「む・しネット」~女性を議会に 無党派・市民派ネットワークblog

市民自治と市民派女性の政治参加をすすめる「む・しネット」の情報発信ブログ。
4月の統一選には市民派議員をふやしたい!

「む・しネット」が『ファム・ポリティク』に紹介されました。

2009年10月07日 | メディア/ほんetc
『ファム・ポリティク(政治的女性)』2009年秋号に、「む・しネット」の紹介が載りました。

5月に『市民と政治をつなぐP-WAN」の説明で上京したときに、
発行人の田中喜美子さんから「む・しネット」のことを紹介したいからと、
インタビューを受けていたものです。

     
 『ファム・ポリティク(政治的女性)』2009年秋号
ファム・ポリティク編集部(田中喜美子)2009.9.25発行



前半は、「む・しネット」の活動と勉強会のことで、
『む・しの音通信』のなかの、島村きよみさんと、
わたしの記事が引用されています。

後半は『市民派議員になるための本』のことです。

 

関心のある方は、記事を拡大してお読みください。

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「もらわにゃ損」と選挙公営費問題、全国記事に!

2007年11月21日 | メディア/ほんetc
昨日の朝日新聞を開いてみておどろいた。

「選挙公費、水増し横行 ポスター代も燃料代も」記事が一面トップを飾っている。
お隣が野口みずきさんの写真だから、目にした人も多いだろう。

選挙公営の問題は、11月の愛知県日進市の問題を皮切りに、
中日新聞が先行していたのだけれど、このところ、
朝日新聞も精力的に独自取材をしている。
この記事も、東京本社の記者さんがこちらに取材にみえてかかれたもの。

「む・しネット」のメンバーも各地で取り組んでいます。

とはいえ、昨年の裏金問題もだけど、山県市や岐阜県が評判になって、
この問題に当初から取り組んでいたとはいえ、
うれしいといおうか、悲しいといおうか、複雑な気持ちです。

ということで、関連の朝日新聞の記事とともに紹介します。

選挙公費、水増し横行 ポスター代も燃料代も
朝日新聞 2007年11月19日

選挙公費 制度穴あき

 ポスターや選挙カーなどの選挙費用を公費でまかなう自治体の選挙公営制度をめぐり、議員側の不正請求が続々と発覚、住民監査請求や訴訟になっている。条例で定める公費負担の限度額が実費を大きく上回っているうえに、実費であることを裏付ける書類の添付がいらない制度のためだ。各地で改正の動きが出ている政務調査費に続き、地方政治家へのルーズな公金支出を問題視する動きはさらに広まりそうだ。(早坂敏文)

裏付け書類不要 相次ぐ不正請求

 水増しなど不正請求の疑いが今年に入って発覚したのは、東京都議選、埼玉、神奈川、岐阜の各県議選など。愛知県豊橋市議選など五つの選挙では住民監査請求が提起され、一部は住民訴訟にまで発展している。
 自治体が負担する選挙公費は、業者が候補者に代わって自治体の選挙管理委員会に請求する。水増しで浮いた費用は、公費負担の対象外のパンフレット製作や、公費負担の対象とならない車のガソリン代などに流用されていた例が目立つ。

 典型例は、04年春の岐阜県山県市議選をめぐり、今年7月に市議6人と県議らが詐欺容疑で書類送検され、5市議が辞職した事件だ。ある市議は実際には8万円で済んだポスター製作費として、上限額に近い約37万円を請求。水増し分の約29万円でポスター以外の印刷物を作り、それでも余った金を印刷業者から現金で受け取っていた疑いがもたれた。
 同様の疑惑が県議選で浮上した岐阜県では、業者が県選管に出す請求書に納品書や売上伝票の添付を義務づけることを検討している。
 選挙カーの燃料代では、東京都議選で1日に200リットル以上、埼玉県議選でも1日100リットル以上を給油したり、毎日同じ量を給油したりしたと届け出ていた候補者がいた。これらも水増しが疑われ、各自治体で公費の返還が相次いでいる。
 旧自治省は92年の公選法改正の際、自治体に対して①公費負担するかどうかは任意④財政状況や選管の事務処理体制などを勘案して制度の導入を判断する、などと求めた。特にポスターについ一ては「国政選挙に比べて規格も小さく選挙運動期間も短いため、単価を国政以下とし、枚数も少なくするよう」促した。しかし、町村を除く自治体のほとんどは制度を導入入。国政と同じ単価計算で請求通り払っているケースが多いのが実情だ。

