを表明することがソ連へのアピールにもなるとの政治的な判断もあってドノヴァンに白羽の矢が立った。
しかし、敵国のスパイを弁護するという憎まれ役に加えて有罪判決は確定的。
当初は難色を示していたドノヴァンだったが、その正義感から請け負うことを約束する。

お互いのスパイ狩りが盛んに行われていた当時、「いつか同朋がソ連に捕えられた時、アベルはアメリカにとって有利なカードになる」というドノヴァンの主張もあって、アベルは死刑を免れることができた。

そして同じ時期に、ソビエト上空から撮影していた米軍の秘密偵察機が撃墜され、自爆も自殺にも失敗したパイロットがソ連の捕虜となってしまう。
また、ドイツではある日ベルリンの壁によって一夜にして東ドイツに取り残されてしまった大学生も捕えられた。

ドノヴァンが予見していたことが現実となり、再び呼び出された彼だったが、今度の仕事は政府の代表ではなく民間人として東ベルリンに乗り込み、独りで彼らアメリカ人捕虜2人とアベルとの人質交換の交渉をするというものだった。




現実に起きた事件を描いた作品ということで、偵察機撃墜のシーンがドキドキさせられるくらいでその他の物語は比較的地味に進んでいく。

実際に起きている事象はややこしいのだが、シンプルに表現してくれているので分かりやすくはなっている。
とはいえ、事前にあらすじくらいは軽く見ておいた方がより理解しやすいだろう。

あと、東ベルリンのホテルレストランのシーンで店内に流れるナット・キング・コールの「Unforgettable」。
個人的には、つい先日亡くなったナタリー・コールへの想いを新たにした。


トム・ハンクスはいかにもトム・ハンクスらしい演技で安定の仕上がり。
ソ連のスパイだったアベル役のマーク・ライアンスの寡黙な演技が輝いていたが、全体としてやはりきれいな女性の出てこない映画はどうにも観ている私のテンションが続かないのは不徳のいたすところ。

寝不足も祟って、途中何度かウツラウツラ。





良い映画だとは思うし、最後にホロリともさせられるが、全体を通して静かに穏やかに進んでいく映画だった。




オススメ度:79点