トーキング・マイノリティ

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ターター一族の興隆 その⑤

2010-03-16 21:24:42 | 読書/インド史
その①その②その③その④の続き
 ターター財閥は自動車産業に加え、IT産業部門では、2004年にムンバイ株式市場にターター・コンサルタンシー・サーヴィス(TCS)を上場し、インドのみならずアジア最大のIT企業として認知されるに至った。インド経済の拡大と軌を一にして、ターター財閥もグローバル規模の巨大財閥となりつつある。

 そして、5代目総帥ラータンは中国杭州市の経済顧問も務め、上海周辺での工場設置も視野に入れているらしい。2005年、「今の中国で、生きて働いているゾロアスター教徒の実物を見たければ、蘇州に行け」と、言った中国人ゾロアスター教研究者もいたという。
 かつて、ゾロアスター教徒のソグド人はキャラバンを組んで来華、活発な商業活動を繰り広げたが、彼らが姿を消して千年以上を経て、再びインドのゾロアスター教徒が中国で商業に勤しんでいるのは興味深い。もっとも、異教徒の門外漢はソグド人の悲惨な末路を、つい思い出してしまう。

 インド・ゾロアスター教徒の財閥はターター一族だけに止まらない。他に家電製品のゴードレージュ財閥、運送業のジーナ財閥、外食産業のドーラーブジー財閥などが知られ、これらの活発な経済活動のため、彼らは「インド亜大陸のユダヤ人」の異名がある。ただ、ゾロアスター教徒の適応能力ゆえか、インド人の寛容さなのか、或いはそれら双方のためか、欧州やロシア、中東のユダヤ人のように迫害や忌避は見られない。ちなみにインド亜大陸にもユダヤ人はいるが、パールシーより先に来印したにも係らず、まるで振るわない。

 パールシーの突出した経済的成功の原因については、様々な議論がされている。パールシー自身は欧州勢力が来航した当時のインド諸種教の中で、ゾロアスター教が資本主義経済に最も適合した教義を持っていたためと分析している。プロテスタンティズムと資本主義に関する議論のゾロアスター教版というもの。確かにセート家、ジージーボーイ家、ターター家、ゴードレージュ家など財閥一族の多くは、ナヴサーリー(現グジャラート州)の神官家系出身者がボンベイに出てきて成功するパターンを踏襲しているため、ゾロアスター教の教義的な背景を重視するこの説は一定の説得力がある。

 しかし、別の見方をする研究者もおり、神官出の財閥たちは当時のインド・ゾロアスター教文化の中心地ナヴサーリーに居住し、平信徒に比べ文化的に有利な条件を備えていただけ、との解釈もある。宗教的要因以外に、インドでは孤立したマイノリティゆえの親英主義、イギリス側からの「純粋アーリア民族の末裔」であるゾロアスター教徒への民族的な親近感などの背景も考えられている。
 神官家系から大財閥が生まれるのは、一般に日本人からは理解し難いだろう。ターター家は突出していると思われるが、インド社会ではパールシーに限らず聖職者は祭祀に専念しているだけでなく、知識人階層でもあった。ヒンドゥー教徒のバラモンからも商売人や武人を出している。『近代インドの歴史』(ビパン・チャンドラ著、山川出版社)で、巻末の近代インドの重要人物の解説欄を見た際、バラモン出身者が過半数以上を占めていたことに驚かされた。ネルーや詩人タゴールもバラモンである。

 近代インドでの経済的成功を足がかりにし、神官階級以外にもパールシーは各界で活躍している。インド独立運動に携わった政治家フェローズ・ガンディー(1912-60年)は、ネルーと知己になり、その娘婿となった。残念ながら心臓発作で夭折したため、義父や妻(インディラ・ガンディー)、息子(ラジーヴ)の陰に隠れ、現代インド政治史では目立たない存在となってしまったが。
 クラシックファンならズービン・メータの名をご存知と思われるが、彼もまたパールシーである。彼の父メーリは裕福なバイオリン奏者であり、ボンベイ・シンフォニー・オーケストラの初代指揮者を務めている。

 パールシーの著名人で最も知られているのは、やはりロックバンドQueenのボーカリスト、フレディ・マーキュリーだろう。彼は平信者出身だが、バルサラ家には教師や弁護士などの知的職業に就く者が多かったそうだ。フレディはむしろ一族の中では変り種だったらしい。ロックシンガーという職業ゆえか、ゲイでエキセントリックな性格という面が強調されがちだったが、抜け目のないビジネスマンでもあったと、フレディをよく知る人は口をそろえて語っている。

