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空海と高野山の至宝展

2017-07-18 21:10:11 | 展示会鑑賞

 仙台市博物館の特別展「空海高野山の至宝」を先日見てきた。この特別展も「東日本大震災復興祈念」と銘打っており、 コピーが「国宝10件、重文31件が東北に集結!」。これだけの文化財が東北で展示されること自体、滅多にない。以下は博物館のパンフレットから。

高野山は、日本における真言密教の祖・弘法大師空海によって約1,200年前に開創されました。僧侶が修業し、世の平安を祈るため金剛峰寺を建立した空海は、奥之院において入定したとされます。空海が見守る高野山は、以後の各時代を通じて人々の信仰を集め、現代では奥之院を含む境内や山中の参詣道が、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています。
 東日本大震災からの復興を祈念して開催するこの展覧会では、高野山に伝わる空海ゆかりの宝物や、密教美術などに込められた祈りの世界を紹介します。空海自筆の書や、中国からの請来品(しょうらいひん)といった貴重な文化財の数々を仙台市博物館のみで特別に公開するものです。
 密教を興隆し、多方面で大きな足跡をのこした空海。末永く人々を見守りたいという空海の願いと、その後を継いだ多くの人々の思いによって守り伝えられた至宝を、ぜひこの機会にご覧ください。なお、会期中に展示替えがあります



 公式HPもあり、このサイトに軽く目を通しただけで「至宝展」に相応しく、実に充実した展示会であるか判って頂けるだろう。はじめに展示されていたのが「弘法大師坐像」(№1)、制作は室町~桃山時代とされている。像自体は国宝にも重文にも指定されていないが、いかにも徳の高い高僧という印象を受ける。実際よりも理想化されている可能性もあるにせよ、こうあってほしいと願う弘法大師像の秀麗な作品。



 上は空海がから持ち帰ったとされる「金銅三鈷杵(さんこしょ)/(飛行三鈷杵)」(№2)。三鈷杵は金剛杵の一種で、日本では代表的な法具となっている。空海の他にも三鈷杵を持つ仏僧の仏像や仏画は多いが、元は古代インドの武器だったそうだ。どのように使ったのか、少し気になったが、フォーク状になっている先端を敵の体に食いこませたのだろうか。



 特別展では多くの仏画が展示されており、「阿弥陀聖衆来迎図」(№51)もあったのは嬉しい。教科書にもよく載っている仏画で当然国宝。私も初めて見たのは歴史教科書だったが、モノクロということもあったのか、その時は不気味に感じた。何しろ浄土から阿弥陀サマが菩薩を大勢引き連れ、“お迎え”に来る絵だから。
 しかし、今回間近に実物を見て、その印象が全く変わった。想像以上に大きな仏画だったため、阿弥陀を取り巻く菩薩たちの様子がよく分かる。菩薩等が音楽を奏でている様は実に楽しげで、琵琶を奏でる菩薩に至っては、口をあけて笑っているのだ。このような明るい阿弥陀聖衆一団の来迎となれば、あの世でも喜んで行きたくなるだろう。



 特別展は前期(7月)と後期(8月)では展示替えがあり、前期最大の目玉は先の「阿弥陀聖衆来迎図」の他、運慶作「八大童子立像」の1躯、制吒迦(せいたか)童子像(№60)と、快慶作・孔雀明王座像だろう。トップ画像はパンフレットからで、運慶快慶の両作品が使われている。鎌倉仏師の巨匠・運慶快慶の像は本当に見飽きないものだった。やはり歴史教科書に載る仏像はオーラが違う。
 孔雀明王座像の光背が孔雀の羽になっているのもニクいし、制吒迦童子像の表情がまたイイ。現代では死語となった“紅顔の美少年”という言葉を思い出した。あどけなさと凛々しさが混ざる顔立ちは素晴らしい。



 尤も同じ運慶作でも「清浄比丘(しょうじょうびく)童子」は、同じ国宝ながら平凡に見えた。同行の友人に言わせると、「童子というよりも中年のおばさんみたい」だったし、可愛らしさがない。加えて地味なので、あまりこの像をよく観ない来場者が多かったような。
 意外だったのは、源頼朝の三男・貞暁(じょうぎょう/ていぎょう)作の不動明王座像(№58)があったこと。不動明王像らしく、この作品も忿怒相となっているが、眼だけでなくむき出した歯にまで水晶が使われており、離れた場所から見ても眼や歯が光っているのは不気味だった。一般にはあまり知られない三男坊だが、優れた仏像は遺したのだ。

 仏画や仏像が多い展示物だが、これらを見ていると何かしら感じる来場者もいたようだ。弘法大師像に合掌していた男性がいたが、どう見ても30代前半としか見えなかった。感化されたのか、宗教に興味がなかったはずの友人さえ快慶作・孔雀明王座像に手を合わせていた。
 つい私も釣られて合掌したが、他にも拝んでいた来場者はいた。元から日本人には仏像に手を合わせる習慣が根付いているにせよ、国宝級の仏像にはそうさせるパワーがあるのか。

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2 コメント

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仙台というか宮城というか (のらくろ)
2017-07-23 19:07:42
こんなのが話題になってます↓
ttp://diamond.jp/articles/-/135736

もと動画はこっち↓
ttp://www.ryogujo.jp/

のらくろとしては、「大騒ぎするほどのことか」と思う一方で、「なんで秋田・横手にしか縁のない壇蜜なんだ? 宮城出身の女優はいないのか?}とも思う。

ブログ主の反応は如何?なんか「激しくどーでもいい」とかコメされそう。
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Re:仙台というか宮城というか (mugi)
2017-07-24 21:29:03
>のらくろ さん、

 話題となっているネタ、地元の報道テロ紙・河北新報の三面記事でも、割と大き目な扱いで取り上げられていました。私自身、「大騒ぎするほどのことか」と思っていますが、500件も抗議があったことを報じていました。
 河北では宮城の♀県議員7人が女性蔑視と抗議したことも載せていましたが、民進党系3人、共産党系が4人だったのには、やっぱりねぇ…と思いましたよ。抗議団のリーダーは遠藤いく子(凶惨党)。

>>なんで秋田・横手にしか縁のない壇蜜なんだ?
>>宮城出身の女優はいないのか?

 全く同じ思いです。杜けあき、鈴木京香がいるのに、なぜ秋田県人の壇蜜なんだ?と言いたくなりますよ。尤もリンク先のDiamondにあるように、宮城の絶景を紹介しても視聴は2778回の有様。これではエロPRの方が宣伝効果が絶大かも。
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