冷吟閑酔

みんな忘れてしまったんだろう?

(お世話になりました)

2007年09月11日 | 初めて頁を捲る方又は彼に詳しくない方
 本撤退から大分遅れてしまいましたが、ロストグラウンドに登録していたキャラクター「ムゾリ」はキャラデータを削除いたしました。
 今まで彼に関わってくださった方にお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 またどこかでお会いできることを祈っています。 PL


 補足:リンクは切ってくれてかまいません


旅先での雨

2007年09月08日 | 深く、主
「ウン……」

ムゾリは苦しげに寝返りを打った。
正確には寝ていないので、ただ体勢を直したというべきか?とにかくそんな揚げ足取りはどうでもよい。

「ぅうう、」

また唸るようにして体勢を直す。
横向きだったのがうつ伏せに近い状態になった。

外は柔い雨が降っていた。

道の無いような山を越そうとする道中、雨に見舞われたのである。
昼間過ぎだというのに外は暗く、黒い藍に染まっている。
テントの中にムゾリの荒い息遣いが響く。
風にテントがあおられて、さらさらとしたはずの雨が時折強くそれを叩いた。

雨が降るのはわかっていたので、一緒にいた六識を「急にワインが飲みたくなったから買って来い」などと言って蹴飛ばすように麓の町に戻らせた。最後まで彼は(戻ることにもその理由にも)納得せず、途中掴み合いの喧嘩になりかけたが、なんとか降ろすことに成功した。

「……、はぁ、はあ… …はあ。」

だらしないもんだ、と思う。
たったこれだけの雨で大の男が形無しだ。
けれども思い出すようだった。
今までこうやって、一人で(あるいは、たまに二人で)旅をしていたころを。

テントの中は酷い腐臭が満ちている。
自分の内から湧き上がる、その決して心地良いとは言えない匂いに自身で苦しみながら、それでも換気をするわけにいかず、ただ寝返りをうつだけだった。
自分の額を垂れる汗ですら紫色なのではないかと思うぐらいである。

今までは――たとえば、小屋の屋根裏、もしくは城の地下室で。

そういう頑丈なものに守られて耐えてきたが、久々に、まさに薄皮一枚でなんとか綱渡りをしている状態になってみて、自分の気の緩みを感じる。
昔の自分は、ちょっとやそっとじゃあこんなに苦しめられたりしなかったのに。

(それとも、腐食が進行している、とか……)

いやな考えが頭を過った。
自分の腹が腐っているのは知っていても、どれだけの部分がいつから腐っているかなんて知るよしもない。
すぐにその世界で一番に等しいいやな考えを払拭しようと頭を働かせるが、悲しいかな、雨の日の彼の頭はとことんネガティブな方向にしか回らないようにできている。

「………、……、」

言葉にならないような息を喘ぐように続ける。陸に上がったなんとやら。
ただ、刻むような呼吸を続けるしかなかった。今は、そう、今まで通り、不幸が過ぎ去るまで耐えるしかないのである。

ふいに、足音が聞こえてくる。すぐに六識であるとわかった。足音の次に必ず「ザクッ」っという六尺棒が地面にささる音が聞こえるからである。
計算よりも何時間も早い戻りだった。
まずい、とムゾリが体を上げようとするよりも早く(というかムゾリがのろのろとしているだけであるが)、そのシルエットが早足でテントの脇を通って、入り口を開ける。



「ムゾリ!大丈夫かよ!」

雨にふやけた右頬が無機質に浮かび上がって、それと対照的に切羽つまった人間の表情がその顔に浮かんでいた。
ムゾリが返事を返すどころか、言い終わらないうちに次の言葉でまくし立ててくる。
なんで里に降りさせたんだよ、とか、雨が降ってるのを見て飛んできた、とか、ワインはこれでいいか、とか。
テントに篭る悪臭にも動じた様子もなく、横になっているムゾリの近くに座り、雨の絡んだコートをすぐにたたんで仕舞った。