 ゾロアスター教徒には食に関するタブーが殆どなく、それがパールシーの経済的成功の要因の一つではないか、と私は考えている。牛や豚、魚介類もOKならば、欧米人とのビジネスに支障はない上、中国人とも宴会をやれる。この差は大きく、食事に何かと制限のあるヒンドゥー教徒やムスリムよりもずっと有利な条件が備わっているのだ。
■参考:『ゾロアスター教史』(青木健著、刀水歴史全書79)

◆関連記事:「インドのユダヤ人
 「ソグディアナからトルキスタンへ

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6 コメント

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体育会系 (室長)
2010-03-17 22:55:12
mugiさん、
 インドのパールシー族(ペルシャ系拝火教徒)のお話は、凄いですね。ブルガリアでは、ユダヤ人、アルメニア人などの少数民族とか、或いはジプシーの中からも自由化後の混乱期に、成功者が出ているとは思うけど、それほど、いずれかの目立つグループの成功物語は思い当たらないです。個々の個人に関しては、なかなかおもしろストーリーがあるけど、それらの中で、何か共通する成功したグループというのは、必ずしも無い。
 一つだけ、顕著なグループがあるにはある。それは、体育会系。やはり混乱期で、マフィアが活躍する資本主義経済の草創期には、暴力団というか、群れをなして、しかも結束力のある、しかも個人としても喧嘩が強い連中が、のさばりやすいというか。

 混乱期にまず成立した業種が、(1)マフィアで、彼らは泥棒、誘拐、売春、麻薬、などで稼ぐと共に、次いで、それらの悪行(自分らの系列グループがやっている)から顧客を守ってやる(2)警備業=警備会社(用心棒といっても良い)や、(3)保険業(90年代上半期などは、車の盗難を防ぐには、マフィア系の保険会社に毎年かなりの保険金を支払うしかなかった。マフィア系の保険会社のステッカーが貼ってある車は、少なくとも同じ暴力団系の泥棒達は狙わないし、万一他のマフィアグループの泥棒に車が奪われても、同じような車を直ちに盗んできて、代車として、賠償してくれたという。故に信用できる保険企業は、旧国営の保険会社ではなく、マフィア系の保険会社だった)、(4)金融業(当初は主として、借金回収の取り立て屋。大金持ち、銀行などから借りた資金を返さないビジネスマンなどを、監禁脅迫して、命と引き替えに親族に代金を支払わせたり、不動産などを差し押さえるなど、荒っぽい方法で資金回収した。その後、暴力団自体が、銀行を買収した。相変わらず、資金回収機能=暴力団を傘下に持つグループの銀行だから、資金回収に失敗することはなく、故に銀行業でも、成功できた)など。

 体育会系とは、例えば、(1)同じ柔道クラブに所属した友人達(例、ソフィア市内の警察組織所有の柔道場など。現在のボリーソフ首相も、元警官で、柔道の同好会仲間達と暴力団→警備会社、という経路でビジネスマンとなった人物)、(2)空手道場の友人達(例、黒海沿岸のヴァルナ市に所在した、海軍特殊部隊では、なんと極真空手を教えるブルガリア人教官がおり、この空手道場に集まった海軍特殊部隊メンバーらが、自由化で解雇され、失業したことから、暴力団→借金回収業→銀行経営→ラジオ局、警備会社、保険会社、穀物商、航空会社、その他あらゆる業種の企業を抱えるTIMグループとして成長、首都ソフィアにも、グループ本部のビルを持つほどになった)、(3)テコンドー元チャンピオンが、レストラン業に進出して、寿司屋も経営、など。
 
 これら武道系の猛者達は、自分自身体力、腕力に自信があるし、元来が元軍人とか警察官など、一種の体制側の人間だったから、混乱期に現職警察官などとは面識もあるので、警察官らは、マフィアとなったこれら元軍人・警官らが、武道系の達人であったこと、彼らの間でも元来が英雄、スターであったこともあり、取り締まりに手加減するし、賄賂も貰って結託してしまう。