全国調査を
新海聡・全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の話
 選挙公費は政務調査費と同じで助成に必要な手続きがひじょうにルーズだ。使途が厳格に定められているのに、もらったものは何に使ってもいい、もらえるだけもらっておこうという候補者がおり、あしき慣行として根深いものがある。だれがいくら使ったのか公表することが大事で、実態調査を全国に呼びかけていきたい。
(2007.11.19 朝日新聞 )


選挙公費「もらわないと損」 浮いた分で名刺やパンフ
朝日新聞 2007年11月19日09時20分

 選挙公費は上限いっぱいもらわないと損――。選挙に出る人たちのそんな意識が、お金をかけずに選挙に出られるようにと設けられた自治体の選挙公営制度を揺るがしている。不透明な使途が問題となった政務調査費と同じように、納品書などの裏付け書類を提出する必要がない支出。身近な選挙でも「政治とカネ」が問われている。
 「税金の使途をチェックする議員が、その第一歩の選挙で公金をごまかしていることは許されないはずだが……」
 今春の群馬県議選に立候補した男性は、これまで周囲の不正請求に目をつぶってきた。じくじたる思いだったが、「同僚を陥れることはできなかった」。
 最初は、初めての選挙の市議選だった。先輩議員から「満額請求しても大丈夫」と教えられた。ポスター代は上限額の3分の1で済むのに、当選して同僚となった議員の多くは満額に近い金を市に請求。浮いた分を、公費負担の対象にならない名刺やパンフレット印刷に回していた。
 県議選も同じだった。市議選と同じ掲示板数なのにポスター代の公費負担の上限は、市議選より約50万円高い約110万円。「風雨でポスターが破れることなどない」のに、掲示板の2倍の張り替え用のポスター代まで県に請求できる。
 印刷業者からはポスター撮影用にスーツの新調を勧められた。ポスター代と込みでスーツ代も処理するような口ぶりだったが、断った。結局、印刷代は約25万円。上限額まで80万円余った。
 群馬県選挙管理委員会によると、今春の選挙で候補者71人中、34人が満額請求。県が負担したポスター代の総額は6300万円に上った。
 「市条例に基づく公費負担(制度)は使いません。公費負担のポスター代上限1枚約3200円。このポスターは約350円」。昨年11月。千葉県いすみ市議選で、1枚のポスターが注目を集めた。
  初当選した田井秀明さん(45)のポスターはデザインから印刷まで自作。選挙カーを含めて公費負担は申請しなかった。選挙の3カ月前には1788人の署名を添えて公費負担条例の廃止を求める直接請求をしたが、議会で否決された。
 「財政が厳しくて合併したのに、非公開の全員協議会で自分たちの権利を確保している。予算で3200万円に達する税の投入について、議会は十分審議していない」と田井さんは指摘する。
(田井さん自作のポスターは単価約350円。
「公費負担のポスター代上限1枚約3200円」と書き込み、
公費負担のムダを訴えた)

 関東地方のある市議のもとには選挙後、印刷業者がやってきた。「カンパです」と差し出された封筒に戸惑っていると、「皆さんに受け取っていただいています」。中身は現金22万円。市の公費負担額の上限からポスターの印刷実費を引いて余った額だという。
 この市議は「100枚余のポスターに(上限の)36万円もかかるはずがない。印刷業者からの請求書通りの支出で、役所はまったくチェックできていない」という。しかし、今春の市議選でも候補者の3分の2は満額請求していた。
 ある印刷業者は「議員さんは自分の懐が痛まないので、注文は『満額で』となる。こちらも商売なので……」。適正価格を尋ねると「20万円くらいもらえれば妥当」と答えた。
(2007.11.19 朝日新聞 )