「バッカじゃねえの?雨降るの知ってたのか、お前」
「お前がいると香を焚く場所がねぇんだよ」
「じゃあずっと立ってりゃいいだろ。お香足りる?」
「ん……」

ああ、やだなあ、と心底そうムゾリは思った。
傍らに六識がいると、どこかほっとする。
その「ほっとさせてくれる」対象が六識であることが、すごくムカついた。
どうせならナイスバディのおねえさまとかだったら、恋愛小説のひとつでも書けよう。
横にいて、自分に安堵を与えているのは、死んでるのか生きてるのかわからないような人外の、それも男なのだ。

「走ってきたのか?」
「まあね。お前ほどご老体でもないし」

お香を増やしながら、なんでもないといった風に六識は言う。
そこでムゾリは、自分ほどではないにせよ、水を嫌う六識を無闇に雨に濡らしてしまったことに気付いた。
もう少しよく考えてやればよかった、などと脳裏で遅すぎる反省をし、直ちに謝ってみせた。

「……ごめん、ワリかった」
「いいよ、別に。奢ってやるよ」

いや、ワインじゃなくて。と言おうとしたが、なんだか面倒に感じてそのままにすることにした。
はらはら、と雨が弱まるのを感じる。

「何で追い出したのさ」
「ワイン飲みてーなーって」
「嘘つけっての、バカ」

あとは沈黙でごまかした。

六識は自分の体のことを知っている。
彼は、人間や、人間以上に敏感な鼻を持つ獣には耐えられないこの匂いに耐えられる(慣れている、とも言うべきか)。
そして、おしゃべりでいて、……
ごく最近のことであるが、雨の日はできれば一緒にいて話し相手になってくれないか、と六識に懇願した経緯があり、勿論六識は快く承諾していたのである。
(いつも威張っている家主から頼られることなどなかったのだから、さぞかし面白い出来事だったろう)


本当のところ、ムゾリは試そうと思ったのだ。
本当にもう一人では雨に耐え切れないのか?
六識だって鼻がないわけじゃない。いつまでもこの匂いに晒され、暑苦しい中年親父と雨の中束縛されるのはきっと滅入ってしまうだろうから。
けれども、結果はこのとおり、である。
強がり、それでも結局彼以上に彼に依存している自分に気付くだけで、何も二人の現状は変わらない。

(そもそも、俺が識を連れて行く理由は――)

「雨があがったよ、ムゾリ。乾杯しよう」
買ったばかりのラベルの綺麗なワインを見せながら、出し抜けに六識がそう言った。
ムゾリは「できねーよ」と思ったが、「悪くないなあ」とも思った。

子供のこと

2007年08月21日 | 深く、主
「嘘だッ!」

ムゾリは医者の胸倉につかみかかった。
周りの看護婦はそんな彼を止めようとする素振りをみせるが、屈強な肉体を前に、皺の目立つ女性達は手を出すことは出来なかった。

「う、嘘じゃあない。離したまえ」
初老の医者が気丈にものを言った。体を浮かせまいとつま先で立ち、ふるふると震えている。
ムゾリが自分で息を静めながら、どさりと医者を椅子へ落とした。看護婦達がおびえながらも、その二人から目線を離せないでいる。

場所は色町の一角、個人で経営している診療所、といえば聞こえはいいが、避妊や堕胎、性病の治療、喧嘩沙汰の後始末、簡単な整形や豊胸手術もやる、暗い世界。
ムゾリはその一室で、診断をうけていた。

一向に、子供ができないのである。
ムゾリは数えて30歳を越えていたが、まだ肌は若々しいままであった。
各地を遊び歩いているのに、責任をとれの手紙もないことに首を傾げてはいたが、この歳にもなれば身を固めようと思うもの。
しかし、作ろうとしても、どうしてもできなかった。
先日も結婚を決めた女性との間にどうしても子供ができず、婚約を破棄してしまったところであった。

医者の診断はこうだ。
「お前の精液からは、正常な精子がひとつもみつからなかった」
すなわち、子供ができないということだった。

さて、やっと舞台が冒頭に戻ってくる。

「……嘘だ、ヤブ医者」
ムゾリが悪態をついた。医者はその文句に慣れっこのようで、首を摩りながら診断を続けた。
「精子ってのは、頭に卵子の膜を突き破る爆弾みたいなもんがついている。まず、これがない。卵子にたどり着いても、卵子と結ばれることはない。
次に、精子の中身だ。精子ってのには子供のモトが入ってるんだが、これが――」
「っ、もういいっ!」