 つまり、ブルガリアで、混乱期の90年代、最初にマフィア系企業として成立した、警備会社、保険会社、銀行、或いは、旧国有企業を民営化する際に、巧妙に民営化を裏で仕切って国有財産を乗っ取ったりして、色々な企業を取得したのは、社会主義時代既にマフィアであった人々(旧秘密警察系列)の他には、混乱期に体育会系の結束力、体力、暴力の才能、などを活用した、旧軍人・警官・その他のスポーツマン達が多かった。
 ブルガリア語では、マフィア・暴力団をmutri=ムトゥリとも呼ぶが、このmutriとは「怖い顔の人々」という意味で、日本語で言えばヤクザであろう。しかし、これらマッチョでムトゥリとなった人々の多くは、社会主義時代に警察、国軍などの「公務員」達のみが使用できた柔道場、空手道場、スポーツジムなどを使用できた人々であり、この故に、大学卒とか、結構高い学位を持つ人々もいて、単なる筋肉マッチョばかりでもなかった。だから彼らは、当初の暴力団から、会社経営、大企業経営者へと、順次階段を自ら上ることが出来た。
 TIMグループなどは、数名の幹部とともに、彼らの才能ある妻達もが経営陣に参画して、90年代に急成長した。
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Re:体育会系 (mugi)
2010-03-18 22:08:59
>室長さん、

 ご紹介されたブルガリアでのマフィア上がりの企業経営者たち、スゴイお話ですねぇ。ターター一族は元から神官階級で総帥は大卒のインテリ、肖像画を見るといかにも品のありそうな紳士タイプです。もちろん彼らも裏ではかなり狡猾なビジネスをしているはずですが、一般企業家と違い、何とも気品を漂わせている。一般信者が聖職者を扶養するのではなく、神官から財閥が出て、平信者を支えるというパールシー社会も面白い。
 対照的にブルの少数民族では、個別には成功者がいても、企業グループとして拡大することはなかったようですね。商売上手で定評のあるユダヤ、アルメニア人でさえも。

 さて、バルカン社会や混乱期の特徴なのか、マフィア系組織が頭角を現し、会社経営、大企業経営者へと変貌していったのが何とも。単なるチンピラではなく、元は軍人・警官といった体育会系「公務員」だし、この職種の男達の結束が固いのは想像がつきます。ブル語で暴力団を意味する mutriとは「怖い顔の人々」というのだから、日本語の「強面」にちかい様な。

 混乱期といえ、体制側の人間がマフィアと化すのだから、一般市民、特に文科系は堪ったものではありませんよね。もしかすると日本の戦後も、元軍人のゴロツキで商売を始め、企業組織を立ち上げた者がいたのかもしれません。
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ブルガリアの成功者達 (室長)
2010-03-19 00:07:13
mugiさん、
 ブルガリアの自由化後の成功者=資本家達の経歴には、数々の種類があると思うけど、その一種というか、特徴的な共通性のある人々が、体育会系でマフィアになった人々でした。
(1)マフィア隆盛の原因は、貧乏はもう嫌だという感覚
 そもそも、90年代初期には、社会主義時代の大企業が、ソ連圏としての「COMECON貿易体制」に依存してのみ存続できるような、品質面でも、コスト面でも、コメコン体制抜きには成立し得ない企業ばかりでしたから、自由化後は直ちに、全国にあった大企業の多くが、倒産してしまいました。また、社会主義国としての国家財政は、法人税収入が大部分で、個人の給与所得にかけられる所得税の比率は小さかったですから、公務員達(軍人、警察官を含む)の給与は、インフレの中で目減りして、ドル換算すれば月給が15ドル程度とか、全く給与では食えない状態となりました。

 従って、倒産した国営企業の失業社員の他に、解雇はされていなくとも、軍人、警官、教員、医師、芸術家、などの「公務員」達の場合も、給与では全く食えない、家族が養えない、そういうこととなり、その中で体格がよく、「怖い顔を持った体育会系の人々」は、借金回収業、子分を使っての脅迫、誘拐、売春元締め、麻薬売買、密輸業、などのマフィア稼業をするようになります。せっかく自由に生きられる時代になったのに、社会主義時代のように貧しいままの生活は、スポーツ英雄でかっこうよく生きたかった彼らには、無理でした。すぐに「公務員」の職場からは退職して、自前のマフィアの親分となり、更にはすぐに、少なくとも表向きは、私企業経営者となりました。