県議選の燃料費、不正請求の疑い 
朝日新聞 2007年11月09日

 「政治とカネ」が争点の一つだった4月の県議選で、公費負担される選挙カー1台分の燃料費について、過大請求など複数の候補者が不正処理をしていたことが明らかになった。これまでに2人が県に返還手続きをしたが、制度が正しく理解されていない面もあり、03年以前の県議選でも不正請求があった疑いもある。
    ◇
 県の条例で、候補者1人の燃料代の公費負担は、無投票以外の選挙区の候補者の場合、告示日から投票日前日までの9日間で、計6万6150円が上限だ。1日平均だと7350円となる。
 不適切な支払いは、朝日新聞が燃料費の請求内訳書などを県選管に情報公開請求し、開示された資料から判明した。
 資料によると、県に燃料費が請求された候補者は135人で支給総額は約430万円。7人が上限いっぱいを請求した。
 9日間で最も多く燃料を購入したのは、661リットルが1人、次いで660リットルが8人いた。1日平均では毎日約73リットルを給油したことになる。最少は、51・28リットルだった。
 660リットル以上購入した9人のうち、車種が判明した8人の選挙カーの燃費は、メーカーによるとガソリン1リットルあたり約10~18キロ。1日に730キロ~約1300キロを走ったことになる。
 東京インターから東名道などを使うと、長崎までの距離が約1260キロ。浦和インターから東北道を使うと、青森までが約675キロにあたる。
   ◇
 1日に100リットル以上の燃料を購入した候補者は3人いた。このうちの1人は「複数の自動車の燃料代に充てられると思っていた」と、制度を誤解して不適切に請求したことを認めた。
 一方で、別の候補者は選挙期間中に購入した計660リットルを1台の選挙カーで使い切り、「あちこちを走り回ったから」と説明。この候補者と同じ選挙区のもう1人の燃料は計約129リットルで5分の1以下だった。「相手候補より回っていないことはない」と話す。
 また、毎日同じ量の燃料を買い続けた候補者も3人いた。毎日58・34リットルの燃料を購入したとされる候補者は「毎日58・34リットル以上の燃料を使っていたが、限度額だけ請求した」と説明している。
 朝日新聞の指摘を受けて、8日までに2人が県に返還手続きをした。
   ◇
 候補者が、公費負担の制度を正しく理解していたか疑わしいケースが複数あることもわかった。
 返還手続きをした1人は「県選管から詳しい説明はなく、公費負担が1台分だけとは知らなかった。過去の選挙でも複数台分を請求した」と明かし、「制度自体の見直しも必要ではないか」と指摘する。
 一方、県選管は「請求できるのは1台分と条例で定められ、立候補予定者説明会でも説明している」と反論する。ただ、請求額は上限を超えていなければそのまま支払われ、使った燃料の明細は求められない。
 過去にも不正に請求したケースがあることについては、「あってはならない。正確な額を調べる権限はなく、候補者が返還してくれば受けるが、こちらから返還は求められない」と話している。
 選挙カーの公費負担をめぐっては、4月の川越市議選の候補者の一部に不正があったとして、市民が費用の返還を求めて住民監査請求を行った。また、05年の東京都議選でも候補者の一部が不正受給を認めて返還手続きをとるなど、各地で不正が明らかになっている。

<選挙カー費用の公費負担>
 候補者の費用負担の軽減を目的に、公職選挙法や県条例により、県議選の候補者は自動車1台のレンタル料や燃料代を限度内において公費でまかなえる。燃料費は、各候補者が事前に業者と契約し、選挙期間中に使う燃料代の見積額を県選挙管理委員会に提出。実際に使った燃料代と比べて少ない方の額を、業者が県に請求して支払われる。
(2007.11.9 朝日新聞 )


こちらは、11月8日の毎日新聞の記事。山梨県の例です。

これでいいのか!:選挙と金 ポスター作成費 長老県議、はがき代を含め請求 /山梨  
◇「間違い」と県選管に返金

 4月にあった県議選で、県の政党幹部を務めた長老県議が、公費負担の対象とならない「はがき印刷代」約13万円をポスター作成費に含めて請求し、全額を受け取っていたことが7日、毎日新聞の調べで分かった。県議は受給後に誤りに気付き、県選管に訂正を届け出て、過払い分を返還した。毎日新聞の取材に、県議は「あくまでも間違い。誤ってはがき印刷代をポスター代に含めてしまった」と釈明している。【宇都宮裕一】

