トーキング・マイノリティ

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食を巡り宗教対立 その②

2017-07-14 21:10:15 | マスコミ、ネット

その①の続き
 インドでの牛肉を巡る宗教対立を取り上げた河北新報は、同日の国際・総合面で、ずっと小さ目な扱いながら米国のニュースを報じている。「米警官による射殺 今年も1000人ペース」「3年連続高止まり」の見出しの後、記事の前半分にはこう書かれている。

【ワシントン時事】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は1日、警察官に射殺された民間人が今年前半で492人に上り、2015、2016両年と変わらず年間約1000人のペースで高止まりしていると報じた。同紙が独自に集計した。
 1~6月に殺害された民間人の中では、銃などの武器を所持していた白人男性が多かったが、人口の6%程度の黒人男性が死亡者全体の約25%を占めた。武器を持っていなかったが、射殺された人も27人に上った……

 米国の人口は世界第3位、2015年時点で3億2000万人ちかくと見られている。欧米諸国では順調に人口が増えている唯一の国だが、それでも13億人を超えているインドには遥かに及ばない。宗教対立がある訳でもないのに、警官による射殺数には絶句させられる。インド紙によれば、2014年以降に殺害されたイスラム教徒は23人とあるが、米国は今年前半だけで民間人が492人も射殺されている。
 もちろんインドの警官も汚職や暴力で悪名高いが、射殺はあまり聞かない。インド警官の場合、銃で撃つよりもラーティと呼ばれる棍棒でフルボッコすることを好む。幾ら頑健な男でも、棍棒で滅多打ちにされれば堪ったものではないが、“社会の混迷”では米国も似ている。

 河北のインドの宗教対立記事で、他にもおかしな箇所がある。ムスリム少年殺害事件で、逮捕された容疑者の中にニューデリーの市職員2人が含まれていたそうだが、「公務員まで事件に関わる現実は憎悪の深刻さを示している」というのはあまりにも日本人的見解。そもそも第三世界と日本の公務員とは質がまるで違うことさえ、河北の編集部記者には解らずとも務まるようだ。
 警官は暴力的なだけでなく、マイノリティや低カースト女性への性犯罪も珍しくない。まして市職員に至っては、公僕にほど遠いのが伺えよう。インドの公務員は収賄は当たり前だし、この辺りは人口の世界第1位の国と酷似している。

 尤も食を巡っての宗教対立は、インド世界の独壇場ではない。捕鯨など完全に“宗教対立”と化しており、鯨を神聖視する欧米人活動家が、食用として鯨肉を扱う日本人に対し暴力を加える事件が相次いでいる。だが、環境保護団体を自称する欧米人活動家とヒンドゥー至上主義者とでは明らかな違いがある。
 全世界で執拗に暴力行為を繰り返す前者に対し、あくまで活動は国内に留まる後者。ヒンドゥーはムスリムが牛を食べるのは黙認しているのだが、解体された牛肉を持った異教徒を目にするや、元からの敵愾心に火が付いたりするのだ。

 意外に知られていないが、インドはアフガンやイランなど近隣イスラム諸国から、多くの難民を受け入れている国でもある。インド在住のチベット難民のことは日本でも知られているが、ムスリム難民はそれ以上に多い。領土の広さを自慢しつつ、少数の脱北者さえ強制送還する東隣のケツの穴の小さな国とは実に対照的。

 2017-4-10付の記事に書いたが、河北新報に「報道番組 事実の一部だけ」という題の投稿があった。投稿者は11歳の小学生だったが、TVのニュースは事実の一部を見せているのであって、全てではない、と書かれていた。そしてこう結ばれている。
とても分かりやすいニュース番組であっても、事実の一部しか伝えていません。だから、私たちはそれを全てだと思ってはいけないのです

 まさにその通り!これはТVに限らず新聞も全く同様で、とても分かりやすい国際報道であっても、事実の一部しか伝えておらず、読者はそれを全てだと思ってはいけない。まして、さして海外取材をせず、大手通信社からお下がり記事をもらっている地方紙は。

◆関連記事:「インドと中国
 「賛中、侮印報道
 「インド首相からの贈り物

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