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イスラエルの過激派

2009-01-29 21:21:07 | 世相(外国)
 殆どの日本人は過激派と聞けば、イスラム系組織を連想するだろう。イスラム過激派は中東に馴染みの薄い日本人でも知っているが、イスラエルにも過激な政治団体があることは意外に知られていない。私も昨年の秋頃、NHK BS1の「世界のドキュメンタリー」で、JDL(ユダヤ防衛連盟)なるものを知った。極右組織そのものだが、その思想と行動はムスリム過激派に劣らない。

 この番組題は「ユダヤ過激派/イスラエル・終わらない戦い」、皮肉なことにイスラエル制作である。隣国の顔色を常に伺う日本のマスコミ同様、欧米のメディアもユダヤ系に牛耳られ、“反ユダヤ主義”の糾弾に脅えイスラエルに不利なニュースを取り上げられない始末。そのため、イスラム圏を除きイスラエル批判の出来るメディアはイスラエルに存在する。番組ではJDLの創設者メイル・カハネを紹介しており、初めて私は彼の名を知った。「「ユダヤのヒトラー」と恐れられた男の素顔」というサイトは、このカハネについてさらに詳細に記している。

 カハネは既に故人となっているが、生前の彼の活動中の映像を見て、まさにユダヤのヒトラーそのものだった。極度の人種差別主義、暴力性も、ユダヤに元からある選民思想が先鋭化すれば当然の帰結。聖書に見える恐るべきジェノサイド聖絶」思想が、現代も連綿と続いていることに戦慄させられる。カハネの主張を一部抜粋したい。
我々は特別な民族であり、我々はその清浄さと神聖さとのゆえに選ばれたのだ。他の民の上に立ち、我々が既に教えられた清浄さ、神聖さの心理を彼らに教えるべく、定められているのだ。ユダヤ人であるということに、何か本質的に他と違ったものが存在しなければ、ユダヤ人であることの理由も目的もないではないか。断じて我々は異教徒たちと平等ではない。我々は違うのだ。我々は優れているのだ

 さらにBS1の番組で驚愕させられたのは、カハネのような暴力の徒を支持する「カハネ主義者」と呼ばれる若者たちが決してごく一部ではなかったことだ。特に若者の四分の一が「カハネ主義者」を支持すると回答したと報じている。この数値が正確なのか私に確認は出来ないが、実際はその半分の支持率だったとしても一割を超える。欧米のネオナチに目を光らせ、ことある毎に“反ユダヤ主義”と叱責するのを国是としているイスラエル自体、かなり右傾化が進んでいるらしい。

「カハネ主義者」のメンバーへのインタビューもあり、彼らの主張はナチスと変わりない。彼らの発言が記載されたブログもあり、こちらもご覧になられたら、より分りやすいだろう。その一部を孫引きするが、異文化共生や友好のスローガン心棒者なら絶句させられる内容である。
イスラエルの地にイスラム教のモスクやキリスト教の教会があってはなりません」「ユダヤ人の掟では異民族が一緒に暮らすことが許される場合もありますが、アラブ人はべつです。もし、立ち退く気がないのなら、その代償を払ってもらわなくてはなりません。ここはイスラエルの土地です。ここに住むことが許されるのはユダヤ人だけです」「復讐は美徳なんです。ユダヤ教の教えでは偉大なこととして讃えられています」…

 カハネ主義者たちはその主張の根拠として、トーラー(ユダヤの聖典、旧約聖書の最初の5つの書)を何度も挙げている。トーラーに書いてある、と。若い頃はテロリストだったイスラエル元首相シャミルも、「ユダヤ教の論理もユダヤ教の伝統も、どちらも戦闘手段としてテロリズムを禁じてはいない」と発言しているので(※出典『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』講談社)、イスラエルの現代青年にその思想が受け継がれていても当然だ。
 ちなみにユダヤ教は政教一体が原則であり、ユダヤ超保守派の中には政教分離や民主主義を基軸とするイスラエル国家を認めない者までいる。もちろん、カハネ主義の若者たちも民主体制を否定している。民主主義など西欧からきたものであり、ユダヤの伝統ではない、現にイスラエルの政治家は汚職塗れ、聖職者による神権政治を目指すべきだ…