 県の選挙費用公費負担条例によると、選挙期間に掲示するポスターの作成費は、公費負担で認められると規定。その際、選挙区に応じて1枚当たりの上限額や枚数が決まる。はがき印刷代は、公費負担の対象にはなっていない。県議が立候補した選挙区の場合、ポスター1枚当たりの上限額は1524円で、最大90万8304円(596枚分)まで公費負担が認められた。
 県議の選挙資金収支報告書などによると、県内の印刷業者にポスター作成を依頼し、県議の代理人が県議選終了後の4月、596枚分のポスター作成費として公費で負担される上限の90万8304円かかったと報告。これに基づき、県は請求通り全額を支払った。
 これに対し、業者からはがき印刷代の請求がないことから、県議は6月中旬に県選管を訪れ、提出済みの同報告書を点検。その結果、はがき印刷代がポスター作成費90万8304円に含まれていたことが判明し、調べると実際のポスター作成費は77万4800円、はがき印刷代は13万3504円だった。県議は、ポスターの単価1524円で596枚分作ったことになっていた点を単価1300円、総額77万4800円と訂正する書類を出し、7月に過払い分を返還した。
 過大請求について、県議は「あくまでも間違い。故意ということはありえない」と主張。「(県選管に支払いを請求する)印刷会社か陣営の事務担当者が、誤ってはがき印刷代を含めてしまったのでは」としたうえで、「間違った事実については最終的に自分が責任を負うが、既に訂正しており、ご理解いただきたい」と陳謝した。
 毎日新聞の取材に、印刷会社は「これまでポスターとはがきの印刷を同じ候補者から頼まれたことがなく、誤って一緒にしてしまった。制度について良く理解していない部分があった。ポスターとはがきの見積もりは別々に提示したが、会社と陣営の関係者の双方が間違った」と話した。陣営担当者は取材に「何かを画策したとかいうことはない。あくまでも勘違いで、はがき印刷代も公費負担でみてくれると思っていた」と話した。
(毎日新聞 2007年11月8日)


選挙公営の問題も全国版で載るようになったので、
新海さんのコメントのように、今後、政務調査費と同じように全国に波及していくことでしょう。


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『市民派議員になるための本』はじめに

2007年01月06日 | メディア/ほんetc
今日は、岐阜市文化センターで、「む・しネット」のスタッフ会。
選挙講座のことと通信59号の発行について話し合いました。
市民派議員を増やしたいから講座を企画するんだけど、必要な情報がニーズのある人になかなか届かないのが悩みですね。
とりあえず、選挙講座については、7月のシンポの参加者と、コンタクトをとってくれた人たちにお知らせすることにしました。

ところで、1月3日から、
『市民派議員になるための本・・・・立候補から再選まで・・・』(寺町みどり著/プロデュース・上野千鶴子/学陽書房)の連載をはじめました。
女性の政治参加や議会のことを考えているたくさんの人の眼に触れたほうがよいので、一日遅れで、「む・しネット」ブログにも載せていきます。
通しで読みたい方はこちらへ

この本を書いてから、5年経ちます。

その間に、市町村合併がすすみ、国は小泉政権から安倍政権へと
いっそう右傾化しています。
「国」を重視し基本とする政策は、当然に地域社会の一人ひとりの
「ひと」を見捨てることになり、弱者切捨ての政治手法は、
子どもやお年より、しょうがいしゃ者など、いちばん弱い市民を直撃しています。
合併したらバラ色のはずだったのに、国からの合併特例債は数年で打ち切られ、
甘いことばはウソだったと気づいたころには、どの自治体も
厳しい財政状況に追い込まれていきます。そんな流動的な政治状況は、
市民派候補者にとって、不利なことばかりではありません。
既得権を持つ議員たちも、いままでのように地域密着の
利益誘導型選挙ができにくくなりました。
「ピンチはチャンス」。
今の政治状況に不安を感じている市民はたくさんいますし、
このままでよいと思っている人ばかりではありません。
「政治を変えたい」市民にダイレクトに実現したい政策やメッセージを届ける
市民型選挙は、手法さえ身につければ、だれにでもできます。
これから毎日ひとつずつ、わたしからあなたにメッセージを届けます。
                                   