その先がわかって、ムゾリはその場所から立ち去った。
勿論代金なぞ払わなかったが、その結果から、診療所の誰もが彼から料金を請求しようとは思わなかった。



「……はは、…そうだよなあ。当たり前だ」

とぼとぼと、色町から外れた森の中を明かりもなく(あるとすれば自分の咥えた香のみである)、ぼたぼたと涙を子供のように溢しながら歩いていく。
止まれなかった。止まったらそのまま泣き続けて干からびてしまいそうな気がした。

(そうとも、当たり前だ。少し考えればわかることなんだ)
(腹の中が腐ってるってのに、ちゃんとしたものが作れるわけが――)

せめて不能であればいいのに、と心から願った。
中途半端に腐食しているせいで、体は女性に反応し、生殖を求める。
本来神聖なはずのその行為は、ただ滑稽なもののように思えた。



それから、ムゾリは半ば諦めながらも、その医者の診断が誤診であることを期待して、より一層女性をあさるようになった。
下手な鉄砲、を信じて。

孤児院のこと

2007年08月20日 | 深く、主
その矛盾に彼が気付いたのは、わりと早い時期であった。

彼は子供が大好きであったため、孤児院を建てようと思い立ったのだが、いかんせん先立つものがない。
自然と、金を貯めなければならないことになる。
どうやって貯めるか?

この世界には戦争しかなかった。
戦争に行き、人を殺せば金になる。
自分が殺した人に子供がいたとしたら…?

全くの矛盾であった。
孤児を助ける為、孤児を増やすなどばかげている。
けれども、孤児はいる。その現状を、どうにかしたかった。

だいいち、孤児院は建っても、それを維持できないことはわかっていた。
家計簿をちまちまとどれだけ細かく書いても、金は増えるわけではない。
それどころか、より一層その現実がくっきりと浮かび上がる始末である。

それでも、何か罪滅ぼしでもするかのように、彼は金を貯めつづけ、城のようにでかい孤児院を建てた。
孤児は招かなかった。

広いが、新築のはずなのに、どこか古ぼけたその屋敷にも似た孤児院は、不気味でさえあった。

「たましいって信じるかい?」

彼は、幽霊や、魂、そういったスピリチュアルなものを信じていた。
信じるというよりか、否定する術がないものは、全てを認めたいと思っていた。

「俺は、子供たちの霊にこの城を捧げたい」
「そして、俺が死んだらここに住むんだ」

オバケ屋敷ならぬ、おばけ孤児院を残して、彼はこの村を出て行った。

三ヶ月ぶりの

2007年08月20日 | 生活
大分空いてしまった。

この間、いろいろあった。

解放軍でいろいろあったり、
ルドラムでいろいろあったりした。
夏祭りなんかもした。
俺はオバケ屋敷をやって、
みんないろいろな屋台をやって、
それなりに賑わって、俺は楽しかった。

79にもなった。
皆が沢山プレゼントを持って来てくれた。
嬉しかった。
俺って幸せだなーと思った。

城も建てた。
広かった。

前から決めていたことだから、思いとどまる気はないけれど、
少し、もったいないなあ、と思っちゃう俺を許して欲しい。

焦燥と

2007年05月07日 | 思想
やだな。

砂を家の壁に擦り付けたような音が頭の中に小さく、ずっと響くのだ。
じりじりじり、ノイズになりきれない、天然と人工が混ざり合えないジレンマの音。
眉間に皺を寄せる。
寄せたって誰もそれを見る人はいない。
表情は見てもらうためにある、だからこの表情は表情でなく無表情だ。
不快だと訴えても誰にも届かない。

届かない声は無音。
一人でいる体は無意味。

一人でいることは自分でもないってこと、誰かがいるから自分でいれる。

じりじりがざあざあに次第に変わっていく。

自分の頭の中がどうなってるかはわからないけど、音は一つじゃ生まれないのは知ってる。
砂一粒だけじゃ、何も生まれない。
砂二粒でやっと、ささやかな音が生まれる。

ざあざあ、ざらざら。



要するに、寂しいんだ、きっと。

甘味とザフの剣と甘味

2007年05月07日 | 生活
解放軍の会議室では、ザフの剣のリサイクル運動なんかをやってる。
大分いいことだとおもって、ザフの剣があたったときは売らずにとっておいて、
そこでザフ剣欲しがってる人に譲ることにしている。

