私が初めて好きになったロックバンドが、3人組The Policeだった。1983年の大ヒット曲Every Breath You Take(邦題:見つめていたい)を聞いたのがきっかけだが、その歌は最後のアルバムからのものであり、バンド活動も終了となるのを、まもなく知る。結成が1977年、解散が1984年1月(ただし、正式な解散宣言はない)という短い期間のバンドであり、出したアルバムが5枚足らずだった。
The Police以前に私は特に好きになった洋楽バンドはなかった。洋楽を聴かなかった訳ではないが、日本で紹介されるのは大抵長髪のアイドル然としたバンドばかりで、私の好みではなかった。音楽雑誌では相も変わらずビートルズが取り上げられており、うんざりだった。そんな時、知ったのがThe Police。「見つめていたい」のPVはモノクロだったが、そのゆえシックで彼らの容貌は実に映像栄えし、ビジュアル的に実にカッコいい。さらにあの素晴らしいメロディ。日本でThe Policeは大学生に人気があるバンドだったが、私もその一人となった。卒業後、社会人となってから知り合った他校卒業の人物もPoliceファンだったのを知り、学生時代好きだったバンドの話で盛り上がったこともある。
現代は音楽をダウンロードするのが当り前だが、'80年代初めはFMラジオでエアチェックする時代だった。私もFM雑誌を買っては、ポリスの曲をチェックし、ラジカセで録音していた。何故、このバンドの歌が大好きなのかと問われても答えようがない。恋に落ちた時、数多の異性(同性の場合もあるだろう)がいながら、何故その人を好きになったのか、理性で説明がつかないように。すっかりポリスの曲にハマり、録音したテープを何度も聴いたものだ。そのため今でも、イントロだけで大体の曲名が思い出せる。
この映画はポリスの活動を八ミリカメラで映した映像を編集したドキュメンタリー。しかもカメラを撮って監督したのが、バンドのドラマー、スチュワート・コープランド。普通のロックバンド映画はプロの監督が撮るものだが、バンドメンバーというのは珍しい。さらにスチュワートはこの映画の解説までやっている。彼の声とナレーションは思いの他よかった。映像こそ八ミリカメラで収録したため、画質は悪いが、メンバーの素顔やバンドの裏話を紹介できるのもメンバーならでは。
とにかく、学生時代夢中になったバンドの数々の曲が流れるのは懐かしかった。映画館には私同様今は中年となった人々が結構来ており、彼らもかつてファンだったろう。上映開始後、「孤独のメッセージ(Message in a bottle)」「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ(De Do Do Do, De da da Da)」といったナンバーが流れるや、思わず腰が浮いてしまったが、インドと違いまさか日本の映画館で立ち上がって踊る訳にもいかない。仕方ないので腕を動かしては拍子をとったが、私の側に座っていた男性も足で拍子をとっていたのは可笑しかった。
知的バンドと言われたポリスだが、楽屋裏ではスティングやアンディもバカ騒ぎをしており、この2人のケンカは見物だった。気取り屋のイメージがあるスティングが、「死ね」などと暴言を吐いて荒れる様は、やはりロッカーらしくて妙に面白かった。メンバーのライブ前の表情もいい。
ワールドツァーで世界中を回る彼らはまさに「スーツケースの流れ者-Man in a Suitcase」の暮しを送り、旅を楽しむ余裕がなくなっていたとは興味深い。日本ツァーの映像も公開されており、'80年代初めの東京の街の様子も分かる。私としてはポリスのインド公演がなかったのが残念だった。面壁九年なんて聖者を出す国なので、観客はさぞのったりしているかと思いきや、サッカーサポーター顔負けの凄まじい熱狂だったのをビデオ映像で見ていた。
ポリス好きなら、メインのスティングのファンが大半だろう。しかし、私は彼のミュージシャンとしての才能はスゴイと思う反面、どうもキャラクター的に好きになれなかった。雑誌の表紙を飾った彼を見て、「あ、コイツ性格悪そう」と感じたし、今でもそう思っている。スティング自身インタビューで、自分は複雑な性格でエゴイストだと答えているし、それを隠そうともしない。売れる前、彼が教師をしていたのは知られているが、自分は教師だったから他のバンドとは違うかの発言に至っては、田舎教師風情が何ぼのものじゃい、と私は不快だった。
ロックバンドでメンバーがインテリなのは至って少ない。ポリスは例外的にインテリバンドだったが、何もメンバーがインテリのバンドは他にもある。そのルックスから信じられないが、クイーンは全員が学位を有するインテリ集団である。にも係らず、スティングのようにインテリ臭が鼻につくことはまるでない。クイーンの場合ボーカルを除き、全員が理工系だからだろうか。ボーカルもアートスクール出だから、文科系でもまた異色だ。
私はポリスでは、この映画の監督であるスチュワート・コープランドが好きだった。彼だけがバンド唯一のアメリカ人であり、陽気でエネルギッシュ、ダイナミックなタイプ。他の英国人メンバーとはアメリカ人ゆえか、どこか雰囲気が違う。父親がCIAエージェント(!)だったこともあり、少年時代を中東で過ごしたという。
スティングには傲慢、意地悪、エゴイスト、皮肉屋、複雑というより屈折した性格を感じさせる。要するに私の欠点そのものであり、同類嫌悪なのか。
音楽評論家の渋谷陽一は昔、何かのFM番組の司会で、ポリスを「可愛げのない優等生バンド」、「嫌味な連中」と貶したことがある。そのため私は未だに渋谷陽一が嫌いなのだ。可愛げばかりの優等生バンドなら、単なるアイドル集団に過ぎず、自滅していくバンドが大半の中で、絶頂期に解散したのも評論家からすれば「嫌味な連中」だろう。