___________________________________________________________________________
はじめに

 -わたしの趣味は、「政治」です。-
 エッとおどろくあなたは、「政治」のオモシロサを、きっとまだ知らないのでしょう。 わたしも以前は、政治も選挙も大キライでした。だから政治ギライの人の気持ちがわかります。コリ性だけどあきっぽいわたしが、「政治」の市民運動に10年もかかわって、生まれてはじめて本まで書いているのですから、“好きこそものの上手なれ”です。 政治の現場でつぎつぎにぶつかる問いに、さまざまな出会いのなかで、感じ、かんがえ、わたしなりの答えを見つけながら手さぐりで今日まで歩いてきました。そのみちすじをあなたと共にたどりたいと思います。
 わたしは1991年9月、岐阜市の北隣の人口19000人の小さなまち、高富町の議会議員に当選しました。立候補すると決心し、わたしのやりたい市民型選挙に取りくみ、当選してからは、初議会、議会での質疑・討論・採決、一般質問と、未知の経験ばかりで、セクハラにも遭遇しました。
 この本には、はじめて議員になる人が、じっさいに選挙や議会でつぎつぎに出会う経験を、立候補から再選まで時系列にそって、できるだけわかりやすく書きました。
 この本を読んで、「わたしもやってみよう」とあなたに思ってもらいたい-それがわたしの願いです。
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上野千鶴子さん未刊行エッセイ「役人のいる場所」

2006年05月09日 | メディア/ほんetc
上野千鶴子さんが書かれた未刊行のエッセイを、許可を得て転載します。
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役人のいる場所          
                         上野千鶴子(社会学者)