(2)ジプシー系、トルコ系には、結構金持ちが出現
 ジプシー系のマフィア親分とか資本家も、ほぼ全国に存在します。ユダヤ系の一部には、イスラエル資本の受け皿として、不動産業とか、色々ビジネスをしている人もいるようですが、目立たないです。アルメニア系では、元著名テレビ・ジャーナリストが、結構裏の商売で活躍して資本家となったりしていましたが、他には余り聞かない。
 なお、人数も多いトルコ系は、ドガンというDPS党(トルコ系の政党)党首が、トルコ本国のマフィア系企業などの投資を受け容れたり、トルコの大企業のブルガリアへの進出を手助けしたり、トルコ系の市民が大勢を占めていたタバコ農家の利害を守ったり、トルコ系建設・土木企業(トルコ系の人々が自由化後に立ち上げた企業)のために、公共事業を斡旋したりと、政治的な地位(連立政権与党として、DPSが政権内の利権を握ることが出来た時期が長かった)を利用して、トルコ系市民の経済界における利益のために、大いに貢献したので、それなりに、トルコ系の資本家も出現している。

(3)若手のブル人秀才達
 彼らは、欧米で成功したのに、高給を諦めて帰国、政治家となったのに、マフィアと結託したりして、信用できないヤッピー・ビジネスマンと見なされるようになった
 個人的才能に恵まれ、西欧、米国などへの奨学金を貰って、留学して、米、英の金融部門、その他で、金融ディーラーとして成功して、ヤッピー成功者となった青年達の一部は、シメオン・サックスブルク首相が総選挙に出馬した際には、シメオンに誘われて、NY、ロンドンから帰国し、同じく出馬して当選し、閣僚、次官などとして、シメオン政権で活躍した人々も多くいました。しかし、彼らも、マフィア的資本家と結託して、私腹を肥やしたし、シメオン自身も、元王室の財産の回復・私有という私腹を肥やすこと、私欲が優先したので、次の総選挙では社会党に大敗し、更に、09年夏の総選挙では、シメオンの政党(NDSV)自体が、国会内政党ではなくなってしまいました(国会議員議席ゼロと大敗)。
 西欧、米国で、金融マンとして高級を稼ぎ、一財産築いて帰国したのに、更に政権内の地位を利用して、個人的にマフィアと結託したりすれば、やはりいくら才能ある人々と言え、人間としては信用され得ません。

(4)普通に努力型の、経営の才覚のある人々も、ある程度成功している
 もちろん、デザイナーとしての能力でファッション産業で成功したり、パン屋、ケーキ屋など職人芸的合法商売で成功したり、という人々もいるし、中小企業として、精肉業(ソーセージ類の製造業者)、酪農業(チーズ、ヨーグルト製造業)、下請け縫製業などで成功したり、と言う相対的にマフィア系ではないらしい資本家も存在しますが、彼らに共通する要素はなかなか見付けられない。強いて言えば、外国企業から信用を得て、下請け企業としてまず創業し、徐々に成功していった人々というか。
 国営のワイン企業、蒸留酒企業を民営化に際して、上手に乗っ取って、成功した資本家もいます。彼らは、酒造業者としての技師であった人もいるけど、マフィア系の人間である場合も多い。
 ギャンブル企業の経営で大金持ちになった、ギャンブル王は、やはり一種の体育会系のマフィアです(背は低いし、小柄だけど、筋肉は鍛えてある人物。趣味は貴族的で、著名画家の絵画などを買い占めたりしている!!)。
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Re:ブルガリアの成功者達 (mugi)
2010-03-19 21:53:12
>室長さん、

 またも、自由化以降のブル社会のお話を有難うございました。ブルだけでなくロシアもマフィアが隆盛し、やがて資本家になっていった筈。彼らもまた体育会系でしょうね。社会の未曾有の混乱があったにせよ、文字通り体を張って生き延びた。
 ジプシー系、トルコ系といえば、商才のあるという印象がなく、特に前者は貧しいという印象を持っていましたが、家族ごと馬車で移動する…というのは今や古臭いイメージですよね。ルーマニアにも結構ジプシー系がいるはずですが、そちらでも金持ちが出現した?