 ユダヤの伝統衣装をまとうカハネ主義者だが、顔立ちだけ見ればごく普通の人といった印象で、恐ろしげな容貌どころか、キリストの肖像画のモデルも務まりそうな端正な顔立ちの青年もいた。インタビューには穏やかに答えるも、発言は過激、実践も躊躇わない。
相手にやられたら必ずやり返します。ただじゃすみませんよ。彼らがヤギを1頭盗んだら、我々は相手のヤギの群れを盗みます。銃で1発でも撃ち込まれたら、我々は相手の村を襲撃して何発でも撃ち込みます。単純なことですよ。片目がやられたら、相手の両目を奪う。目には目を、歯には歯を、です。

 上記の画像は「「ユダヤのヒトラー」と恐れられた男の素顔」からの借用。イスラエルではなくN.Yで示威行進するJDLメンバーたちだが、メイル・カハネも元はN.Y生まれのユダヤ系アメリカ人。それにしても、右手を上げナチス式敬礼に酷似したポーズを取っているのは苦笑する。そこは民族性も出るのか、チンピラ集団のような野暮ったいJDLより、ナチの方がずっと洗練され、文化的に見えてくる。

◆関連記事:「ユダヤ人テロ組織
イスラエル・ロビー

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4 コメント

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ゴミは一か所に…… (のらくろ)
2009-01-30 01:37:35
>メイル・カハネも元はN.Y生まれのユダヤ系アメリカ人。それにしても、右手を上げナチス式敬礼に酷似したポーズを取っているのは苦笑する。そこは民族性も出るのか、チンピラ集団のような野暮ったいJDLより、ナチの方がずっと洗練され、文化的に見えてくる。

mugiさんに拍手ですねwww。

タイトルは、山崎豊子の「不毛地帯」で近畿商事の当時専務取締役になっていて、日本の石油開発公社出資グループから追い出されかけていた近畿商事を外国の石油会社と提携させ、イランの鉱区を落札しようと奔走していた壱岐正(モデルは瀬島龍三らしいが、この男のいかがわしさには今回は触れない)が、「国士」気取りの「鎌倉の男」に呼び出され、表向きは執事、実は「客」を恫喝してこの男の「意向」を強制するための暴力装置たるチンピラがスーツを着て壱岐の傍に直立不動で立っている。壱岐が「皆さん礼儀正しくて感心しております」と下手に切り出すと「いやぁ、この者たちも、もともとは社会のゴミのようなものだったのですよ、ゴミは一か所に集めておきませんと、異臭を放ったり散らかったりと、社会に語名を苦をおかけしますのでな、ハ、ハ、ハ」と早くも壱岐に対する恫喝が始まる……。

この「鎌倉の男」を第二次大戦後演じたのがまぎれもなくイギリス。実際はほぼ全ヨーロッパが加担していたユダヤ迫害の責任を敗戦国ナチス・ドイツ1国に負わせ、同時に「ユダヤの国」イスラエルを地中海東方に建国して、実は世界の嫌われ者ユダヤ人を1か所に集めてしまえと画策したのだろう。だが、イスラエルには500万しかいないユダヤ人が、アメリカには約650万いるという異常さは、戦後のアメリカを確実に蝕んだといえる。今回の80年振りという「世界大恐慌」ももとはと言えば、アメリカに巣食うユダヤどもが毒入り金融商品を世界中にまき散らしたことに端を発している。

しかし、80年前そうであったように、また全世界でユダヤ排斥が起きそうである。今度は国があるのだから、世界中のユダヤがイスラエルへ「帰郷」すればいいだけの話である。かつての文官杉原千畝や陸軍中将樋口季一郎の業績は、それはそれで顕彰すべきものだが、今回までユダヤに日本が肩入れする必要は全くない。

