トーキング・マイノリティ

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レディバード・レディバード 1995年【英】ケン・ローチ 監督

2005-10-17 20:27:58 | 映画
 子供への虐待のニュースが新聞に載らない週はない時代になった。本来は保護する親から虐待を受け、幼い命を落とす事件は何ともやりきれない。福祉機関や 施設がいち早く対応してくれたら、と思う方も少なくないだろう。この映画でのイギリスの社会福祉局の行動は、日本とは実に対照的だった。

 主人公マギーはカラオケ・バーで南米出身の青年ホルヘと知り合う。最終バスに乗り遅れた彼女は彼の家にとりあえず泊まることにし、家でつい身の上話をす る。彼女には4人の子供がいたが、社会福祉局に全て取り上げられた、と打ち分け泣き崩れる。理由は福祉局が下した「母親失格」という烙印だった。
 マギーの子供たちは全て父親が違う。しかし、彼女は決して子供を虐待などしておらず、逆に愛情深い母親だった。たまたま家を留守にした際火事になり子供 の1人が重傷を負ったので、福祉局は養育能力なしの判定を下す。福祉局員の対応は母親の言い分など全く無視、子供たちを有無を言わさず奪ってしまう。日本 なら手出しも出来ないが。

 マギーはホルヘの優しさに惹かれ、2人はやがて同居、子供も生まれる。が、福祉局は彼女の元に赤ん坊を置いては危険と判断、家に突入し「保護」の名目で この赤ん坊も奪っていく。ホルヘは福祉局職員に事情を説明し裁判に持ち込むが、彼の不法滞在が問題となり子供を取り戻すことは出来なかった。またマギーは 身ごもるが、妊娠中から福祉局職員が家の周りを見張り監視している有様。ホルヘに滞在許可が下りても、2番目の子供も福祉局は「保護」対象とする。マギー はホルヘを激しくなじるが、彼にもどうすることも出来ない。
 2人の間にはさらに3人の子供が生まれ、この子供たちの養育は認められたが、マギーの6人の子供には面会は未だ認められない。

 この映画は実話を元にしたものであり、イギリス福祉局の杓子定規的な縦割り行政を批判しているのだ。このケースは確かにやり過ぎだが、何も対応せず、む ざむざ子供を死なせてしまう日本よりもマシだと思う。イギリスのように警察と連携して子供を救出する事態もあるのだ。法を改正してすばやく対応する必要も あるが、真っ先に反対の声を上げるのはどんな連中か?“人権派”弁護士先生で熱心に虐待問題に取り組んでいる方はいるのだろうか。


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2 コメント

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育児とか (Mars)
2005-10-18 20:17:47
こんばんは、mugiさん。



 結婚も子供ない私には、育児の大変さは、あくまでも想像の域を脱しません(ノイローゼで我が子を虐待、死亡させる親が出るくらい、甘っちょろいものでないのは、確かでしょうけど)。しかし、私の場合、イギリスの制度には、どちらかというと、否定的な立場ですね。

 一度の過ちで、すべて否定するようでは、挽回する機会も得られないし、失敗したからこその、注意力というものもあると思います(それも、虐待でなく注意力がなかっただけですし、また、同じことを繰り返すかもしれないといえば、そうかもしれませんが、同じようなことのしたことのない人でも、この先どうかといえば、100%保証できる人間なんていないと思います)。

 また、育つ子供にとって、親と離れ離れになることが決してよいことだと思いませんし、成長して、真実を知ったときのショックは、想像すらできません。保守的な考えかもしれませんが、子供が育つのは、やっぱり、両親の元が一番だと思います。

 まぁ、しかし、こういう政策が行われる背景には、日本と同様に、子供への虐待等に悩む、イギリス社会があることでしょうし、日本とて、他人事ではすまされる問題ではありませんね。



 まぁ、育児の悩みは、当分ありそうもない(ずっとないかも?)ので、単なる甘ちゃんの、独りよがりの意見ではありますが、、、。





~~閑話です~~



 POを制し、ロッテが31年振りのリーグ制覇を行いましたね。阪神-ロッテの日本シリーズなんて、10数年位前では、とても考えられませんでしたが(「巨人はロッテより弱い」、という発言に発奮したシリーズも、大昔のように感じます)

 阪神、ロッテ共に、チームカラーも似てて、どちらかの一方的な展開にはならないと思いますが(阪神の方が、試合勘が鈍っている恐れが、やや、ありますが)。どちらも、熱狂的なファンを持つだけに、期待を裏切らない試合展開を期待します(でも、やっぱり、日本一には、○○が輝いてほしいですけどね)。

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複雑です (mugi)
2005-10-18 20:58:22
こんばんは、Marsさん。



 この映画の例では、主人公マギーの子供たちの父親が全て違ったこと、福祉局員への対応がヒステリックだったこと(子供を取り上げられたゆえ、当然ですが)、すぐさま南米の若い男と同棲したので、かなりマイナスイメージだったのは否めません。ちなみに彼女の父は家族に暴力を振るう男でしたが、それもまた減点対象となりました。

 確かに子供にとって親と離れ離れになるのは惨いですし、日本と事情が異なるので単純な比較は出来ませんが、少なくとも虐待による死を防げる可能性は断じてイギリスのやり方が高いのは確かでしょう。

 それにしても、このような政策が行われること事態、悲しくも情けない時代ですね。アフリカ難民の方が遥かに立派です。 



 まさかロッテが優勝するとは。今年もホークスか、と思い込んでいたのに予想外でした。阪神-ロッテの日本シリーズが楽しみです。外人監督だとチームが強くなる、なんてことはないですよね?
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