 東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長、船倉正実氏。同課人権学習担当係長、森川一郎氏。同部主任社会教育主事(副参事)、江上 真一氏。2005年から2006年にかけてこの職にあった。
 わたしはこの人たちに個人的なうらみはない。だがこの時期にこの職にあったばかりに、この人たちは地雷を踏んだ。自分の踏んだ地雷の大きさに、おそらく気がついていないだろう。
 ほかでもない、国分寺市の講師拒否事件のことである。すでに新聞で報道されているが、知らない人のために解説しておこう。2005年、国分寺市は東京都教育委員会との共催事業に、上野を講師とする人権講座を計画した。テーマは「当事者主権」。講演料について担当者が都に問いあわせたところ、「ジェンダーフリーに抵触するおそれがある」と拒否。事業そのものが実施不可能になった、という事件のことである。原因をつくったのは、国分寺市ではなく東京都だから、これ以降は、東京都事件と呼ぼう。
 わたしはこの事件に、1月13日付けの公開質問状を配達証明で送って抗議。わたしが女性学の研究者だから、という理由で、実際に使ってもいない「ジェンダーフリー」の用語を、「使うかも」という可能性だけで排除するのは、言論統制・思想統制にあたる、許せない、という理由からである。これにただちに全国の女性学・ジェンダー研究者、行政および教育関係者が応じて、短期間に1808筆の署名があつまり、1月28日、若桑みどりさんをはじめとする呼びかけ人が、都庁を訪れて抗議文を手渡した。3月25日には「ジェンダー概念を話し合うシンポジウム」がジェンダー関係者を集めて熱気のある盛りあがりを見せた。詳しい経過や情報については、ホームページを参照してほしい。
 この事件にはいくつものアクターが関与している。
 まず第1は、筋をとおした「準備する会」の市民たち。この人たちは都の介入に抵抗し、講師の変更を拒否、国分寺市から妥協案も排した。この件がオモテに出たのは、国分寺市市民の方たちのおかげである。この人たちは「東京都の人権意識を考える会」を開催し、都に抗議してきた。
 第2に、国分寺市の職員の人たち。国分寺市は市民との協働を積み重ねてきており、市民の意向を尊重するように動いた。市民との話し合いを何度も持ち、都とのやりとりを情報公開した。
 第3に、取材に動いた新聞記者。1月9日付けの毎日新聞に、船倉氏の発言が出た。これが出たから、わたしは初めて、引用し、反論することが可能になった。こういう発言が新聞という公器に載った意味は大きい。
 考えてみれば、これと同じようなことが各地の自治体で起きてはいないか。そしてそれは誰にも知られることなく、闇から闇へと葬られてはいないだろうか?思いあたることがいくつもある。例えばある地方自治体が主催する社会教育事業に、上野の講演が予定されていた。それを知った保守系議員から横やりが入り、急遽自治体が主催団体から降りることになり、代わって民間団体の主催事業に変えるが予定どおり来てもらえないだろうか、と懇請されたことがある。あいだに立った担当者の苦境を配慮して、わたしは予定どおり出かけたが、会場には行政側の担当者が申し訳なさそうに顔を見せていた。他の同業者から得た情報でも、似たようなことが起きていることを
知った。
 そう思えば、冒頭であげた三氏は、よりにもよってこんな時期にこの職に就いていたばっかりに、不運だった(?)ということになるかもしれない。
 ところで、もし、あなたがその時、かれらの立場にいたとしたら?と考えてみてほしい。この人たちは、石原都政の前から都庁の役人をしており、おそらく石原都政が終わったあとも(石原都知事の現在の年齢では、長期政権は考えにくいから)役人をつづけることだろう。石原都政の前には、都庁の役人の評判は悪くなかった。カリスマ職員と呼ばれる優秀な職員がいて、全国的にも先進的な福祉行政を実践していることは知られていた。無能な知事をいただいても都政が破綻しないのは、これら優秀な官僚たちのおかげであると言われてきた。それが石原都政になってから、行政改革の名のもとに都の女性財団が解散を命じられ、福祉行政は後退を強いられ、都立校の性教育に介入が行われ、君が代・日の丸の通達で卒業式のたびに教師のあいだに処分者が続出する。こんな自治体は全国でも例がない。
 石原前/石原後の両方を経験した都の役人たちは、この変化にどう反応しているのだろうか。さらにポスト石原の新政権ができれば、それにまた変わり身速く適応するのだろうか。わたしが実名をあえて挙げるのも、薬害エイズ訴訟であきらかになったように、役人は公権力を行使する位置にあり、その立場にいる個人の作為や不作為で実際に加害や被害が起きるからだ。都政は、「あなた」がつくっている。有名人になったこの人たちの「その後」を、ずっとウォッチしたい。
====================================================================

「役人は公権力を行使する位置にあり、その立場にいる
個人の作為や不作為で実際に加害や被害が起きるからだ。
都政は、「あなた」がつくっている。」

このことばには、とても共感する。

バックラッシュや変化は、国やどこかほかの遠いところで起きていることではない。
いまわたしたちの足元で、日々起きていることだ。

「公権力を行使する」立場の行政には、法律に基づき、法律にしたがって政を行わなけばならないという、「行政の原理」がある。
この「法律による行政の原理」は、「行政活動は法律の根拠に基づかなければならない」とする「法律留保の原則」と、「一切の行政活動は法律に違反して行ってはならず、行政上の措置によって、実質的に法律を改廃・変更するようなことがあってはならない」とする「法律優位の原則」から成り立っている。

「法律優位の原則に基づいて、行政庁は住民に対して違法な命令を発したり、違法な内容の行政指導をおこなうことはできないことはもとより、行政組織の内部においても違法な通達や職務命令を発してはならない・・・・」
(『地方公務員法律キーワード事典』/学陽書房)


法律優位の原則は、すべての行政活動に適用されるし、
職員はこの行政原理にしたがって違法な上司の命令を
拒否することもできるのだけど、じっさいには、
上司の意向にそって、その場限りの仕事をしている。

「市民」と「情報」と「メディア」というアクターがあれば、
あなたにだってわたしにだって、問題を争点化して、
「役人のいる場所」にスポットライトをあてることができる。

善良な役人の「あなた」が、他意なくした仕事が
現実の自治体の政策を動かし、わたしの生活に影響する。
ということなら、役人がどう動くか、だけでなく、
市民の「わたし」がどう動くかが、いま問われている。


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