「ゴ ミ は 一 か 所 に」
返信する
なるほど (ユウスケ)
2009-01-30 01:59:37
 こやつらのことは初めて知りました。

 まぁ、こういう団体がいるのはごく自然なことで、むしろ、いない方が不自然ですからね。
 しかし、第三帝国の問題はあれが国家、それも国民の信任をまがりなりにも受けて成立した国家だという点で、ことの重大さはこやつらの比ではありませんな。
 もっとも、最近話題のハマスもそうですが、欧州を始め色々な地域に極右政党が生まれているという現状は、「めんどくせぇなぁ」と思ってます。(笑)
 北朝鮮などなど、対話にならない国家が増えるのは、不愉快きわまりないのですが、このように鬱屈した気持ちが頂点に達したときに、極右政党の政権掠奪が起こるのでしょうね。

 できるだけ、冷静に、キリスト教徒にはまず実践不可能な「左の頬を叩かれて、右の頬を差し出す」という態度を取るよう心掛けたいです。どうせ、集団の破廉恥な暴力は、個人の意思など遥かに越えてゆくのだから、自分だけでも。まぁ、差し出した頬の間にある口では、相手を罵倒しますがね。(笑)
返信する
Re:ゴミは一か所に…… (mugi)
2009-01-30 21:53:02
>のらくろさん

 私は山崎豊子の「不毛地帯」は未読ですが、第二次大戦後ばかりでなく今でもエゲレスは、「鎌倉の男」を演じているように思えます。戦前イギリスは東アフリカの一部にユダヤ人国家建国を画策していたのですが、やはり地政学的に現代の位置になったようです。聖書のバックボーン「約束の地」だけでく、中東に睨みを利かせるにもってこいの場所ですね。

 イギリスもまたロスチャイルドが典型ですが、ユダヤが政治、経済、文化などあらゆる面を仕切っている。19世紀のディズレーリはイギリス唯一人のユダヤ人首相ですが、積極的な帝国主義策をとりました。彼はこう語っていたのです。「世界は裏の世界を知らない、世間一般の人々が想像しているものとはずいぶん違った人物によって動かされているのだよ」。

 一部の国を除き、ユダヤ人は関る所々でトラブルばかりですからね。比較的イスラム圏では平和共存していたのに、イスラエル建国で全世界のムスリムの怒りをかった。もう、これまでの関係は望めないでしょう。彼らが迫害された理由を異教徒の非寛容さにする人は少なくないですが、ユダヤ教自体に問題があるのではないでしょうか。「タルムード」の一部を紹介したサイトがありますが、ナチスなど可愛く思えてきますよ。
http://d.hatena.ne.jp/rainbowring-abe/20060105

 何故かイスラエルに向かうユダヤ人より、イスラエルから脱出する彼らの方が断然多いそうです。しかも、一番人気のある移住先こそドイツ。ホロコーストを叫べば、養ってくれると期待して。これじゃ、またユダヤ排斥が起きますよ。あと、ユダヤ教に改宗するシナ人も増えてきているとか。もちろん信仰目的ではなく、イスラエルの富が目当てなのは言うまでもありません。
 戦時中の文官杉原千畝や陸軍中将樋口季一郎の行為は見事ですが、その見返りが原爆ですからね。物理的に「最終的解決」しなくとも、ユダヤが今の影響力を失ったのなら世界はかなり平和になるでしょう。
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Re:なるほど (mugi)
2009-01-30 22:03:20
>ユウスケさん

 私もこの連中のことは海外ドキュメンタリーで初めて知りましたが、日本のマスコミはまず報道しませんよね。隣国だけでなく、イスラエルにも気を使っているのやら。日本の保守系雑誌とイスラエルは結構関係がありますしね。
 JDLは単なる泡沫極右組織ではなく、時にモサドと組んだりするし、その影響力は侮れないと思います。今のところは、第三帝国のナチスよりはマシですが、万一政権を取ったならナチス化するのでしょうね。第三帝国の成立も民主主義の弱点ゆえですが、イスラエルもまた、国連の承認をまがりなりにも受けて成立した国家というのが何とも…

 もしかすると、世界で最も「左の頬を叩かれて、右の頬を差し出す」を実践しているのは、日本人クリスチャンかもしれない。しかも、差し出した頬の間にある口でも、相手に何も言わない。「汝の敵を愛せ」をマジに受けている教授殿もいました。
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