ポリスが再結成されたという。「シンクロニシティー」のコピーどおり「そして3人は、再びポリスとなった」。ただ、あのスタイリッシュなスタイルは果たして再現可能だろうか。
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The Police以前に私は特に好きになった洋楽バンドはなかった。洋楽を聴かなかった訳ではないが、日本で紹介されるのは大抵長髪のアイドル然としたバンドばかりで、私の好みではなかった。音楽雑誌では相も変わらずビートルズが取り上げられており、うんざりだった。そんな時、知ったのがThe Police。「見つめていたい」のPVはモノクロだったが、そのゆえシックで彼らの容貌は実に映像栄えし、ビジュアル的に実にカッコいい。さらにあの素晴らしいメロディ。日本でThe Policeは大学生に人気があるバンドだったが、私もその一人となった。卒業後、社会人となってから知り合った他校卒業の人物もPoliceファンだったのを知り、学生時代好きだったバンドの話で盛り上がったこともある。
現代は音楽をダウンロードするのが当り前だが、'80年代初めはFMラジオでエアチェックする時代だった。私もFM雑誌を買っては、ポリスの曲をチェックし、ラジカセで録音していた。何故、このバンドの歌が大好きなのかと問われても答えようがない。恋に落ちた時、数多の異性(同性の場合もあるだろう)がいながら、何故その人を好きになったのか、理性で説明がつかないように。すっかりポリスの曲にハマり、録音したテープを何度も聴いたものだ。そのため今でも、イントロだけで大体の曲名が思い出せる。
この映画はポリスの活動を八ミリカメラで映した映像を編集したドキュメンタリー。しかもカメラを撮って監督したのが、バンドのドラマー、スチュワート・コープランド。普通のロックバンド映画はプロの監督が撮るものだが、バンドメンバーというのは珍しい。さらにスチュワートはこの映画の解説までやっている。彼の声とナレーションは思いの他よかった。映像こそ八ミリカメラで収録したため、画質は悪いが、メンバーの素顔やバンドの裏話を紹介できるのもメンバーならでは。
とにかく、学生時代夢中になったバンドの数々の曲が流れるのは懐かしかった。映画館には私同様今は中年となった人々が結構来ており、彼らもかつてファンだったろう。上映開始後、「孤独のメッセージ(Message in a bottle)」「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ(De Do Do Do, De da da Da)」といったナンバーが流れるや、思わず腰が浮いてしまったが、インドと違いまさか日本の映画館で立ち上がって踊る訳にもいかない。仕方ないので腕を動かしては拍子をとったが、私の側に座っていた男性も足で拍子をとっていたのは可笑しかった。
知的バンドと言われたポリスだが、楽屋裏ではスティングやアンディもバカ騒ぎをしており、この2人のケンカは見物だった。気取り屋のイメージがあるスティングが、「死ね」などと暴言を吐いて荒れる様は、やはりロッカーらしくて妙に面白かった。メンバーのライブ前の表情もいい。
ワールドツァーで世界中を回る彼らはまさに「スーツケースの流れ者-Man in a Suitcase」の暮しを送り、旅を楽しむ余裕がなくなっていたとは興味深い。日本ツァーの映像も公開されており、'80年代初めの東京の街の様子も分かる。私としてはポリスのインド公演がなかったのが残念だった。面壁九年なんて聖者を出す国なので、観客はさぞのったりしているかと思いきや、サッカーサポーター顔負けの凄まじい熱狂だったのをビデオ映像で見ていた。
ポリス好きなら、メインのスティングのファンが大半だろう。しかし、私は彼のミュージシャンとしての才能はスゴイと思う反面、どうもキャラクター的に好きになれなかった。雑誌の表紙を飾った彼を見て、「あ、コイツ性格悪そう」と感じたし、今でもそう思っている。スティング自身インタビューで、自分は複雑な性格でエゴイストだと答えているし、それを隠そうともしない。売れる前、彼が教師をしていたのは知られているが、自分は教師だったから他のバンドとは違うかの発言に至っては、田舎教師風情が何ぼのものじゃい、と私は不快だった。
ロックバンドでメンバーがインテリなのは至って少ない。ポリスは例外的にインテリバンドだったが、何もメンバーがインテリのバンドは他にもある。そのルックスから信じられないが、クイーンは全員が学位を有するインテリ集団である。にも係らず、スティングのようにインテリ臭が鼻につくことはまるでない。クイーンの場合ボーカルを除き、全員が理工系だからだろうか。ボーカルもアートスクール出だから、文科系でもまた異色だ。
私はポリスでは、この映画の監督であるスチュワート・コープランドが好きだった。彼だけがバンド唯一のアメリカ人であり、陽気でエネルギッシュ、ダイナミックなタイプ。他の英国人メンバーとはアメリカ人ゆえか、どこか雰囲気が違う。父親がCIAエージェント(!)だったこともあり、少年時代を中東で過ごしたという。
スティングには傲慢、意地悪、エゴイスト、皮肉屋、複雑というより屈折した性格を感じさせる。要するに私の欠点そのものであり、同類嫌悪なのか。
音楽評論家の渋谷陽一は昔、何かのFM番組の司会で、ポリスを「可愛げのない優等生バンド」、「嫌味な連中」と貶したことがある。そのため私は未だに渋谷陽一が嫌いなのだ。可愛げばかりの優等生バンドなら、単なるアイドル集団に過ぎず、自滅していくバンドが大半の中で、絶頂期に解散したのも評論家からすれば「嫌味な連中」だろう。
ポリスが再結成されたという。「シンクロニシティー」のコピーどおり「そして3人は、再びポリスとなった」。ただ、あのスタイリッシュなスタイルは果たして再現可能だろうか。
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