 そして、せっかく欧米留学により成功したにも係らず、帰国した若者達がいたのも面白いですね。しかし、帰国後はマフィアと結託して私欲優先させるようになったのだから、バルカン気質が骨の髄までしみ込んでいたのかも。
 また、ギャンブル企業の経営で大金持ちになったマフィアが、名画を買占めているというのも苦笑させられました。大金を得ると絵画や骨董品に手を出すのは、洋の東西変わりません。
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ジプシー系金持ち (室長)
2010-03-19 23:55:48
mugiさん、
 ジプシー系で有名なマフィア(姓名=Kiril Kirov)は、 Yaponetsa(日本人)というあだ名の人物で、ソフィア市西部のジプシー地区Fakultet区で、麻薬を中心に組を構えて成功しました。
 南部の大都市(ソフィア市に次いで二番目の都市)Plovdivにも大勢ジプシーが居ますが、ここのジプシーの中にも大金持ちになって「キーロ王」と呼ばれていた人物(Kiril Rashkov)が居ます。同人は、酒類製造で成功。プ市東方の村に、砦のような邸宅を構えている。酒類工場は、水道代を支払わないし、自宅の電気代もなかなか支払おうとしないなど、順法精神はゼロ。
 他にも、サンダル製造とか、精肉業、その他で成功した実業家が居ます。彼らの特徴は、ともかく大家族、親戚などの労働力を総動員して、安い賃金と勤勉で、コストを下げて、他の企業より安いコストで製造して、競争に勝つ、ということ。一族、郎党、或いは知り合いなどのジプシー多数を、低賃金で雇用してこき使えることがメリット。ジプシ-を雇用してくれる普通の会社はまず無いから、起業家であるジプシーは、よそより安い賃金で大勢の労働者を確保でき、その分競争に有利なのだ。
 更には、従来から、税金とか、電気代、水道代をまともに支払わないし、取り立て人が来ても集団で脅迫して追い返すから、そういう脱税的な意味でも、コストを下げられる。
 ジプシー資本家は、効率にうるさいし、実に勤勉な人物もいるようで、故に部下の工場要員とか、売り子には、長時間労働を強いる傾向があるようだ。
 もちろん、ルーマニアこそジプシーの本場といえ、ブルのジプシーも元来ルーマニア系も多いらしいけど、ルーマニアジプシーの金持ちとか、そういう情報については知らないです。ルーマニア情勢は、小生は追っていないので、よく分からないのです。

 ギャンブル業(カジノ、宝くじ、スポーツToToなどを支配)、スポーツクラブ経営などで稼いで04年時点で資産5億ドル(推計)といわれたVasil Bozhkovは、Cherepa(頭蓋骨)というあだ名ですが、ブル財界では頂点の数名に入る大物でした。背の低いやせ形の小男ですが、目つき鋭く、ヤクザそのものという感じで、そのくせ貴族趣味!絵画、骨董をコレクションしていて、ブルガリア美術の外国への流出を防ぎたいのだ、などといっぱしのコメントをしていました。

 ヤッピー政治家の代表は、蔵相だったMilen Velchev(ロンドンのメリル・リンチ社のディーラーを辞職して帰国)ですが、弟は黒海沿岸のVarna市でホテルなどリゾート地の開発、不動産取得に手腕を発揮していたが、これは西欧資本などの代理として、投資仲介業と称していた。しかし現職の大蔵大臣の弟が、観光地の開発業者として、活躍していたのですから、一部の新聞では怪しいと見ていた。他方、米国大使、IMFなどは、ヴェルチェフ蔵相が、しっかり緊縮財政を実行してぶれないので、高く評価していた。ヴェ蔵相は、他の閣僚にも裏の便宜を図らない頑固なところもあり、人情味がないということで、与党内法律屋グループと対立、結局NDSV党は、05年夏の総選挙敗北後は、シメオン党首が、ヤッピー派のヴェルチェフを支持したので、法律屋グループが全員離島して、勢力が激減した。ヴェが副党首となったが、党そのものが自滅していった(現在、国会議席ゼロ)。
 
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Re:ジプシー系金持ち (mugi)
2010-03-20 21:40:55
>室長さん、

 Yaponetsa(日本人)というあだ名の付いた、ジプシー系の有名なマフィアがいたとは面白いですね。なぜ、日本人なのでしょう?
 いかにマフィアといえ、水道代や電気代も払おうとしないなら、コストがかなり低くなりますね。そして、普通の会社がジプシーを雇用したがらないのも、やはり彼らは信用されていないため?
 一族、郎党、或いは知り合いなどのジプシー同士は結束も強いでしょうが、同時に低賃金で雇用、搾取されるという面もありますね。彼らに君臨するボスは正に王様。

 ギャンブル業などで稼いでいるVasil Bozhkovの渾名がCherepa(頭蓋骨)というのも、頭の形に由来している?それにしても、骨董趣味を「ブルガリア美術の外国への流出を防ぎたい」と言うのこそ、理屈と膏薬は何処にでも貼れるという見本。
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