ちょっと前、ジュノーっていう白髪の男性がザフの剣を欲しがってたんで、
早速渡してやったことがあった。
大分喜んでくれてて、俺もたいしたことしたわけじゃないけど、とても嬉しかった。

彼との出会いはそこだったんだが、クールに見えてけっこういい奴だった。
いつでも遊びに来ていいよ、って言ったらすぐに遊びにきてくれたり。
土産に「つまみに」って港こんぶを貰った。
彼ったら、短い間でよくぞ俺を理解してくれた!って感じだ。
俺はおかえしに大福をあげた。
彼が甘党だって知ってたから。
向うも「よくぞ俺を…」ってなってくれたろうかな。

ジュノーは料理が苦手みたいだ。
今度は料理でも作ってもってってやろう。

カクテル

2007年05月07日 | 生活
呼鳩からカクテルを貰う。
いいって言っているのに、彼女はこういうやつなんだ。
そこは、すごく俺に似てると思うんだ。

しゅわっとして、すっきり、夏みたいな味のするカクテルだった。
おいしかった。


最近、自分の心の狭さを痛感することがおおい。
昔の俺はもう少し寛大だったように思う。
疲れてるんだ、とあいつは言うけれど、そんなのを理由にしたくはない。
もうちょっと深呼吸して、ぼんやりと海と空の境目を探すように目を細めて、
くらげみたいにゆったりしてたい。

時の鎖

2007年04月03日 | バトン
ゼブのところから。


『時の鎖』

1、あなたが赤ん坊だった頃、その瞳にはどんな風景が映っていたでしょうか?

あったかどうかも怪しいもんだなァ
覚えてなんかねぇさ


2、あなたは物心ついたばかり、傍らには誰がいますか?
 
 じいちゃんと、年のっくらい同じな友達。
 近所のおばさん、おじさん。森と大地。

3、あなたは少年或いは少女へ、大事にしていた宝物はなんでしょう
 
 (なんか言葉がきになる)

 そのへんにおちてる石とか、綺麗な落ち葉とか

4、あなたは最も多感な時期へ、何か間違いをしてしまったこと、抱えてしまった秘密などありますか?

 特にないなあ

5、あなたは今現在のあなた自身へ、失うことが怖ろしいと感じるものはありますか?
 
 たくさんあるな

6、あなたは今現在のあなた自身のまま、過去のもので取り戻したいと思うものはありますか?
 
 それも特にないよ、別に

7、あなたは今現在のあなた自身のまま、変わらないものはあると思いますか?
 
 そうだなァ、男であること

8、いつかわからない先の向こう、どのような終わりを遂げたいと思いますか?
 
 終わるのは嫌だね

9、運よく死神の手から逃れ、老いて朽ちるばかりとして、あなたが最後に思い出す若かりし頃の想い出は何でしょう…?
 
 きっと若い頃の思い出なんてものは思い出さないだろうよ
 気がかりなのはきっとそのとき置いていってしまうひとたち
 もしくは、死ぬことへの恐怖で頭がいっぱいなんじゃないかな

10、最高にこの鎖を繋ぐ者、心に浮かんだ者の名を。その方の未来過去問わず、17歳頃のイメージを添えて。

 人の過去というものにはさして興味がないんだ

遅いお年玉

2007年03月26日 | 生活
オルからお年玉をもらった。
美味しそうな酒。
陶器の瓶って好きだな。なんか美味しくなる魔法がかかってそうで。

オルは少年みたいな見た目だけど、俺なんかよりずっと年上。
識よりも年上なんじゃないか?って思う(アイツの場合は、年は重ねた時間というよりは、過ぎ去った時間の単位っぽくて、なんとなく年齢というものとは違うような気がするけど)。
そういうわけでおじいちゃんならお年玉チョーダイ、って年甲斐もなく強請ってみたらホントにくれた。
いいじいちゃんだ!ふふ。

オルはちょっとなら酒いけるんだって。
敬老の日にはうまそうな酒を選んであげようと思う。